・第6限 ①打込み棒の総合練習②胴、垂の付け方 ③胴打ち
(1)整列、正座、礼、出欠点呼、竹刀点検 (3分)
(2)胴と垂の着け方 (7~10分)
*防具の着脱については面も含めて一気に指導してもよいとは思うが、着脱から片付けまで指導するとそれだけで1時間使ってしまうので、これまでの練習の系統を中断することなく進めるために、とりあえず胴垂の着脱について指導する。
1、防具棚から胴・垂のみを持ってこさせる。面、甲手は置いておく。
2、胴紐、垂紐の破損確認。
3、着装についての指導(略----剣道入門書あるいは解説書などを参照されたし。)
胴、垂の紐の点検が終了したら、正座した状態で膝の前に胴を、さらに胴の前に垂を立ててセットして置かせる。
垂→胴の順序で着けるが、垂を着けるときは膝立て姿勢をとらせる。(着装の仕方については各剣道解説書を参照されたい。)
胴紐について----背中でクロスさせる長い方の胴紐については、乳皮のところで正しい結び方を教えるわけであるが、どうしても理解できない生徒が出てきた場合は、首の後ろへまわして結ばせてもよいと考える。
(3)胴、垂を着装したまま、準備運動、正面素振り(打ち)、跳躍正面素振り(打ち)(5分)
(4)打込み棒を使っての総合復習 (10分)
1、大きく振りかぶっての正面打ち(元立ち1人で)
2、小手および面打ち (元立ち2人で)
3、大きく振りかぶっての小手・面の二段打ち(元立ち2人で)
4、小さく素早い小手・面の二段打ち(元立ち1人で打込み棒2本)
・元立ちを適宜交代させながら、それぞれ2~3往復できればよい。
・4まで終了したら打込み棒を片付ける。
(5)胴 打 ち (20分)
・打込み棒を使っての胴打ちの練習方法もあるが、元立ちの捌き方が少し難しくなるので、この段階から実
際に防具を着けた打ちを練習していく。
・ここで初めて、人の体そのものを攻撃していくので、まずは慎重に行うこと。ふざけないこと。などあら
かじめ注意しておく。
・胴打ち練習は、生徒が最も好む練習であり、歓声があがり、また意欲も見せる場面が多い。打ったときの
快感を感じているものと思う。
【A段階】(その場での軽い胴打ち)
1、2人1組で向かい合う隊形をとらせる。
2、元立ちの列の者は、左足が相手の方にくるように(左肩を相手に向けるように)完全に真横を向き、竹
刀を上段の構えのように吊り上げて静止させておく。(しっかり剣先を吊り上げていないと、背中側に
いる生徒にあたってしまうので注意する。)【図17】
3、打ち込む側の列の者は、竹刀の弦の反対側で物打ち部(中結の少し前あたり)があたるように、元立ち
の前胴部分をあくまで軽いタッチで、バシッ・バシッと数回あててみる。(この段階は、打つというよ
りあてるという感覚でよい。)相手は横を向いているので前胴にあてることになる。
※ポイント
・この時、右手首が上で左手首が下で重なり合っていること。----左手の親指が右腕の手首と肘との中間
位置ぐらいで触れ合っている感じでクロスしている感覚。中段の構えのまま横払いして竹刀の側面をあ
てるのではなく、手首を返して刃筋を効かせることを強調する。竹刀を振り回すのではなく、あくまで
あたった時の手首の位置、刃筋の確認練習である。
・この時、右肘が上がり、右脇が開きやすいので、肘は軽く落としたままで、吊り上ってしまわないよう
に気をつける。(自分の脇が開くことはスキをつくることである。)
・バシッ・バシッと竹刀を小振りにして当て、数回行ったら元立ちを交代する。
【B段階】(まっすぐ前に1だけ踏み込んだ、竹刀の振りかぶりを入れての胴打ち)
1、元立ちの列の者の体勢は先程と同じ。(真横向きで上段)
2、打ち込む側の列の者は、1歩踏み込めば胴に当たる位置まで下がって中段に構える。
3、1(イチ)の号令で中段の構えからまっすぐ上に竹刀を振りかぶる。(面を打つ時と同じ要領でまっす
ぐ振りかぶること。)
・実戦での胴打ちは、フェイント動作でもない限り、基本で行うような大きな振りかぶりは見られない
が、ここでは竹刀を左肩へ担ぐような振りかぶりや、極端に剣先をまわしてくる捌き方ではなく、大き
く、スッと竹刀を上げる振りかぶりからの打ちを身につける。(面にも胴にもでられる、まっすぐな振
りかぶりを目指す。)【図18】
4、2(ニィ)の号令で右足から1歩前へ出ながら相手の前胴をビシッと打つ。あてた位置で竹刀を止めて
おく。
・手首の返しはA段階で学習したとうりになっているか。
・竹刀の振りかぶりはまっすぐスッと上げ、次に半円を描くような気持ちで胴へ振り下ろす。
・打ったら竹刀を止めて、A段階のポイントを再確認する。竹刀の弦が必ず左側にきて、刃筋の効いた胴
打ちになっているかを確認する。
・物打ち部で打っているかを確認する。とかく胴打ちは体勢が深く入り込みすぎて打つ時に腕が伸びてい
ないことが多いので、面、小手打ちと同様に、打つ瞬間は腕が伸びて手首だけが返っていることを確認
する。
5、3(サン)の号令で左足から1歩さがりながら元の中段の構えにもどす。
6、ポイントを確認しながら、この1(イチ)・2(ニィ)・3(サン)を数回繰り返し、概ねよければ、
笛の合図で、これを一挙動でやらせる。(数回程度)
【C段階】打ち込んでから、真っ直ぐ抜けていく胴打ち
1、元立ちの構えは先程と同じ。(真横に向いて、竹刀を上段に構える。)
2、B段階の打ちの後、そのまま送り足で前進する練習となる。
(B段階の間合いより、少し遠間で、1歩とび込めば胴にあたる位置に中段に構える。)
3、笛の合図で右足より前方へ踏み込みながら胴打ち。元立ちの前を送り足で抜けていく。
ここでの胴打ちは、相手の前胴を打った後、まっすぐ前に抜けていく感覚で行う。
遠い間合いから正確な胴打ちができるかをみる。
間合いが近いと、踏み込んで打った後に、竹刀の真ん中あたりで打ったり(物打ちでの正確な打ちでなくなる)、右の肘が吊り上って脇が開いたりするので注意する。
打った後は、打った位置で竹刀を止める感覚で、送り足で抜けていく。
道場が狭い場合、打ち込んだ者が抜けていった後、元立ちは打ち込んだ者が元いた位置へ移動し、はじめの構えに戻る。
これも数回程度行い交代する。
【D段階】(右足を右斜め前に1歩踏み込んだ、振りかぶりからの胴打ち)
・男子生徒の場合、あるいは時間的に余裕のない場合は、B、C段階を省いて、このD段階から入るほうが
よいと考える。
1、元立ちは中段の構えから右足を1歩引いて左足前の上段の構えとなり、胴の前面を右45°の位置でセッ
トする。【図19】
2、打ち込む方は、右足を右前45°の方向へ1歩踏み込めば元立ちの前胴にあたる位置へ下がって中段に
構える。
3、B段階の練習を右前45°の位置へ1歩踏み込んで行うだけの練習である。
*1(イチ)の号令で竹刀を振りかぶる。
*2(ニィ)の号令で右前45°の位置へ1歩踏み込みながら胴打ち。
*3(サン)の号令でもとの中段へもどる。
・この練習では2(ニィ)の打ちで(図20)のような位置関係ができることを目指す。
・深く踏み込みすぎると、竹刀のあたるポイントが見えない。あくまで打突ポイントが見える位置で
竹刀を操作するのが基本となる。
・【図20】のB位置で相手の前胴にあたっているわけだが、左手が自分の体の幅から右方向へはずれ
てしまうと右脇が開くようにもなるので、左手は正中線からできるだけ外れないよう意識しなけ
ればならない。
・右肘が曲がって浮き上がってしまうのもダメであるが、逆に胴にあたる時に右肘が伸びきりすぎて
ロックされてもダメで、伸びきらない程度に伸びていなければならない。
・1(イチ)・2(ニィ)・3(サン)の号令で数回繰り返し、大体良ければ、笛の合図で一挙動で
やらせる。ピッ(笛の音)・バシッ(胴を打つ音)・中段の構えに戻る----という繰り返しとなる。
・これも数回程度やらせる。
【E段階】(胴を打ち込んでから、右方向へ抜けていく練習)
・C段階でのまっすぐ抜けていく胴打ちを、右方向へ踏んで抜けていく練習である。いわゆる普通の右胴
打ちである。
1、元立ちはD段階と同じ。
2、打つ方はD段階の胴打ちからそのまま【図20】のABライン方向へ送り足で進んでいけばよい。打つ位置
は【図20】と全く同じ。物打ち部で打っているか、深く踏み込みすぎて自分の体の左真横であたってい
ないか等をチェックする。
★踏み込んでからの竹刀の捌き方
・胴を打った後、【図20】でA→B方向へ送り足で抜けていくと、(面打ちのように直線的に交叉するわけ
ではないので)元立ちと打つ側の距離は開いていくようになる。つまり、狭い道場で多人数が練習する場
合、隣のペアとぶつかるケースが出てくる。
・基本的には、胴を打った後は、竹刀から手を離すことなく----左手、右手とも竹刀を握ったまま抜き切る動
作がなされるのが望ましい。
・隣のペアとの距離が狭い間隔で練習している場合、右45°方向へ右足から踏み込んで前進していくと、両
手で竹刀を握ったまま抜き切る動作が難しく、窮屈な状態となるので、打って後体勢が相手の真横ぐらい
にくれば、次のように捌かせる。
(イ)胴を打つまでは必ず両手で竹刀を握っていること。竹刀が胴にあたった状態のまま送り足で前進し、
元立ちの真横にきたあたりで、左手の握りをはずして、右手のみで竹刀を持ったまま、胴を水平にな
でるようにスパッと抜き、抜いてすぐ左手を竹刀に戻して中段の構えとなり、送り足で3歩ほど前進
する方法。(左手をはずす方法)
(ロ)打った後、左手の握りを右手の握りの方へスッと寄せて、間を詰めて捌く方法。
以上2種類の方法がよく紹介されているが、どちらかの方法を採用すればよい。
ただし、左手をはずす方法は、右手のみの片手打ちになりやすいので要注意する。また抜けていく際
に(打った後)、剣先を下方へ下げてしまわず、スパッと横へ抜き切るように竹刀を捌くことにも注
意する。
3、これも数回程度やらせる。
【F段階】(両者中段の構えから、笛の合図で一方が胴打ちを行う練習)
1、今までは元立ちが竹刀を上段に構えてくれていたので、がら空きの胴へ打ち込んでいけばよかった。こ
の段階では元立ちも中段の構えをとり、お互いの剣先と剣先が触れ合
う間合いから胴へ入る練習である。
2、元立ちは笛の合図(ピッ)で中段の構えから竹刀をそのままス―ッと上段の位置へ吊り上げる。
3、打ち込む方は、同じ笛の合図で、相手が竹刀を上げた瞬間に、相手の(前胴ではなく)右胴を狙って、
E段階と同じく右45°方向へ踏み込んで胴を打ち、送り足で抜けていく。
・前段階よりも打てる胴の幅が狭くなるので、相手の脇にあてたり、垂にあてたりする者が若干出てくる
かもしれないので、まずは軽いタッチで行わせてみる。
・さらに、両者とも中段に構えているので、少々間合いが遠く感じられるものがでてきて、胴を打つ際、
つんのめるように前かがみになり、うつむく様に胴打ちに入る者がでてくるので、あくまで上体はうつ
むかず、あるいは逆に反り返らず、中段の構えの上体の姿勢のまま、右45°方向に右足が1歩出た、腰
骨のまっすぐした姿勢を意識させる。
・(遠間からの調整方法として、中段の構えから竹刀を振りかぶる時に、軽く左足を右足へ寄せれば間合
いの調整がつくが、寄せ足は指導法としては嫌われており、1歩で届く範囲に間合いを詰めて、右足を
少し深く踏み込む方向の指導の方が良しとされている。)
4、A-B-C-D段階の大きな竹刀の振りかぶりを徐々に小さくしていき、最終的には軽く手元をあげる動作か
ら、剣先を左方向へ円を描かせるようにまわして、右手首が左手の上に重なった刃筋の効いた打ちを練
習していく。
・リズムとして (元立ち)すぐ竹刀をあげる
両者中段の構え⇒笛の合図⇒ ⇒互いに位置を入れ代わり
(打つ方)軽い振り上げから 中段に構える。
胴を打って前に出る
という流れを数回繰り返す。
※ABCDEF段階を全てこなそうとすると、20分では不足するので、B・C段階を省いてもよい。
●逆胴について-----逆胴(つまり相手の左側の胴打ち)については、高校生あるいは一般の試合においても
技としてあまりだしていないし、また練習においても、切り返し(打ち返し)のなかで、右方向からの打
ちの練習はしても逆胴そのものを積極的に練習に取り込んでいるのは二段、三段以上の選手と思われる。
高段者から聞いた話では、武士が刀を抜いた時、左腰には鞘が残り、さらに二本差しの場合は左腰に脇差
(短刀)があることで、左胴部を斬るということは、その鞘や短刀にこちらの刃があたることが予想され
る。また逆胴は打った後の竹刀捌きが難しい。したがって初心者のうちは右胴打ちに重点を置いて練習す
べきであるという話であった。
しかし、授業での生徒の様子を見ていると、例えば自由稽古(地稽古)をさせると、それまで一度も練
習したことのない逆胴を打ちにいくものがよく出てくる。「打つな」といってもつい打ってしまったりす
る。その打ちも、斜めに切り下ろすとか、剣先が円を描いて入ってくるというものではなく、野球のバッ
ティングのような振り回しで、あたると少々怖い感覚を持つのは事実である。安全性の面からも、授業で
の胴打ちは右胴打ちに限定した方がよいとも考える。
(6)整列、正座、胴・垂の片付け方について、礼をして終了する。 (10分)
・胴、垂の片付け方について-----はじめの頃は、正式な仕込み(仕舞方)を教えていたが、授業の中ではど
うしても間違いや、紐の緩みが生じ、胴紐や垂紐に固い結び目ができたり、またバラける例が大変多く出
てくるので、簡易的に以下の方法を取り入れた。
・授業用防具について
1、胴については、長い胴紐は胴の前面で十文字にクロスさせて胴の裏側で喋喋結びをする。短い胴紐も胴
の前面下部へしっかり引っ張り喋喋結びをして、紐類だけをしっかり固定させる。
2、垂は紐を固定した胴の内側に裏を向けてペタッとのせるだけ。垂紐がバラけないように内側へまとめ
る。
3、その上に面は面金を下にして、面垂を上に巻き上げてのせ、面の両サイドに甲手を挟み込むように置
く。そのまま防具棚へもっていく。
という方法で指導した。
剣道の専門家からすれば正しい、伝統的仕込み方を指導すべきという意見もあると思う
が、限られた時間の中で合理的な方法を採用してもよいかと考える。
第7限 ①打込み棒の総合練習 ②胴打ち(2) ③パターンの掛り稽古
・道場に入ってくれば、胴・垂のみ先に着装するよう指示しておく。
・全員の胴・垂の着装完了を確認する。
(1)整列、正座、礼、出欠点呼、竹刀点検、準備運動、素振り (7~8分)
(2)打込み棒形式の復習練習(7分)
①正面打ち(元立ち1人、打込棒1本)
②素早い小手・面打ち(元立ち1人、打込棒2本)
・上記①②のみ元立ちを適宜交代させながら、それぞれ3往復程度復習練習を行う。
・終了したら打込棒を片付ける。
(3)胴打ち(12~15分)
・前回のA,B,C,D,E,F段階までの復習練習。(E、Fを重点的に対面形式で行う。)
(4)打込棒と胴をつかっての掛かり稽古(20分)
・本時間のメイン練習である。
・これまで個別に練習してきた、面、小手・面、胴打ちを打込み棒と胴を使って、短時間のうちに
連続して打ち込んでいく練習である。
①隊形は打込み棒練習と同じ。元立ち1人。
(元立ちは自分の竹刀を道場の端へ置いて打込み棒を2本持つ。)
②掛かり稽古についての説明
・本来の掛稽古といわれるものとは少々意味が違うが、ここでは決められた時間内(15~20秒)に、
元立ちが打たせるべく指示したところを、できるだけ正確に、スピーディーに打っていく練習とし
て理解する。
【A段階】(パターンを決めた掛稽古)
・面→小手・面→胴の3つを繰り返す掛稽古。
1、元立ちは、はじめは全員同じ方向を向いて、2本持った打込み棒のうち、1本だけを面の高さにかか
げる。
2、笛の合図で、各列先頭の者は、まず「メーン」と発声して打ち、送り足で前方へ抜けていく。
3、抜けた後、左方向へ転回し(時計と反対周りに)振り返り、中段の構えをすぐにとる。振り返った
時にすぐ、次の1歩で打込みができる距離がとれることが望ましい。
4、元立ちは打ち込んだ者が抜けていった後すぐ、打込み棒2本で 小手・面の高さにセットする。
(打ち込む者が振り返ってすぐ小手が打てるようにセットする。)
5、打ち込む者は、振り返ってすかさず「コテッ・メーン」と発声して打ち、送り足で前方へ抜けて
いく。
6、抜けた後、同じく左方向へ転回して振り返り、すぐ中段に構える。
7、元立ちは打ち込む者が抜けていった後、打込み棒2本を上方へ上げ、打ち込んでくる者に対し正面
を向き、胴をみせる。
8、打ち込む方は、すかさず「ドォー」と発声して、相手の右胴を打ち、送り足で右前方へ抜けていき、
抜けた後左方向へ転回してすぐ中段に構える。
※ポイント
・この1~8のパターン:「メーン」「コテッ・メーン」「ドォー」を15~20秒間繰り返しておこなわ
せる。
・笛の合図で、ストップウォッチでタイムを計ってやるもよし、教師の判断でだいたい3~5回このパタ
ーンを繰り返したら、合図を送ってもよい。
・笛の合図があれば、打ち込んでいる者はすぐにやめて各列の最後部につき、同時に2番目の者がパター
ンの掛り稽古に入る。したがって終了の笛が次の開始の笛と同じということになる。
・左方向へ転回していく理由として、第1に、送り足で抜けていったあと、左足を軸にクルッとまわり
やすいこと。右方向へ回転すると、振り向く瞬間に右小手ががら空きになりやすいこと。胴打ちでは、
右前方へ抜けていくので、左方向へまわれば元のまっすぐ打てる位置へ戻りやすいこと。などがあげ
られる。
・元立ちを交代しながら、3周り程度行えばよかろうと思う。
【B段階】(元立ちの指示したところを素早く打つ掛り稽古)
・A段階の決まったパターンをやめて、元立ちが打込み棒を1本出せば 面あるいは小手を打つ。
(元立ちはしっかり打たせる部位の高さに打込み棒をセットすることが条件)。2本出せば小手・
面の連続打ち。2本とも上方へ吊り上げれば胴打ちとして、元立ちが好きなように打たせる練習で
ある。
・隣の列との間隔が狭いと、打ち込む者どうしが接触することもあるので注意を要す。
・これも15~20秒で合図をする。
・時間の許す限りドンドン打たせて、間合い感覚・スピード・正確な打ち・発声・手足の一致など、
総合的に習得できるまで行う。
・時間の余裕があれば、うまく打ち込んでいる者、また元立ちとしてうまく捌いている者など抽出して、
模範的にやらせてみるのもよい。
(5)整列、正座、胴・垂の片付け方について復習、礼をして終了する。 (5分)
・次回は面の着脱に入るため、面手ぬぐい(もしくは面頭巾)を持ってくるよう指示しておく。
・第8限 ①面の着脱方法 ② 面をつけての面、胴打ち
道場に入ってきたものから、胴・垂のみ先に着装しておく。甲手と面については膝元へ置いておくようにも指示する。
全員の胴・垂の着装を確認する。
(1)整列、正座(5分)
・自分の右膝の斜め前に、甲手を2つ揃えて置かせ、その上に面の面金部分が甲手と合わさるように(ただ
し面金が床面に落ちないように)静かにのせる。
・面紐は面金に結んである元部分はそのままにして、全部を伸ばしてみて、破損がないかを確認させる。確
認後、面紐を束ねて面金の内側に入れさせる。
・持ってきた面手拭いを面の上に開いて置かせるか、また面の内側にたたんで入れて置かせる。
・胴垂を装着し、自分の左側に竹刀、右斜め前に甲手と面があることになる。膝の前を空けて礼ができる態
勢が整う。
(2)礼、出欠点呼、竹刀点検
(3)面の着脱の仕方(10分)
・面の着装については、初めて経験する者にとっては大変な違和感があり、また器用でない生徒にとって
は、大変時間の掛かるものであるが、繰り返し練習する中で、次第にはやくなってくる。しかしながら、
ゆとりを持ってみないと、早くて3分、遅くて5分くらいは全員着装までに時間がかかる。
①面手拭いの付け方
・日本手拭いを用意せよといっても、最近では家に日本手拭いがないところもあり、普通のタオルを持って
きたりする生徒もある。「さらし」を適当な大きさにカットして作成してもよいが、授業用に販売してい
る「面頭巾」(600円程度)を生徒に購入させるのが可能な学校なら、その方が合理的であり、着装の為
の時間のロスも少なく、途中ではずれる心配も少ない。
・手拭いの付け方には色々な方法があり各指導書、入門書に紹介されているが、ここでは大塚忠義編書「の
びのび剣道学校」(窓社)に記載されている簡便な方法を【図21】で紹介させていただく。授業ではこの
付け方が一番便利でわかりやすい方法である。
②面の装着
・最近の面紐は面金の下から3~4本目から元の結びが始まっているものが多く、またこの形式の方が初心者
は着装しやすい。(経験者では面金の一番上から面紐の起始部があるものを採用している人も多い。)
1)甲手を自分の膝元へ寄せ、その上に面金を下にして面を乗せる。そして面はかぶらずに、一度面を付け
た時と同じように面紐だけを通させてみる。
2)紐の出発点から顎の横を通って、後頭部で両方の紐がクロスし、面金の一番上で再度クロスさせて後頭
部へもどる。後頭部では紐の長さが均等になるようにして喋喋結びを行う。側頭部を2本の紐が通って
いることになるので、それを揃えて一つに見えるようにまとめさせる。【図22】
3)上記の理解とセットができたら、そのまま軽く紐を緩め、左手で面金の下方を持ち、右手で後頭部にあ
たる部分の紐を持ち、自分の頭が入るように緩めながら被ってみる。左手で顎部をしっかり押さえて、
面の内側を顔にピタッとつけておく。顔と面との隙間が空かないように押さえたまま、左手、右手をう
まく持ち替えて、紐を締め後頭部でしっかり結ぶ。
4)全員が揃うまで一通りやらせてみる。早くできるもの、そうでないものが出てくるが、早くできたもの
には遅いものの手助けをさせる。教師も巡回点検を行う。
5)概ね出来上がったら、もう一度全員面をはずして、正座・礼をした時のはじめの状態に戻す。
・竹刀を左、面・甲手を右に置いた状態で準備体操に入る。
・竹刀を足に引っ掛けないよう注意しておく。
(4)準備運動・素振り(5分)
(5)面付け(5分)
・準備運動が終了したら、教師側の以下の掛け声指示で面を付けさせる。
・「正座」(「面・甲手を膝元へ寄せて」)「姿勢を正して」「面付け」
・面をつけたものから甲手をはめ、全員が着装するまで静かに待つ。
・防具を着けた感覚に慣れさせるため、跳躍素振りなどを全員で20~30本行なわせるのも良い。
(6)面、甲手をつけての基本の面打ち(15分)
・各列を向かい合わせ、対面形式で行う。いつも同じ相手にならぬよう、列を組み変えたり、ローテー
ションさせたりして配慮する。
・はじめて面をつけた違和感から全体の動きはぎこちない。鼻が痒くてしかたなくなる者や、手拭いが顔
面にかぶさってくる者など、教師の言うことに集中できない場面が出現する。また面をつけているの
で、生徒は教師の声が聞き取りにくい。教師は次第に大きな声を出すようになるだろう。
【A段階】(基本の面打ち)
1、向かい合って中段に構える。剣先を3~4cm交叉させる距離とする。
2、元立ちの列とはじめに打ち込む列とを指示する
3、元立ちAは中段の構えから、剣先を自分の右足前あたりにスーッと落とす。
4、仕かける方Bは、中断の構えをくずさず、1歩踏み込めば相手の面に届く距離に右足からスーッと間合い
を詰める。
5、笛の合図により「メーン」と発声して打ち込ませる。
これまでは打込み棒を打ってきたので、面を打った後はそのまま直進して抜けていくことができた。しかし、ここでは面を打てば真正面に相手は立ったままいる。
本来なら元立ちAは面を打たせた後、仕掛けたBが通り抜けやすいように右後方に退きながら足を運んで体を捌く。そうするのが伸びのある面打ちをうまく引き出させる方法である。
しかし狭い道場に多くの生徒がいる場合、打たせた後、右後方へ下がる体捌きを元立ちにやらせると、隣の列で、面を打って抜けようとする者の邪魔となり、進路をふさぐケースがでてくる。もちろん道場が広く、余裕のあるところでは、元立ちはこの体捌きを行わせるべきである。
したがって、元立ちAには剣先を下げたまま、じっと立ったままにさせておき、打ち込んだBが元立ちAに体当たりしないように、自分からうまく右方向(相手の左手側)に送り足ですりぬけていくよう指導する。
踏込み足(右足)を少し右に踏み込むことで、打込み棒と同じような伸びのある面打ちは可能である。打ち込む場合のポイントは、打込み棒を使用した時と全く同じである。
元立ちAの方は、剣先を下段に下ろして立っているだけであるが、面を打たれることに恐怖を覚え、首をすくめて、下を向く者がでてくるが、下を向くと頭頂部にもろに竹刀があたって余計に痛い。したがって胸を張って正面を向いておくよう指示する。
7.打ち込んだら送り足で抜けていき、互いに向きをかえて、同じ要領で打たせる。
8.数回も行えば、面をつけていても慣れた打ちになり、打込み棒を使った時と同様に打てる。
9.A・Bを適宜交代して行う。
【B段階】(相手の竹刀を下方へ叩き落としての面打ち)
・時間の余裕があれば、この段階へ進める。
1、互いに中段に構える。
2、仕かける方Bは、中段の構えから、右足から軽くスゥーと前へ出ながら、元立ちAの竹刀の中ほどを自
分の竹刀で軽く叩き落とす練習を3~4回行う。笛の合図で行なってもよい。手首だけを使って、パ
シッと瞬間的に下方へはたくよう心掛ける。第5限で行ったコックを効かせる練習そのものといえ
る。
3、次に、第5限で行った素早い小手・面の連続打ちの要領で、相手の竹刀を叩き落としたらすかさず面
に攻撃を行う。いわゆる「コテッ・メーン」のリズムではじめの「コテッ」のところを、相手の竹刀
を叩き落とす動作とするわけである。
リズムは、叩いて(パン)・(メーン)のリズムで面に出る練習を行う。
4、したがって、足捌きもコテッ・メーンの捌きと全く同じとなる。初めの練習としては、前方へ抜けて
いかずに、右足だけトン・トンと踏ませながら、それに手の動作(叩いて・メーン)をその場でやら
せるのもよい。
5、面を打ったら前に抜けていき、抜けきったら振り返る。
6、笛の合図で数回繰り返して交代する。
※この技は仕掛け技である。自分の方からすすんで相手の体勢をくずし、竹刀の位置を変化させ、スキの
できたところを打ち込んでいくもので、はたき面、打落し面といって宵と思う。
(7)胴 打 ち(5分)
1、これは今まで練習してきた胴打ちを、そのまま復習で行えばよい。対面して互いに中段の構えから、元
立ちA、打ち込む方Bを決めて、笛の合図で行わせる。
2、ただし、初めて面と甲手をつけての胴打ちであり、特に甲手をはめると手首部分が大変窮屈となるの
で、刃筋を効かせることを必ず意識させる。
3、面をつけていても、頭が下がりすぎず、胸を張った胴打ちができるよう心がける。
4、中段の構えから笛の合図で元立ちAは軽く竹刀を上段へ上げる。打つ方Bはすかさず相手の右胴を打って
前方へ抜ける。互いに向きを変えて中段の構えに戻る。これを数回繰り返す。
5、時間の余裕があれば笛の合図をなくし、中段の構えから元立ちが竹刀を上方へサッと上げる動作を開始し
た瞬間に、すかさず胴打ちに跳びこむ練習を繰り返させる。数回ずつ交代して行わせる。
(8)整列、正座、防具の片付け方(5分)
1、整列正座して、竹刀を左側に置かせる。
2、「甲手とれ」の声をかけ、甲手をはずさせる。
・左手、右手とはずして、自分の膝の前に2つを縦に揃えて置かせる。(横に二の字でおかせてもよい。
その方が甲手の上に面を乗せても、面が二つの甲手の間に落ち込んで床へつくこともない。)
3、「面とれ」の声で面をはずさせる。
・面紐がもつれぬよう、面金から紐を抜いて、面の内側に束ねるように入れておく。
・面手ぬぐいで、汗をかいた面の内側を拭かせる。
・甲手の上に静かに面を置く。
4、胴、垂をはずし、前時と同様に仕組んで胴の内側に面垂の部分が外へでないように巻き込んで面を置
き、面の両サイドに甲手をかますようにはめ込む。
5、仕込み(仕組み)が完了した者から、教師の点検をうけさせる。(紐がきっちりと仕舞われていないも
の、垂紐が外へ出ているもの、束ねていないものなどをチェックする。
6、仕組みがうまくできて、「ヨシ」といわれたものは防具棚へ片付けさせる。
(9)全員完了した時点で、正座、反省、礼をして終了する。
大塚 正義 編著 「のびのび剣道学校」【窓社】より
・第9限 ①面をつけずに小手打ち、引き胴、引き面打ち
②面をつけての面打ち、小手・面打ち・胴打ち
・道場に入ってくれば、胴垂のみ先に装着。面、甲手は手元に置いておくよう指示する。
・全員の胴垂装着を確認する。
(1)整列、正座。(甲手、面は右斜め前に置く。)礼、出欠点呼、竹刀点検(7~8分)
(2)準備体操、素振り。(5分)
(3)面をつけないで 小手打ち(5~7分)
・面をつける前に、面をつけずに軽いタッチでの技術練習を必ず取り入れる。その理由としては、面を着けると教師側の指示が聞き取りにくい者がでてくること。またメガネをはずして面を着ける者もあり、面をつけずに行う練習の中で、技術構造を先に理解しておくことで、リラックスした竹刀捌きができる。
1、準備運動終了後、甲手だけはめさせる。面は道場の壁際に静かに置かせる。
・甲手をはめた際に、甲手の内側の紐をギュッと引張り、手首と密着するように絞り込んでしまう者がで
てくるが、あまり絞りすぎると、小手を打たれた時かなり痛い思いをするのである程度遊びをもたせ
て、隙間、ゆとりを持たせておいた方がよい。
2、対面形式で小手打ちの練習を行う。前時とメンバーが(列が)入れ変わるように配慮する。
3、互いに中段の構えをとらせる。さらに元立ちの列は中段の構えから剣先を左上方へ吊り上げ、右甲手を
空ける体勢をとる。この時、右肘をできるだけ伸ばしたままで、剣先を左上方へ吊り上げさせる。肘を
曲げたり、肘を落としてしまうと、打つ方も打ちにくいが、打たれる方も大変痛い感覚がある。腕を伸
ばし、剣をしっかり握っている方が打たれてもあまり痛くないのである。
4、打ち込む方に、コックを効かせる練習を3~4回させる。基本の小手打ちは中段の構えから竹刀を上方に
振りかぶり、「腕の内側から相手の甲手がみえるまで振りかぶりなさい」、とよくいわれるが、実戦的
にはこのコックを効かせた振り、つまり手首だけの振り打ちが使われる。
5、一歩踏み込めば甲手に当たる位置で中段に構え、笛の合図で1歩だけ踏み込んで相手の小手を打つ練習
を行う。
6、ここではあくまで1歩だけというのがポイントである。剣道部員が行うように、「コテッー」と打っ
て、前に進み出て抜けていったり、あるいは体当たりまでもっていってはいけない。跳躍素振りで前に 出る足捌きで、右足から出て、すぐ左足を寄せ付けて小手を打ち、そこで止まる練習をする。「コ
テッ」と短く発声する方がよい。この足捌きとコックの効いた竹刀の振りを合わせるのである。
7、スローな解説をすると、中段の構えから左足の踵を浮かせるようにして重心を前方へ移動しながら右足
を浮かせる。右足が浮いた瞬間に(浮かせるのと同時に)構えた竹刀の剣先を手首をつかって上げる。
右足を前に踏み込ませるのと同時に、コックの効いた「コテッ」が入って、すぐに左足を寄せてくる。
8、中段の構えから、剣先が円運動をして吊り上らず、竹刀を 構えた位置から平行に上げ、平行に押さえ
込むように小手を打つ者がでてくることがある。そういう生徒には、手首は上下に平行に動くのではな
く、中段の構えから剣先だけを頭の方にもってくるようにアドバイスする必要がある。
9、本来は、面打ち・胴打ちと同じように、前方へ抜けていく、勢いのある、伸びのある小手打ちが正し
い。授業では、次に行う小手に対する応じ技への発展のために、あえて、このショートの小手打ちを練
習させる。徐々に勢いをつけていく練習へと発展させていく。
10、小手を打った後、竹刀の位置をまっすぐ正面においたままにしていると、相手は面をつけていないの
で、相手の胸元やのど下に剣先が入ってしまうので、「コテッ」と打った後は、打った反動で竹刀が弾
ね戻って来る時に、剣先を正面から30cmほど左斜め上方向にはねもどすように竹刀を捌かせる。縦の
振りから、もどりは左斜め上へと認識させながら練習に入ること。
11、相手を変えながら、数回ずつ3~4人も行えば、だいたいできてくるものである。
12、小手打ちは竹刀の物打ち部が正確に入った場合、「パコン」といういい音がする。小手打ちの目標は
「手首を切り落とすように-----」とよく言われるが、この音による判断練習を男子生徒は面白がって行
う。なお、現在の試合規則では、中段の構えの場合、有効な小手打ちは相手の右小手であることを言っ
ておく必要がある。わざわざ奥にある左小手をねらって打っても駄目だということ。左小手打ちが有効
となるのは、相手が上段に構えた時であることも話しておく必要がある。
(4)面をつけないで 引き胴打ち(5~7分)
・これまでは、いわゆる一足一刀の間合いからの踏み込み攻撃練習であったが、ここで始
めて間合いが接近した状態(もしくは詰った状態)------つばぜり合いからの引き技の練
習を行う。
・ただし、週1時間の授業で(約2年間の通年の一連の授業で)、自由稽古(地稽古)や試合をやらせて
も、剣道部員か能力の高い者以外で、つばぜり合いをみせる場面というのは極めて少ない。しかし、間合
いが近い状態からの引き技を出すケースはまずまずあるので、この引き技の練習もおろそかにしてはなら
ない。
1、甲手をはめたまま、対面した双方から歩み寄り、つばぜり合いの体勢をとる。要領として、互いに中段
の構えから肘を曲げ、拳を引きつけると、右甲手が右胸前に、左甲手が鳩尾の左部にくるぐらいにな
る。剣先が右上にくるように、竹刀を60度くらいにセットして、自分の鍔と相手の鍔を合せるようにし
て構える。実際には鍔と鍔というより、右甲手の拳と拳を合わせるといった方がわかりやすい。自分の
右拳と胸との間は、完全に密着してしまうと窮屈になるので、反動を利用する為にも、10~15㎝は空い
ているようにしておく。足は中段の構えよりも前後の幅は少し狭くするが、右足前・左足後ろの形は崩
さぬようにする。
2、互いにつばぜり合いの態勢から、笛の合図により、元立ち側は竹刀をスッと上方へ吊り上げて、自分の
胴をみせる(空ける)。打ち込む側は、左足を大きく一歩後方へ下げ、間合いを空ける(開く)と同時
に、右側に置いている剣先の位置から、右手首を左手首に重ねるようにして、剣先を左方向へ円を描く
ようにもってきて、刃筋を効かせて「ドォー」と打つ。左足を後方へ下げて床面に足が着くのと、
「ドォー」のあたる音とが同時になるようにする。
3、打った後は一歩で止まらず、相手との間合いを切るように(一歩で止まってしまうと、相手の反撃を受
けてしまうため)、送り足で3歩以上はリズムよく下がるようにする。したがって、左足を引いて打っ
た後、前にある右足もすぐに引き付けてこなければならない。この時、胴を打った竹刀の位置をそのま
まにして(打った瞬間の形のまま)下がるようにすれば、残心の態勢がとれる。
4、上達してくれば、引き技の足捌きは、左足から引くのではなく、両足ではねるような、跳ぶような捌き
方を経験者は使うようになる。これは、鍔元を(相手の甲手を)瞬間に押し込んで反動を利用する動作
などと連係して、左足を下げながらというより、前足である右足で後方へけり動かすといった方がよい
かもしれない。はじめのうちは2のような方法で十分と思われる。
5、前に出て打つ胴打ちよりも、この引き胴の方が技術的には習得しやすい。胴打ちは生徒は好んでしたが
るが、引き胴で「バシッ」とあたる感覚もスカッとするものがあるようだ。ただ、勢いばかりで、相手
の脇に当たったり、垂に当てたりするケースもみられ、スピードよりもまずは正確な打ちを目指す。
笛の合図で7~8回も繰り返せばそれなりに出来上がってくる。
(5)面をつけないで 引き面打ち(5~7分)
1、同じくつばぜり合いの態勢から、笛の合図で、元立ちは竹刀を上方へ上げる。ここでは面はつけていな
いので、面を打たせる代わりに、上方へあげる竹刀で相手の(面へ打ち込んでくる)竹刀を受けるよう
に上げさせる。つばぜりでは剣先を右斜め上に構えているので、剣先をそのまま右にしたまま、スッと
上方へ上げればよい。つばぜりで右胸前にある右手を、笛の合図と同時に、額の左前にもってくれば、
自分の竹刀で相手の面攻撃をブロックすることができる。ただし、受ける時に、あまりにも竹刀を水平
にして上げる者がでてくるが、次段階への発展として受けてから返し技などを出す場合、動作が大きく
なりすぎるので、竹刀は右45°くらいの角度をつけて受けさせるのがよい。ただし、ここでは面をつけ
ていないので、恐怖心からどうしても竹刀を水平にして大きく上げがちになる。注意を要するが、この
段階ではあまり細かく言わず、正確に受けられればよしとする。
2、さて、面を打つ方は、引き胴と同じく、つばぜり合いから左足を大きく一歩さがりながら、引き面を
打っていく。剣先が右斜め上にあるつばぜり合いの状況から、右手首が支点になるような気持ちで、剣
先を一旦自分の頭上後方へ軽くまわし、左足をさげたのに合わせて、「メーン」と打ち、後方へ送り足
で3~4歩さがっていく。足捌きは引き胴と全く同じである。
3、「メーン」と打つとき、相手の顔をよく見て、必ず面の位置へ竹刀を振り下ろす。相手の竹刀をただ打
とうと思わず、面の位置へ振り下ろすことを心掛ける。
4、面にあたる感覚は、前に踏み込んでいく面打ちと同じく、肩の高さで右腕が水平になる位置で打つこ
と。手の位置が低ければ面金にあたるし、手首も軽く絞り込んでいないと、打ったときに肘が曲がっ
て、左手が顔面の高さまで上がってきたりするので、前に出て打つ面打ちと同じポイントをおさえてお
く必要がある。
5、尚、打ってから後、送り足で下がっていく際に、竹刀を中段に戻してしまうと、「残心」の態勢が消え
てしまうので、引き面を打った反動で、そのまま剣先を上方へつり上げ、「今の打ちはどうだ!」とい
うように、上段の構えのように竹刀を上げて、さがっていかせる。「メーン」と打てば、すぐに上段に
構えるように意識させる。
6、笛の合図で7~8回も行えば、出来上がってくるものである。
(6)面をつけないで、引き胴、引き面打ち(5分)
・時間の余裕があれば、次の練習を行う。生徒が好んで行う練習である。
1、面をつけない、つばぜり合いの態勢から、指導者の「メーン」あるいは「ドォー」という発声の合図に
よって、その指示されたところを打つ練習である。
2、元立ち側は、指導者が「メーン」「ドォー」と何を言うにも関係なく、つばぜり合いの状態から、サッ
と面打ちを受ける要領で、竹刀を上方へ上げてくればよい。それだけで、相手は空いた胴も打てるし、
面にカバーした竹刀を打つこともできる。
3、打つ部位は面か胴であることを確認し、つばぜり状態から、用意が整ったとみるや、指導者は「メー
ン」あるいは「ドォー」の発声を行う。打つ方は指定された部位を正確かつスピーディーに打ち、送り
足で3~4歩はさがっていき残心の態勢をとる。
4、(4)(5)の練習ができていれば何も難しいものではない。5~6本ずつ交互に相手を代えながら行
えば、結構楽しく練習できる。
・面をつけずに行う練習をここで終える。
・各自に面を持ってこさせ、もう一度整列、正座させて面をつけさせる。
(7)整列・正座、面付け(5分)
・道場の端に置いていた面を各自持ってきて、前回の復習をしながら面をつける。
(8)面をつけての基本の 面打ち、小手・面打ち、胴打ち (10~15分)
①基本の正面打ち
・第8限(6)の面打ちの復習を行う。ポイントを再確認し、対面形式で数回ずつ行わせる。
②相手の竹刀をはたき落としての面打ち
・第8限(6)の【B段階】で行った復習練習を行う。ポイントを再確認し、数回ずつ行わせる。
③素早い 小手・面の連続打ち
1、防具をつけての練習では、今回はこの小手・面の二段連続打ちがメイン練習となる。
2、互いに中段の構えから、元立ち側は、この時間のはじめに小手を打たせた時の要領で、右小手を空けて
みせる。
3、打つ方は、②で行った「竹刀を叩き落として面打ち」の要領と全く同じ動きで、竹刀をはたく動作を小
手打ちに代えて行うだけである。発声は「コテ・メーン」。足捌きも「タッ・ターン」と出て行く。打
込み棒を使った練習そのままである。
4、手首のコックを効かせた小手打ちから、小手を打った反動で竹刀がはね上がったら、そのまますかさず
「メーン」と前に伸びる打ちを心掛け、面を打てば、自分の方から見て右方向(相手の左手側)へ抜け
ていく。ここでも本来なら、元立ちは打たせた後、右後方へ下がりながら、打ち込んだ方が通り抜けや
すいように体を捌く練習をさせればよいが、道場の広さや人数の関係で狭い場合は、打ち込んだ方が、
自ら右方向へうまく抜けていくよう心掛けさせる。
ただし、この小手・面うちは、二段で(二歩で)相手に近づくために、間合いがツ・ツーと詰ってい
く為、普通の面打ちに比べどうしても打つ方は正面に踏み込み、元立ちと接触することが多い。そのた
め、元立ちは相手が前に出てくるのに対し、少し後方へ下がりながら、コテ・メーンと打たせるよう指
示したほうがよい。打ち込む側にスピードと勢いがあると、どうしても元立ち側のうまい体捌きが必要
となってくるが、初心者にうまく捌けといっても、なかなかすぐにできるものでもなく、多少なりと
も、「後方へ下がりながら」打たせる感覚を持つことができればよしとする。
5、数回ずつ、笛の合図で交代して行わせ、おおむねできるようになれば、笛の合図をなくして、自分のタ
イミングで交代しながらやらせてみる。
6、時間的な余裕があれば、元立ちははじめから小手にスキをみせず、互いに中段に構えた態勢から、サッ
と小手を空けさせて(竹刀の剣先を左斜め前方へ向けさせて)そこをすかさず、コテ・メーンと打ち込
む練習をさせる。
④ 胴 打 ち
1、 はじめは、前時の胴打ちをそのまま復習すればよい。4本程度打てばよい。
2、・少し発展させて、元立ちは中段の構えから、手元をスッと20cmほど上方へ上げる動作をとらせ
る。(あまり大きく振りかぶるような動作はしない。)打ち込む側はその相手の竹刀がスッと上がる
瞬間をとらえて、胴打ちに入る練習を行う。
・次の課題である「面に対する抜き胴」の前段練習と考えてもよい。ここでは元立ちは竹刀を上方へ動
かすだけで、足は動かさない。これも数本行わせる程度でよい。
3、さらに発展させて、元立ち側は中段の構えから正面素振りの要領で、振りかぶりからスッと前に出なが
ら相手の面へ振り下ろす。ここではあくまでスピードをつけずに、素振りの要領で、スッと振り上げ、
すぐ相手の面にスッと振り下ろしてくる感覚でよい。元立ち側は相手の面にあえて当てようとしなくて
もよい。元立ち側の竹刀が振りかぶられる瞬間をとらえて、胴を打ち込み、出て行く練習を行う。
(9)整列、正座。防具の片付け方の確認。本時の反省。礼をして終了する。
第10限 基本の組合せ練習――パターンの掛稽古(Ⅱ)
・道場に入ってくれば胴垂のみ先に装着。面・甲手は正座時に右斜め前に置くよう指示。
・全員の胴垂着装が完了するのを確認
(上記については、休憩時間には少なくとも胴垂をつけておくよう指示徹底しておく。)
(1)整列、正座、礼。出欠点呼。竹刀点検。準備体操。素振り。(8~10分)
(2)面をつけずに引き胴、引き面の練習(軽い体当たりを加えて) (7~8分)
・甲手をはめて、面は道場の端へ静かに置かせる。
1、前時の引き胴、引き面の練習を数回ずつ程度復習させる。つばぜり合いの態勢の基本的ポイントの復
習。左足からの引き動作。「ドォー」「メーン」の発声。残心の姿勢。などのポイントについて再確認
させる。
2、次に互いに中段の構え。
・打ち込む側は笛の合図で、軽いタッチで「メーン」と出る。軽くといっても、ここでは素振りのような
すり足ではなく、あくまで左足で床を蹴って前に軽くとんで行くように面に出る。ただし、ここでは両
者とも面をつけていないので、面の位置の15cmほど上空で竹刀を止めるつもりで、あくまで軽く出
る。「メーン」と打って出て、伸びた右腕を(まずしっかり伸ばして打っていることを前提として)す
ぐに肘を落として縮め、つばぜり合いの態勢の位置へ腕をもってくる。面を打った後、剣先は右側へ
もってくること。
・打たせる側(元立ち)は中段の構えから、笛の合図ですぐにつばぜり合いができる位置へ竹刀をもって
くる。したがって、打ち込む方は「メーン」とまっすぐ出た後、そのまま元立ちへ軽い体当たりを行う
わけである。ここではあくまで軽いタッチで行わせる。肘が伸びきった状態ではなく、肘を落としたつ
ばぜり合いの姿勢で、自分の胴(腹)を軽く「ドン」とぶつけていくように当てさせる。元立ちの方
も、後方へ下がらないよう踏ん張って、相手の体当たりを受ける。中段の構えから手元をみぞおちに寄
せながら、体当たりされる瞬間に、腰を1~2cm落とすぐらいの気持ちで、腹に意識を集中して受ける
ようにする。
・数回ずつ、交代して軽く行わせる。
3、次に、1と2の組合せ練習を行う。
・つまり、軽く「メーン」と出て、軽い体当たりから、すぐに引き「ドォー」あるいは引き「メーン」と
下がる練習である。前方への攻めから、体当たりの反動を利用して、後方へ下がりながらの攻めとい
う、前後の攻撃切り替え練習ということになる。
4、あとで、面をつけて充分に行うので、まずは感覚的に前後の動きを把握させる程度でよかろうと思う。
数回程度交代して行わせる。
(3)整列、正座。面付け。(5分)
(4)基本の組合せ練習――パターンの掛り稽古(Ⅱ)(25~30分)
A段階 ・これまで練習してきた打ちをパターンとして覚える作業をまず行う。
・これはテストとして行うパターンであり、覚えこまなければならない
〈 対面形式 〉
打ち込む側の動き |
元立ち側の動き |
①中段の構え |
① 中段の構え |
②正面打ち→大きく振りぶって 「メーン」と正面打ち。 前方へ抜けて、左方向へ 回転し振り返る。 |
② 中段の構えから、剣先を下方へ落として面を空ける。面を打たれた後、向きを反対して中段に構える。
|
③相手の竹刀の中程を下方へ「パ シッ」とはたいて「メーン」と 正面打ち 前方へ抜けて、左方向へ回転 し振り返る。竹刀の音はタン・ ターンと 聞こえねばならな い。 |
③ 中段の構えで、竹刀を下方へはたかれ たら下方へ下げたまま面を打たせる。 向きをかえて上段に竹刀を上げ、胴を あける。
|
④振り返ってすかさず胴打ち。 「ドォー」と打って前方へ抜け、 左方向へ回転し振り返る。 |
④ 胴を打たせ、その後ろ向きをかえて、 竹刀を胸元へ寄せ、体当たりを受ける 態勢をとる。 |
⑤「メーン」と正面打ちに出て、 そのまま軽く体当たりから引 き「ドォー」と打ち、すかさ ず再度「メーン」と正面を打 ち込んで、そのまま2回目の 体当たりから、引き「メー ン」とさがり、残心の姿勢か ら中段に構える。 |
⑤ 面を打たせ、そのまま体当たりを受 け、すぐに手元を上げて胴を見せ、打 たせる。さらにすぐ竹刀を胸元によせ て、再度面を打たせ、2回目の体当た りを受けて、今度は そのまま引き面 を打たせ、相手がさがるのを確認して 中段に構える。
|
⑥ 最後に「コテッ・メーン」と 打って前方へ抜けていき、振 り返って中段 に構える。
|
⑥ 中段の構えから剣先を左斜め上に上 げ、右甲手をみせる。小手・面の連続 打ちを打たせ、相手が抜けていった 後、向きをかえて中段に構える。 |
・打ち込む側のパターンをもう一度確認すると
①「メーン」 ②竹刀を打落して「メーン」 ③「ドォー」
④「メーン」体当たり、引き「ドォー」 ⑤「メーン」体当たり、引き「メーン」
⑥「コテッ・メーン」 という流れである。
・この流れで、ゆっくり行って約20秒。スピードに乗せて約15秒程度で行える。
・はじめに示範するか、剣道部員に行わせる。
・この流れの中に、剣道の大切な要素はおおかた入っている。
・まず対面形式で教師側から次は何を打つのかを、先先に大声で告げてやり、パターンが一通り終われば、
交代して同じ課題をこなさせる。パートナーを交代させながら、だいたい数回ずつ行えば覚えてくるもの
である。
※ 剣道の昇級審査(1級審査)では、これによく似た流れ(パターン)の前後に、切返しといわれる剣道独特の動作がある。------ウォームアップ効果もあり、気を充実させ、練り高める為の一連の動作でもあり、手の内を締める効果もある。剣道経験者なら、誰でも、まず初期段階で教えられる内容のパターンである。しかし、この切返しは、一連の流れとしてうまくもっていくまでには、初心者にとってはかなり難しく、経験を積まねばならない。したがって、この授業の指導案では切返しは扱っていない。 【切返しの一般的なパターン】 ・大きく振りかぶって正面うち-----そのまま体当たり-----相手が後方へ下がるところへ、送り足(すり足)で前進しながら交互に左右面に打って出る。このとき、左面(自分からすれば右方向からの面)から打ち始め、奇数回数を打つ。一般的に4歩前進・3歩後退か、5歩前進・4歩後退程度の切返しを行っている。規定本数を切返ししたら、中段に構えなおし、もう一度大きく正面打ちを行って前方へ抜けていき、反転して再度同じパターンを繰り返すか、または、前方へ抜けていかずに、再度体当たりして切返しを行う。各学校(各指導者)によっても、多少異なるパターンを使っているようである。 ・元立ち(受ける側)は、相手の打ちをうまく引き出させるよう、歩み足で後退・前進し間合いを調整しながら、左右面に打ってくる相手の竹刀を左右にかわすように受ける。 ・切返しの技術は、手首を返して、刃筋を効かせながらの、正確な打ちをしなければならない。とくに女生徒の初心者はなかなか様にならず、習得までに時間がかかる。元立ちの捌き方も難しく、剣道部員がウォームアップ的に動くパターンだからといって、授業ではじめに教える内容としてはあまり適当でないと感じる。
|
B段階 (隊形を変えて)
・打込み棒を打つときの形式に隊形を変える。各列ごとに元立ちを1人出させる。
1、笛の合図で、列の先頭の者から、今覚えたパターンをできるだけスピーディーにこなしていき、最後の
「コテッ・メーン」を打ち終えたら列の最後尾につく。
2、だいたい各列のメンバーが最後の「コテッ・メーン」を打ち終わるのと同時くらいに次の笛をならす。
その笛を合図に、各列の2番目の者が同じパターンをこなしていく。
3、元立ちは5~6人程度を連続で受けた後交代させる。
4、以上の「掛稽古(かかりげいこ)」を時間内に徹底的におこなう。剣道の、打込みの基本技術はこのなか
にほとんど含まれており、これを徹底して練習することで、後々の技術に発展させていきやすい。
5、時間の余裕があれば、技術的にすぐれた生徒を抽出して、やらせてみるのもよい。
6、必ず、元立ちを経験させ、受けること、打たせることについても習熟させていく。
(5)整列、正座。防具の片付け方の確認。本時の反省。礼をして終了する。
次回は、今回のパターンをつかった実技テスト(評価)を行うことを告げる。
神戸市 北区