剣道 第11限~第15限

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第11限

 

・第11限     評  価 (実技テスト)         

 

 ・週1時間を通年で授業を行う場合、1011時限目あたりで、各校とも期末考査に入る時

  期ではないかと思う。また一定の評価を行う場合、だいたいその程度の時間で節目をおい

  て、区切りの評価をしておくべきとも考える。剣道の評価(実技テスト)としてどのよう

  な視点でみていくか。この段階では 

   ①正面素振り動作をみる。 

   ②跳躍正面素振り動作をみる。 

   ③打込み棒をつかった基本の打込みをみる。 

   ④防具の装着や片付けの仕方をみる。 

   ⑤防具をつけての基本の打込みをみる。 

   ⑥授業への意欲・態度についてみる。 などがあげられる。

  この時間では、⑤について、前時間に練習したパターンをテスト課題として行う。                          

 

 ・防具装着(前時と同様に行う。)

   (1)整列、正座、礼。出欠点呼。竹刀点検。準備体操。素振り。810

 (2)整列、正座。面、甲手を付ける(3~4分)

 (3) 前時のパターンの復習練習 (15分)

  ①対面形式での復習:教師側の指示でゆっくり打たせ、元立ち側もうまく捌けるよう

   に流れを思い出す。

    ②相手を数回ほど変えて、徐々にスピードをあげさせながら行わせる。

  ③以下のポイントを再確認させ、それがこの課題テストのチェックポイントになるこ

   とを確認させる。

   a 面打ち イ:竹刀の物打ち部で正確に打っているか。

       ロ:肩の高さで右腕が水平に伸びたところで面を打っているか。

       ハ:刃筋が効いているか。

       二:竹刀が面に当たる音と、右足の踏込む音が同時に聞こえるか。

       ホ:打ち込んだ後、左足がすぐ右足横へ寄せられ、送り足ができているか。

       へ:「メーン」の発声があり、気・剣・体の充実がみられるか。

       ト:腰が引けていないか。

    相手の竹刀をはたいてからの面打ち(上記に加えて)

       イ:相手の竹刀をはたいて面に入る時、二段打ちと同じ「タッ・ターン」と

         いう踏込み(足捌き)ができているか。

       ロ:手首のコックを効かせた、はたき落としになっているか。

    胴打ち

       イ:踏込み足が深く入りすぎ、元立ちの真横に入って前胴を打っていないか。

        (相手の右胴であること。)

       ロ:片手打ちになっていないか。

       ハ:刃筋は効いているか。

       二:「ドォー」の発声があり、気・剣・体の充実がみられるか。

       ホ:後足を引きずるように寄せてきたり、前かがみで頭を下げすぎて打っていないか。

        へ:正確に胴を打っているか。(脇や垂にあたっていないか。)

 

   【胴打ちの失敗として、垂にあたるよりも、脇にあたるほうがまだ良いといわれる。垂に

    あたるのは、いわゆる下からのすくい上げによるものが多く、上方から円を描いてくる

   (斜めから切り下ろす)基本の胴打ちができていない証拠といわれる。そういう意味では

    まだ脇にあたる方が、上からの振り下ろしが効いていると判断される。しかし、実際の

    攻防練習では相手の動きも変化するので、経験者でも垂にあてることはよくある。】

 

    面~体当たり引き胴~面~体当たり引き面打ち

       イ:面を打ってからの体当たりの威力がある程度効いているか。手先からではなく、

         腹からの体当たりができているか。

       ロ:引き技をタイミングよく打っているか。間合いをよく計り、空振りなどをして

         いないか。

       ハ:刃筋は効いているか。

       二:「メーン」「ドォー」「メーン」「メーン」の発声があるか。

       ホ:引き技を打ってから、間合いを切る動作は適当か。また残心の姿勢はあるか。

   e  小手・面打ち

       イ:物打ちで正確に小手・面をとらえているか。

       ロ:スピードがあるか。

       ハ:足の踏込みが「タッ・ターン」と二段で踏込んでいるか。

       二:「コテッ・メーン」の発声があるか。

   などの、代表的なポイントを押さえて練習させる。

 

  ④道場が狭くて、対面形式では大きく動けない場合は、打込み棒方式で行わせる。

    1015分も練習すれば笛の合図だけで流れができるものである。

 

(4) 評価(テスト) (20分)

 ・全員を道場の片側に寄せ待機させる。

 ・二人ずつ、順次出てこさせ、交互に打たせて一人ずつ見ていくという方式になる。

 ・一人の動く時間は1520秒である。交代の時間を含め、二人一組で5060秒かかる

  として、全体で20組ほど行うならば、20分ぐらいで終了する。

 ・テストが早く終了した者は、防具をはずし、収納できるようにして手元に置かせる。

 

   A:評価の方法

 ・前述したポイントを押さえながら、次のような基準で評価した。

 5段階で評価する場合

10段階の場合

A

 

スピード・正確さ・発声など申し分なし

 

10

○○

B

 

正確に打ち、声も出ているが、スピード感・重厚感

に少し欠ける。いわゆる中の上といわれる範囲

B↑

B

 

大体の流れ、タイミングはつかんでいるが、

各ポイントのチェックで今一つ不十分と思われる

 

6    

 

B×

 

打ち込みに伸びがなかったり、正確性に欠けたり

流れを忘れて動きが止まったりする

B↓

  5

B×

  4

C

 

流れも悪く、発声もなく(小さく)、迫力もない

注意ポイントの意識がまったくできていない

 

3以下    

 

 

※A~Cなどの記号は技術レベルの差をつける場合に、他のスポーツ教材でも、技術評価

  を出すのに私がよく用いる記号方式である。初めから点数で評価しだすと、微妙な観点

  の狂いが生じるため(-----例えばある生徒に7点をつけて、次に同レベルの生徒が現れた

  場合に、それを7.2としたり、6.8としたりと、その場でさらに細かく分けたくなるため、

  そのことで全体を通して見方が甘くなっていったり、辛くなっていったりするため)、

  まずは、ほぼ同レベルの範疇内に収めていくために記号化して、最終的に点数化する時

  の参考のために、細かい部分は採点表の横にメモなどをしておく方式をとる。

 

 B:実施方法

   1.テスト実施者をコールし、構える位置を指示する。互いに礼をさせる。

  2、互いに中段に構える。打ち込む側、元立ち側を確認。

 3、笛の合図で打込ませる。一人目の評価をしたら、次の笛で反対側の者を打込ませる。

 4、互いに礼をして下がらせ、次のテスト実施者をコールする。

  ・全員終了したら防具を棚へ収納させる。

 

(5)整列・正座・礼をして終了する。

 

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第12限

 

・第1212限  ①小手に対する応じ技 そのⅠ(小手抜き面)②面の相打ち

 

・道場に入ってくれば胴・垂のみ装着。正座した右斜め前に面・甲手を置くよう指示する。

・全員の胴・垂の装着を確認。

(上記記述は次の時間以降全て同じなので、次限より省略するものとする。)

 

 (1)列、正座、礼。出欠点呼。竹刀点検。準備体操。素振り。810分)

 (2)面をつけずに小手打ち5分)

  ・甲手だけをはめさせ、第9限目の初めに行った小手打ちの復習をおこなう。

(3) 面をつけずに、相手の小手打ちに対して抜き面 10分)

  A段階 

   ①対面形式:互いに中段に構える。元立ち-----というより、ここでは相手の仕掛けてくる

   小手攻撃を抜いて面で反撃する方-----は剣先を左上方へつり上げ、自分の右甲手を空け

   る(相手に見せる)態勢をとる。あまり極端な剣先のつり上げをせず、中段のかまえか

   ら剣先を左へ10㎝ほどだけ動かし、右甲手にわずかにスキを見せる程度にする。

・実際の試合では(特に授業での試合形式では)自分からスキをみせて、そこを相手が打ってきたところを捌いて技を返すというのは、初期の段階ではナカナカ難しい。大体、どんどん自分から技を仕掛けていくことでポイントをとる形が多い。最終的には、互いに中断の構えから、そのまま小手をねらわせていく練習を行わせるが、ここでは僅かなスキをみせるところから入る。互いに中段の構えをとれば、一般的に竹刀の剣先は、自分からして(相手の竹刀の)右側にくる。左側に竹刀を置けば、自分の------というより互いの-----右甲手がすぐ打てる状況になる。

・ごく普通に中段に構えた相手に対する小手打ちは、「基本的に 

 はこちらの剣先が相手の剣先の上を通り越して、相手の右小手 

 を打つ」という説明がなされる。しかし剣道の専門家が小手打

 ちを教える際、「実戦的には、相手の剣の下をもぐらせて(く

ぐらせて)小手打ちを行え。」と指導する場面もある。そして確 

かに、下をもぐらせた方が速く入れる感覚があるし、また相手は 

小手に対する応じ技を出しにくい。

・何でもそうであるが(特に格技系、武道系に多いが、このあた

 りの実戦感覚・テクニックというものは、実際経験した者でな 

 いとわからないものであり、一般の指導 書には書かれていない

 ことで、しかしその分野ではごく当たり前に認識されている

ことについてどのように扱っていくべきなのか、考えさせられる

ことは多い。

 

  ②小手打ちに入る側は、まず笛の合図で相手の右小手打ちに入る。ここでは(2)で練習

   した「1歩だけで入る小手打ち」とする。双方とも面を付けていないので、打ったあと

   の反動で、剣先を相手の喉や胸に入り込ませないよう、打ったあとは剣先を左上方には

   ずすように持ってこさせる。 

    相手の小手打ちを抜く側は、同じ笛の合図で、左足から軽くスッと下がりながら、竹刀

   を頭上に軽く振りかぶる。

  ・ここでの抜きの動作は、あくまで竹刀を頭上へ軽く振りかぶる動作であること。時々

   頭上ではなく、顔の前に手を持ってくるだけのようにする(「拝む」様な動作をする)

   生徒がいるが、こういう抜き方では小手を打たれるケースが多い。

  ・小手抜き面を出す際、上達してくれば、後方への体のさばき(さがる動作)は徐々に

   消えていき、逆に前へ出ながら小手を抜くことができるが、はじめのうちは足の退き

   で間合いを切る動作を入れながら抜いていく方が分かりやすく、抜きの動作も入りやすい。

   ただし、このスッと後方へさがった時に、左足踵を床につけてはいけない。抜いた後の面

   にすぐ出られなくなってしまう。

  ・笛の合図で同時に動いているので、この段階で相手の小手打ちがあたるということはまず

   ない。笛の合図で一方は小手、一方は軽く1歩さがりながら竹刀を振りかぶることで相手

   の小手打ちは空を切るという練習になる。

  ・相手の小手打ちがどの辺りまで来たときに、自分の竹刀はどの辺りまで抜きの動作を行っ

   ているかを理解させるのに、互いに中段の構えから、小手を打つ側の竹刀の物打ち部を、

   まず相手の右甲手に乗せて、小手打ちが入った状況をつくらせる。その姿勢から、今度は

   抜く側が、中段の構えからゆっくりと頭上へ振りかぶる動作をしていくと、だいたい手元

   (手首)が顔面を通り越すあたりで、相手の竹刀が甲手から外れる位置がある。したがって、

   相手の小手打ちを抜く場合、少なくとも自分の額あたりまで手元を上げないと、抜けないと

   いうことである。

  ④この①②③------つまり笛の合図で小手に入ってくれば、竹刀をスッと振り上げながら軽く

   さがって抜くだけの動作を交代しながら数回繰り返す。

  B段階 

    ①相手の小手打ちに対して「抜き」の動作ができれば、後は振りかぶった竹刀を、そのまま

   面打ちにもっていくだけである。ここでは左足から1歩さがって相手の小手打ちを抜いた

   あと、右足を1歩だけ前に「トン」と踏んで、相手の面の位置へ軽く振り下ろして止める

   練習を行う。

  ②この場合も、笛の合図により、仕掛ける方は1歩だけ入った小手打ちを行ない、応じ技を

   出す方も、1歩だけ下がって抜いて、すぐ1歩前に出て面に出る(面で止める)ことを

   繰り返す。

  ③徐々に、 抜き~面に出る動作をすばやく行なわせる。

   動作を早めるためには、抜き面を出す側が、笛の合図で10㎝ほど下がって、竹刀を振り

   かぶって小手を抜いた瞬間には、同時に右膝を上げて(浮かせて)、次の面に出る用意が

   完了しておかねばならない。抜いた瞬間には右足を床から浮かしておくことが、次の面に

    出るための条件となる。リズムとして、相手が小手を打ってきた瞬間に、それを抜きなが

   ら左足でトンと床を踏みつつ右足を浮かせ、すぐに左足の前方への推進力を効かせて、

   右足を前に踏み込んで面に出る練習ということになる。

   これも、数回ずつ2セットほど行なえばよい。 

   C段階 

 

  ①B段階での互いに1歩ずつ入っての練習が概ねよしと判断できれば、抜き面で応じた側は、

   1歩で止まらず、「メーン」と打って、前方へ送り足で抜けていく動作を入れる。

  ②小手を打つ側は今までと同じく1歩入っての小手打ち。抜いて面に出る側は、前方への勢

   いをさらに増して、「メーン」と前へ出て、相手の左肩方向(自分からして右方向)に抜

   けて行き、互いに振り返って中段に構えなおす。

  ③この動作が笛の合図でほぼできてくれば、笛の合図をなくして、小手を打つ側の竹刀の始

   動で小手抜き面を行なわせる。ただしこの段階では双方とも面を付けていないので、スピ

   ードがのってくると、小手打ちの者の竹刀が胸に入ったり、抜き面が実際に頭に入ったり

   することも考えられるので、面を付けてからの練習として扱うほうがよいかもしれない。

   面を付けずに行なう練習はここまでとする。

 

(4)整列、正座、面付け(3~4分)

(5) 面をつけての相面打ち  (5分)

 ・剣道部が練習する場合、まず面を付ければ「切り返し」からはじまって、基本の「正面打ち」

  ~「小手打ち」----というのが一般的練習パターンである。授業でも、面を付ければ基本の

  「面打ち」からという流れでもよいのだが、時間的制約もあり、ここでは双方から同時に面

   に打って出る練習をさせる。面に対する応じ技としての「出ばな面」と押さえてもよい。

 

  ①対面形式で互いに中段に構える。笛の合図で、同時に面に打って出るよう指示する。

   笛の音に反応してどちらが先に面を打つことができるかの競い合いととらえてもよい。

   これまでは、相手が面を空けてくれたところへ打って出ていたので、面を正確に打つこと

   ができた。ここでは、相手も前方へ出てくるスピードがあり、自分も前方へ出て行くスピ

   ードがあり、間合いが詰まっていきながら面を打っていかねばならない。次のようなポイ

   ントを押さえてから練習させる。

 

   1:まず、基本の面打ちのように、竹刀を振りかぶる動作が大きいと遅れてしまう。

    中段の構えから、手首のコックだけを効かせてすかさず面にでること。手首の位置が頭

    上まできてしまうと、完全に振りかぶっていることになるので、中段の構えの手首の位

    置から、手首の振りだけをっ使って、前方へ伸びていくようにしてコンパクトに面を打つ。

    これを「刺し面」と表現している。もちろん、面を打った瞬間の姿勢は、振りかぶってか

    ら打つ基本の面打ちと同じく、肩の高さで右腕が水平にのびた姿勢ができあがっていない

    といけない。

    2:中段の構えから左足を動かさずに、すぐに前方へのけり蹴り動作としてはじめること。

     笛の合図と同時に、すぐ右足を床から浮かせて、左足で前方へ推進するといった方が

     よいかもしれない。中段の構えから、瞬時に床をける動作で始動しないと遅れてしまう。

   3:面を打った後は、互いに左肩がこすれ合うように抜けていく。(自分からして右方向へ

     抜けていく。)さて、ここで最も難しいことは両者が交叉するので、今までのように

     なかなか面に当てにくいということである。はじめの数回は、初心者はほとんど打つ

    (当てる)ことができないといってよい。竹刀どうしがあたったり、物打ち部で正確に

     打てない状況がある。「あたらんナー」と生徒は言い出す。しかし、繰り返すうちに

     徐々に当てられるようになってくる。間合い感覚、竹刀の出し方などに工夫をしだす。

     ここは指導者側も少し根気強く待って様子を見ていく必要がある。笛の合図もできる

     だけ間隔を置いて、互いにしっかり中段に構えるまで待って、一呼吸於いて「ピッ」

     と吹いてやる。面の有効打突位置についても確認し、打ちに出る竹刀の角度について

     も考えさせる。

  ②・スピードのあるものが完全に有利であることは間違いない。

   ・笛の合図でだいたい感覚がつかめてくれば、笛での合図始動をやめて、先に面に打っ

     て出る方を決めておき、相手が面に出てこようとする出鼻を、すかさず片方が面に出

     る練習に変えていく

   ・5本程度で先攻・後攻を交代させながら、2~3セット程度行なわせる。

   ・ここではフェイントをかけないこと。仕掛ける方はここと決めたら瞬時に面に出ること

    を心掛け、一方は相手の動作(竹刀の始動の瞬間)にすかさず面に伸びることを心掛け

    させる。

  ※専門家のなかには、「技に行き詰まれば、相面(相打ち)の練習を繰り返せ」という人が

   いる。それはテクニック部分よりも、集中力、相手の動きの観察、反応、瞬時の判断など

   の基本確認要素が含まれているからだと考える。

 

(6) 面を付けての 小手抜き面  (5~7分)

 ① この授業のはじめに面を付けないで行なった「小手抜き面」の実戦練習である。対面形

   式で、相手の小手打ちに対して抜き面を実際に打ち込む。

 ②まず笛の合図で、一方が小手を打ち、一方はそれに対して抜き面を打って前方へ抜けて行

  き、互いに振り返って中段に構える というパターンをポイントを確認しながら数回行な

  わせる。

 ③笛の合図での動きの出来ばえを確認してのち、次に笛の合図なしで、一方の小手打ちの始

  動で、抜き面に出る練習を数回ずつ行なわせる。

  ・ここで、抜き面で捌く側は、はじめの練習のように、自分の剣先を左斜め上に軽く上げ

   て小手にスキをみせ、そこを打ってきたところを抜き面でかえさせてもよいし、もうは

   じめから、(小手を見せることなく)中段の構えのままにしておき、相手が打ってきた  

   ところを抜かせてもよい。

  ・ただ、このスキを見せるというのは、練習ではできても、最終的な試合の中ではなかな

   か使いこなせるというわけにはいかない。特に中高生の剣道部員の練習は、大方がスピ

   ードを中心とした練習であり、仕掛け技中心の練習メニューであるため、授業の中で初

   心者が経験者に対して軽いスキをみせて、そこを打ってきたところを応じ返そうとする

   ことは、ほとんど不可能に近い。圧倒的スピードに対し技を出すどころの話ではない。

   ここでは、あくまで中段の構えを崩さず、動きの中で相手が小手を打ってきたところを

   抜き面で返す、という練習でよいと思われる。

 ④ 約束練習は特に仕掛ける側(小手を打つ側)が、惰性に流れる傾向があるので、心構え

   として、真剣に一本を取るつもりで、「コテッ」と入ることの注意を時々で促す必要が

   ある。

 

(7) 指導者の「呼びかけ」による 小手、面の攻撃に対する対応  (5分)

 ①時間の余裕があれば、次のような練習へ発展させる。

  対面形式で、一方が攻撃側、一方がそれに対する応じ技をだすというように決めておく。

 ②教師は、攻撃側の生徒に対し、教師が「メン」といえばすかさず相手の面を、「コテッ」

  といえばすかさず小手を打つように指示する。

 ③応じ技を出す側は、教師の「メン」の声を聞けば相面で応じ、「コテッ」の声を聞けば抜

  き面で応じることを指示する。

 ④5~6本ずつで交代させながら、教師側は「コテッ」か「メン」を発声して、技を出して

  いるかを確認していく。 全員がしっかり中段に構えなおしたのを見て、一呼吸置いて発

  声する。 生徒が結構真剣味をもって行なう練習である。

 

(8)整列、正座、防具の片付け、反省、礼をして終了する

 

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第13限

・第13限   ①面に対する応じ技 そのⅠ(面抜き胴)②引き技の防御 

 (1)整列、正座、礼。出欠点呼。竹刀の点検。準備運動、素振り(8~10分)

           (胴・垂はあらかじめ装着完了のこと)

 (2)面をつけずに(甲手だけはめて)引き技の復習3分)

   ①第9限で行なった、面を付けずに引き面・引き胴の練習を行なう。対面形式でつばぜり合い

    の態勢から、笛の合図で引き面・引き胴をそれぞれ5本ずつ行なう。(引き胴は逆胴になら

    ぬよう注意する。)

   ②打たせる側はつばぜり合いの態勢から(互いに右の拳と拳を合わせて、剣先を右斜め

   上に向けた状態)、笛の合図で、竹刀をそのまま頭上へスライドさせれば(右拳を額

   の前に持ってくる感じ)そのまま相手の面を受けることができ、また胴はそのまま打

   たせることができる。

    ・つばぜり合い、あるいは間合いの詰まった体勢から、相手が引き面を打ってきた場合

   は上記の要領で受けることができるが、受けた後はすぐに反撃することが原則である

   から、受けた瞬間の竹刀があまり横水平にならずに、拳の位置が顔の巾をはずれるこ

   となく、竹刀をできるだけ斜めに起こしたまま受けるのが望ましい。竹刀を横に寝か

   せて受ければ、それだけ竹刀の動きは大きくなり、時間もロスすることになる。

 

3) 甲手だけをはめて、相手の引き胴をうける練習  5分)

    ①次に、これまで自分の胴を打たせていたものを、相手の引き胴を竹刀で受ける練習に

   入る。はじめは、その場で、シャドウで、相手の引き胴を予想して竹刀を動かしてみる。

   一人でつばぜり合いの体勢をとらせ(胸元に竹刀をひきつけた状態、剣先は右斜め上)、

   その位置から右30°前の方向に、小手打ちと同じような要領で竹刀を振り下ろす。ピシッ

   と打ち下ろす感覚である。イメージとして、相手がつばぜり合いから引き胴を打ってきた

   ところを、自分の竹刀で打ち落としている感覚である。その場で数回程度やらせればよい

   【図23

 

【図23-①】              ⇒⇒⇒
【図23-①】              ⇒⇒⇒
⇒⇒⇒【図23ー②】
⇒⇒⇒【図23ー②】
【図24】
【図24】

 

    ②次に対面形式で、つばぜり合いの状態から、笛の合図で、一方は引き胴、一方は胴を打たせるこ

      となく、打ち落とすという気持ちで受ける練習に入る。引き胴を打つ側は、胴の位置を正確にね

      らっていくことが大切である。数回ずつ交代して行なわせる

   ・この練習の段階で、相手の引き胴に対して、どういうわけか時代劇のように、咄嗟の反応として

      竹刀を逆さに立てて受けようとするものがちょくちょくでてくる。【図24】小手返し面などの技

      でこれに似た動きがなされるが(もっとコンパクトな動きではあるが)、わざわざ手首を大きく

      返す動きで、動作が遅れるにもかかわらず、体全体がカバーできるために、このような動きがな

      されるものと思われる。このような動きが自然に出てくることが良いのか悪いのか良く分からな

      いが、ここでは、打ち落としによる胴の受け方を中心に学習をすすめる。

   ③時間の余裕があれば、面を付けずに、指導者の掛け声に合わせた次のような練習も面白い。

   ・つばぜり合いの体勢をとらせ、一方が攻撃側、一方が防御側と決めておく。

   ・攻撃側は指導者が「メーン」といえば直ちに引き面、「ドォー」といえば直ちに引き胴を打つ。

   ・防御側は指導者の声で、どう受けるかを判断して、竹刀を捌く。

   ・数本ずつで交代する。

 

※引き技のうち、引き小手はあえてここで扱っていない。手首の返しのさほど必要のない引き面、手首の返しをそのまま円運動につなげて打てる引き胴に比べて、間合いの 詰まった状態からの引き小手というのは少々難しい。その理由として、つばぜり合いの状態で、剣先が右上にあるところから相手の右小手を打つには、左方向への剣先の円運動から、即座にタテ方向に、しかもコンパクトに小手を打たねばならないこと。

   また、面、胴に比べて、目標が自分に近いため、後方へ離れる動作を強めにしていかないと、自分の手元(間合い)が詰まった状況になること、などが上げられる。ただ生徒の集団の状況や出来ばえをみて実施していくことはやぶさかではない

 

(4) 面を付けないで 面に対する応じ技 その1(抜き胴)  (57分)

 ①対面形式で互いに中段に構える。一方は竹刀を上段に構え、相手に胴を見せる。一方は笛の合図で

    、右45°方向に、右足を1歩だけ踏み込み、相手の右胴を打つ。打てばすぐに中段の構えにもどす。

    これを35回ほど繰り返す。交代して行なわせる。これまで行なってきた復習練習である。

 ②互いに中段に構える。笛の合図で、一方は正面素振りの要領で------ここは大きく振りかぶるように

    して-------1歩前に出ながら、相手の面をねらう。一方は①で行なった要領で、前に出てくる相手の

    胴を打つ。(こちらも1歩とする。)ただし、この胴打ちでは、相手が面を打つために前進してく

    るので、胴を打つ方はあまり深く踏み込まず、右足をどの角度に踏み出していけばよいのか等を研

    究させる。ここはあくまで、両方ともが1歩ずつ進んで、すぐに中段の構えにもどすようにする。

  数回繰り返させる

 ③次に、面に出る側は②と同じとし、抜き胴で捌く側は1歩で止まらず、打ち込んだ後送り足で右方

    向へ前進して行き、「ドォー」と発声して抜けていく。互いに振り返って中段の構えにもどす。

        45回繰り返す。

 ④最終段階として、互いに中段の構えから、笛の合図で、一方は面、一方は抜き胴で交わる練習となる。

    ここでの面打ちは徐々にスピードを上げさせ、できるだけ左足を寄せないで、すばやく前方へ跳ぶよ

    うに床を蹴らせる。刺し面の要領で、振りかぶりをなくした、手首を使った面打ちをさせる。抜き胴

    で捌く側は、徐々に相手のスピードが増して、間合いが早く縮まってくるので、あわてて同時に深く

    踏み込みすぎると、相手の前胴にしか当たらない。胴を打つ側は、軽く右前に踏む程度の意識で行な

    わせる。また笛の合図は少し余裕を持って、双方がしっかり構えてから行なうこと。まずは軽いタッ

    チで行なわせることで、リラックスもでき、姿勢も大きく崩れない。これも数回繰り返させる。 

 ⑤面ナシのまま、さらに笛の合図をなくして、相手が面に出ようと動く瞬間をとらえて抜き胴に入ると

    ころまで練習してもよいが、だんだん真剣になってきて、鋭い面を打つものも出てくるので、面ナシ

    練習はこの段階で終わることとする。

 

(5)整列、正座、面付け (34分) 

 

(6) 面を付けての 相面打ち  3分) 

 

 ・第12限(5)の練習と同じである。基本の面打ちとして、笛の合図で相面(両方から同時に面を

    打つ)を、十分間隔をおいて710本行なわせる。間隔をおいてというのは、笛で「ピッ」と合図

    をおくり、その合図で双方からすかさず面を打つわけであるが、互いに前方へ抜けて振り返り、中

    段に構えなおした後、23秒程度の間をおいて、これから前に出るぞという緊張感を与えてから、

    次の笛の合図に入ったほうがよいという意味である。ウォームアップとしての面打ちと考えてもよ

    いが、できれば笛の合図をなくして、先に面に出る側を決めておき、相手が面に出てこようとする

    瞬間をこちらの面でとらえる出鼻面の練習として、徐々にスピードアップをはかる。ただし、1

    の打ちが終われば、必ず二人とも中段の構えをしっかりとってから、気を充実させて次の打ちに入

    ることを確認しておかないと、惰性に流れる傾向があるので注意を要す。

 

(7) 面を付けての 面に対する抜き胴  57分) 

 ・先程の(4)の練習を、面を付けて、両者真剣勝負の気持ちで行なう練習である。

  1,互いに中段の構え。まずは笛の合図で、面対抜き胴を数本ずつ交代して行なう。両者面を付けて

    いるので、先に攻撃する側も遠慮することなく、笛の合図で思い切って面に出ること。応じる側は

    、ポイントを再確認しながら、あくまで軽いタッチで抜き胴へ捌く練習をする。

 2、次に笛の合図をなくし、攻撃側・防御側をあらかじめ設定して、面対抜き胴で数本ずつ交代して

   行なわせる。

  ・面に出る側はフェイントをかけないこと。ここぞと思う時に思い切って面に出ること。

  ・あくまで、真っ直ぐに前に出ること。約束練習であり、抜き胴で捌く側が面を打つものの左方向

   へ出てくるものだから、当てようとして、はじめから左方向へ竹刀を振るものがでてくる。仕掛

   ける側はあくまで一本をとるつもりで真っ直ぐに先に出ていくことを頭においておかせる。

  ・捌く側は、面に出てくる側のスピードが速くなってくるため、だんだん肩に力が入り、つられて

   自分も前ばかり出て行くものや、頭を下げて、お辞儀をするように入るものがでてくる。相手の

   スピードが増してきても、まず右斜め前に1歩出ることで、相手の面の軌道さえ外せば、自分に

   はあたらぬことと、はじめは軽いタッチで胴に正確にあてることを意識させておく。

  ・相手を2名ほど変えて、数本ずつ行なわせる

 

(8) 面を付けての 引き技の防御練習  57分)

 ①本時のはじめに、面を付けずに行なった引き技の攻撃及び防御練習を、思い切って行なう練習であ

  る。つばぜり合いの状態をセットし、笛の合図で、攻撃側は引き面か引き胴のどちらかを選択して

   打つ。防御側は、相手の動きに反応して、竹刀で面あるいは胴打ちを受け流す。これはなかなかど

  ちらを打ってくるか、判断の難しいところであり、相手の動きをどう予測するかの練習でもある。

  本来なら、受ければすぐ技を返すのが原則であるが、ここではとりあえず受けて、相手の攻撃をか

  わすのみとする。(引き技に対する追いかけ攻撃は第15限で取り扱う。)受けの基本ポイントを再

  確認して本ずつで交代させる。

 ②笛の合図をなくし、攻撃側のタイミングで引き技を1本瞬間的に出させる。防御側は引き面か引き

  胴を受けるのみとする。数本ずつで交代させる

 

 ※ 現在の剣道の試合でよくある、引き技を出すタイミングをはかる長い時間のつばぜり合いという

   ものは、武士時代の戦いにおいてはなかったのではないかと予想する。実際、互いに真剣でつば

   ぜり合いをしていると想像したとき、それは相手の刃が自分の顔面の直前にあるわけで、それは

   相当な緊張感である。現在の剣道の場合、つばぜり合いの状態から、自分の刀を相手の肩・首な

   どへ押し付けるなどの行為は禁止であるが、昔なら、自分の刀を相手の首へスッと押し当てれば

   勝負はそれで終了となる。つばぜり合いの状態で、手元を下げる、上げる、押さえる、横へいな

   す、かわす、などの動作を行ないながら、引き技を出すチャンスをうかがうが、反対に相手側は

   自分の引くのを待って飛び込むチャンスをうかがうというのが現在の姿である。つばぜり合い時

   には、できるだけ自分から先にひかぬように指示している指導者を多く見る。自分が引くより、

   相手が引いた瞬間を追い込めというわけである。

   授業では、つばぜり合いの状態から、相手の手元をグッと押し下げ、その反動で相手の手元が上

   がってくる(あるいは上げてくる)タイミングをとらえて、すかさず引き胴を打つか、反対に、

   相手の手元をグッと押し上げ、その反動で相手の手元が下がってくる(あるいはそれに抗して下

   げてこようとする)タイミングをとらえて、すかさず引き面を打つ、といったタイミングを取る

   練習を取り入れるとよいと思う。

 

 

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第14限

 

・第14限  ①小手に対する応じ技 そのⅡ(小手打落し面) ②呼掛け練習 

 

(1)整列、正座、礼。出欠点呼。竹刀の点検。準備運動、素振り(8~10分)

    (胴・垂はあらかじめ装着完了のこと)

 (2)面をつけずに(甲手だけはめて)復習練習(5~7分)

 ・対面形式-----組み合う相手がいつも同じにならぬよう配慮すること。

  ①面抜き胴の復習

  1.互いに中段の構え。笛の合図で一方は竹刀を吊上げて胴をみせる。一方は右前へ1歩だけ踏み

    込んで の胴打ち。バシッとあてたら、互いにすぐ中段の構えに戻る。笛の合図で数本ずつで

    交代する。

  2.互いに中段の構えから、笛の合図で、軽いタッチで、一方が面に出てきたところを、一方は抜

    き胴で返す。互いに数歩前進して振り返り、中段の構えをとる。数本ずつで交代。

  ・これまで行ってきた技の復習をあくまで軽いタッチで行い、ポイントを確認する。

   小手抜き面の復習

  ・第12限の練習を短絡して復習する。

  1.互いに中段の構え。笛の合図で一方は小手を空ける。一方は1歩踏み込んでの小手打ち。鋭い小

    手打ちを目指す。打った後、剣先を相手の体の中心につけると相手の喉へ入る危険性もあるので

    、左上に軽く剣先をはずすこと。数本程度で交代。

  2.一方は小手打ち、一方は軽く下がりながら竹刀を振りかぶって小手を抜き、すぐ1歩前に出て、

    相手の面に振り下ろすところまで。これも笛の合図で数本で交代。できるものは、相手の小手

    に対して、後ろへ下がらず、反対に前に出ながら抜くことを意識させてみる。

  3.両者とも1歩で止まらず、互いに前方へ抜けて行き、振り返って中段の構えにもどす。抜けてい

    く方向は、自分からして右前方向へ。両者とも面を付けていないので、笛の合図で軽いタッチ

    で行ない、数本ずつで交代する。

 

(3) 面を付けずに 小手に対する応じ技 そのⅡ 小手打落し面  (7分)

 ・本時のメイン練習の第1段階である。

 ・この技は、相手が自分に小手打ちを仕掛けてきたと同時に、こちらも同時に小手を打つ

  つもりで入り、相手の小手打ちを打ち消した後、すかさず面に攻撃して有効打をねらう、

  打落し技の典型である。

 ・実際に武士が両方から真剣で小手を打ち合えば、どちらも致命的になるので、本来は相

  手の鍔元を打落すといった奥の深い技ということだが、現在剣道でこの技を指導する場

  合は、だいたい同時に小手を打つように入り、相手の小手打ちを打ち消すという考え方

  で指導されているようである。

 

  ①互いに中段の構えから、本時の(2)の の1------1歩では入る小手打ちの練習をもう一度行

  なう。3~4本でよい。

※慣れてくると、互いの中段の構えの距離が徐々に近づいてくる 

 傾向(あるいは、構えで剣先が上へ向いてくる傾向)がでてくるので、双方の距離はどちらかというと遠い間合いで、剣先は水平よりわずかに上向き程度の意識で構えさせる。

この間合いについては、自由稽古(地稽古)に入ると、攻める意識がはたらきさらに近間になってくる。特に、基本の約束応じ技練習の場合は、できるだ遠間からさせないと、捌く側も手元が詰まるので、指導者もたびたび注意していかねばならない。

 

② 次に互いに中段の構えから、笛の合図で同時に小手に出る練習を行なう。

 ・遠間の中段の構えから、笛の合図で同時に1歩だけ踏み込み、小手打ちに出る。

 ・ただし両方から前に出て行くので、勢いよく前に出ると間合いが詰まりすぎ、竹刀が喉元へ入っ

  てきてしまうので、意識としては半歩ぐらいの気持ちで前に出て、同時に小手打ちを行なう。さ

  らに、小手を打った後、反動で剣先を左斜め上に上げて中心を外し、相手の胸元へ入り込まぬよ

  う意識して竹刀を捌くこと。

 ・笛の合図で数本程度行なう。

 ③ 次に、これも笛の合図で、一方は小手打ち1本、一方は同時に小手を打ったら、その反動ですぐ

     に面に出る練習を行なう。

   ・この時、小手打ちだけの方は、踏み込みは1歩だけ、小手・面に出る方は、右足だけをほぼその 

    場でトン・トンと2回踏んで、手首のコックを効かせて打つ練習を行なう。

  (第5限(7)の練習ポイントと同じ)

 ・笛の合図で、これも数本程度で交代して行なう。

④ 次にこれも笛の合図で行なうが、両者とも軽いタッチで、小手対小手・面を打った後、それぞれ

  右方向へ踏み込んで抜けて行き、3~4歩前進して振り返り、位置を入れ替わって中段に構える。

   ・この位置の入れ替わりは少々難しい。なぜなら小手・面に出る側がどうしても直線的に進んでくる

   こと。また、小手打ちだけの側は、目標が左方向(相手の右小手)にありながら、打ち込んだ後

   は右方向へ動かねばならないからである。

 ・互いに自分の左側方向へ抜けさせてもよいが(右肩が触れ合うように)、それでは小手・面にで

  る側の面へのキメが非常にやりにくい。なぜなら、踏み込む右足(前足)が左方向へ動きながら、  

  目標の面が右方向にくるためである。後の応じ技の発展を考慮すると、基本的にはすべて自分の

  右方向へ抜けていくことで確認させておく方がよい。 

 ・小手打ちの側が、右へ抜けることばかり気にして、頭を下げるようにして小手を打たないこと。

  姿勢を崩さぬことを注意して、数本ずつ交代して打たせる。 

 ・双方とも面を付けてないので、この段階では、あくまで軽いタッチで行なわせる。

 

(4)整列、正座、面付け (3~4分)

(5)面を付けての 相面打ち (3分)

 ・第12限(5)、第13限(6)に同じ。笛の合図で相面打ち。数本ずつで交代

 ・次に笛の合図をなくし、一方の面への始動で、一方がその出鼻面をとらえる練習として、数本ずつ

   行なう。基本ポイントを再確認しながら、相手を変えて2人ほど行なう。

 

(6) 面を付けての 小手に対する応じ技:小手打ち落とし面  (7分)

 ・先程の(3)の練習を、面を付けて思い切って行なう練習である。

 

  ①まずは、笛の合図により、一方は小手、一方はその小手に合わせて小手・面で踏み込み、前方へ抜

  けて行き、振り返って中段に構えるところまで。両者とも面を付けているので、思い切って行なわ

  せる。4~6本で攻守交代させる。

  次に笛の合図をなくし、一方の小手の始動で、反対側が打落し面に出る練習。

 ・間合いが近くなってくるので、1回の攻撃・捌きが終わるごとに、しっかり中段に構えて間合いを

  遠間にとることを確認させる。

 ・先に小手に打って出る側は、真剣に1本とるつもりででること。中段に構えてから、すぐに打って

  出ずに、前後左右のフットワークを使って間合いを調整したり、、相手の竹刀の先をチョンチョン

  とはたいたりして揺さぶったりして、自分の小手打ちがあくまで先に決めるつもりで、実戦モード

  で入らせる。

 ・数本ずつ、相手を2~3人変えて実施する。

 

(7) 「呼びかけ」による応じ技練習  (5~7分)

 ・これまでの授業での習得技として、相手の小手打ちに対しては、「小手抜き面」と「小手打落し面

  、相手の面打ちに対しては、「出鼻面」と「面抜き胴」の2つずつを取り扱った。

 ・第12限(7)で行なった指導者の呼びかけによる、小手、面への対応練習を、今回は自分で技を選択

  しながら応じ返していく練習である。

 

 ①対面形式。攻撃側と応じる側を決めておく。攻撃側は教師が「メン」といえばすかさず相手の面を

  打ち、「コテッ」といえばすかさず相手の右小手を打つこと。教師の声に反応して、瞬時に攻撃す

  ることを確認する。

  防御側は教師の「メン」の声で、出鼻面か抜き胴で応じ、「コテッ」の声で、小手抜き面か打落し

  面に応じるよう、技を選択してすかさず反応することを確認する。

  1回の攻防で、立ち位置が入れ代わるよう、前への踏み込み、抜けていく方向、抜け切ったら振り

  返ってすぐ中段に構えるよう確認する。

  56本で交代させながら、教師ははじめの「コテッ」「メン」の発声後、正確に技がでているか確

  認していく。

 ・何の技をだすのか、あらかじめ頭にイメージしておくよう注意しておく。

 ・全員が中段に構えなおすのを見て、一呼吸おいて発声する。

 ⑤時間の余裕があれば、教師が発声するのをやめて、先に打ち込む側の生徒に、打ち込む前に「コテッ」  

  「メン」の発声をさせてからその部位を打ち込むように、選択させて打たせていくのもよい。

  ただし、道場に多人数入っている場合は声が聞き取りにくい難点もあり、また生徒にとっては先に

  発声してから、次に打ち込むという時間差は少々やりにくいようである。正確な応じ技が出せるよ

  うになってきた段階でこういう練習も考えてみればよい。

 

 (8)整列、正座、防具片付け、反省、礼をして終了する

 

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第15限

 

・第15限   ①面に対する応じ技 そのⅡ(面抜き面)②引き技への対応 

 

※初心者始動で基本の打ち込みをある程度練習したあと、次の応じ技に入る段階で、どの技から、系統性をもって段階的にすすめていけばよいかを考える時、なぜか「小手すり上げ面」から入るケースをよくみる。しかし、いわゆる自由稽古や試合に入った段階でみていると、この「すりあげ技」がでてくる頻度は極めて少ない。 特に、剣道部員や運動能力の高い生徒で、小手や面に跳び込むスピードの速いものに対して、初心者がその竹刀をすり上げて捌くというのはなかなか難しい。 その点、抜き技、打落し技(小手打落し面)については、自分の竹刀で相手の竹刀をさばく動作がないため、比較的遅れても技として出しやすいと感じる。したがって系統段階としては、抜き技→打落し技へとすすみ、その後すりあげ技→返し技とすすめる流れがよいと考える。 自由稽古(地稽古)ができる初期段階の技として、最後に「面抜き面」を取り上げて練習し、いよいよ次の時間より、剣道の醍醐味である自由な攻防練習へと入っていく。

 

(1)整列、正座、礼。出欠点呼。竹刀の点検。準備運動、素振り(8~10分)

   (胴・垂はあらかじめ装着完了のこと)

(2)面を付けずに(甲手だけはめて)応じ技の復習(5~7分)

 ①「小手抜き面」の復習 (5~6本で交代)

 ②「小手打落し面」の復習

 ・笛の合図で、同時に小手に出る練習(踏み込みは1歩だけ)(4~5本)

 ・打った後、剣先を喉元へつけないように注意する。(前時(3)の②)

 ・笛の合図で一方は小手、一方は小手・面に出る練習(前方へ抜けていかず、その場での踏み込み

  のみで。)(4~5本) 

 ・打った後、前方へ抜けて行き、位置を変わるところまで(4~5本)(前時(3)の④)

 ③「面抜き胴」の復習(5~6本で交代)

 

(3) 面を付けずに 面に対する応じ技 そのⅡ:面抜き面  (6~7分) 

 ・初期段階での応じ技練習として取り上げる最後の技である。この技は、いわゆる「出鼻面」とは微

  妙なタイミングの違いがある。現在のように、前に前に出ようとするスピード主体の剣道ではあま

  り練習されないかもしれないが、体育の授業として、相手の出てくるタイミングや、かわす体捌き

  を覚えるには、結構適しているのではないかと思う。

  ①面を付けずに互いに中段の構えをとる。少々遠間に構えさせる。笛の合図で一方は軽いタッチで面

  に真っ直ぐ出る。一方は、中段に構えたまま、笛の合図と同時に、右斜め前30°ぐらいの方向に右

  足を踏み出し、足捌きで相手の面をかわす。その時踏み出した右足にすぐ左足を寄せてくること。

  さらに、体を正面に向けたままではなく、中段の構えのまま、常に剣先を相手に付けておくつもり

  で体を捌く。つまり例えば、胴打ちで右前に踏み込んだ時は、右足つま先は真っ直ぐ正面を向いて

  いるが、この場合は、右前に運足する際に、つま先は左斜め前方向を向いていることになる。言い

  方を変えれば、自分の剣先を中心に、時計と反対廻りに1/8の円を描くつもりで動くということで

  ある。1本ずつ2人の位置を入れ代わらせ、4~5本で交代させる。

  同様に、一方は笛の合図で軽いタッチで面に真っ直ぐ出る。一方は先程の足捌きをしながら、面打

  ちの腕の動作を加える。1歩前進・1歩後退しながらの素振りができておれば難しい動作ではない。

  ここでは多少サイドステップ気味な動きといえよう。笛の合図で、相手が軽く前に出てくるので、

  同時にこちら側も竹刀を振りかぶり、相手の面が届く瞬間に、右斜め前に移動しながら、右足の右

  斜め前踏み出しと竹刀の打ち下ろしが同時になるように動作を合わせる。相手側はこちらの体捌き

  で面をぬかれて空を打つということになるわけである。数本ずつ交代して行なわせる。

 ③次の段階として、笛の合図をなくし、はじめに面に出てくるものの始動を合図として、面抜き面を

  出していく練習へ進める。

 ・はじめに先に面に出るものも、徐々にスピードをアップし、刺し面のように打って出る。相手のス

  ピードに合わせて、応じる側も思い切って前に出てしまうと、相面のタイミングとなるので、相手

  の面がとどくギリギリのところで、右斜め前に体移動させながら、それをかわして抜き面を出すよ

  う意識する。なお、この時、面を打った後の足捌きは、右斜め前の1歩で止まらず、前に出るという

  よりはサイドステップをするような要領で回り込んでいく足捌きがわかりやすい。

 ・これまでの応じ技に関しては、どれも相手が直線的に出てくるのに合わせて、自分も直線的に前に

  出て行きながら捌くというものであったが、ここでは、相手の直線的な動きに対し、円を描きなが

  ら回り込んで打つ、といった感覚の方がわかりやすい。専門的には、「とにかく前に出よ」といわ

  れそうだが、初心者の感覚としては、相手のスピードに合わせた円運動の動きととらえる方がわか

  りやすい。練習する相手の面へのスピードが遅ければ、応じる側は鋭角的に前に出ながら面を抜け

  るであろうし、相手のスピードが速ければ、極端に言えば、真横に動きながらしか(あるいは多少

  右後方へ下がりながらしか)打てないかもしれない。そのあたりは、できるだけ前方へ向かうこと

  は意識させても、形の上では、円の軌跡で動く中で、応じる側も徐々にスピードアップさせていく

  という認識でよいと考える。

 

(4)整列、正座、面付け (3~4分)

(5)面を付けての 相面打ち (2分)

 ・面を付けての練習では、相手をできるだけ変えておこなうローテーション方式をとる。

 ・笛の合図で相面打ち、数本ずつ。

 ・笛の合図をなくし、一方の面への始動で、反対側が出鼻面をとらえる練習として、数本ずつ行なう。

(6) 面を付けての 引き技・引き技の防御・引き技に対する追っかけ  (5分)

 ・引き技の復習練習に加えて、発展的に相手を追いかけて技を出す練習を加える。

 

 ①互いにつばぜり合いの体勢。笛の合図で一方が引き面、引き胴をそれぞれ3本ずつ出させる。

  元立ちになる側は、面と胴を正確に打たせるようにして、決して竹刀で受けにいかないこと。

 ②同じく、笛の合図で、一方は引き面、引き胴をそれぞれ3本ずつ出させる。元立ち側は、今度は打

  たせることなく、自分の竹刀で受けかわす。 引き面に対しては、できるだけ竹刀を寝かせる

  (水平にする)ことなく、ほぼ立てるような状態で受ける。左拳と右拳が水平になってしまうと、

  竹刀は完全に横になり、次の打突がおくれてしまう。引き胴に対しては、相手の竹刀を自分の右前

  で打落すつもりで、竹刀を操作すること。第13限で行なったポイントを再確認して捌かせる。

  互いにつばぜり合いの状態。同じく笛の合図で一方が引き胴を出したのを、応じる側は打落すよう

  に受けた(叩いた)後、直ちに「メーン」と発声して、飛び込むように面に出る練習を行なう。

  相手が笛の合図で引き胴を出した瞬間、その胴を受けて瞬時に飛び込み面にでるわけである。 

  要領としては、小手・面の二段連続攻撃の竹刀捌きと同様である。

 ・ただし、剣道部員などで、引き技の速いものとペアを組んだものは、引き胴を受けている間に間合

  いを切られ、次に出す飛び込み面がまったくあたらない生徒も出てくるので、そのような場合は、

  引き胴を受けずに、胴を打たせながらもすぐに面に出る方法をとらせてもよい。

 ・試合で引き技を使う場合は、技を出した後、十分に間合いを切る動作がないとナカナカ一本と認め

  てくれない。その意味で、相手の引き胴が少々あたっていても、すぐ間合いを縮めて、追いかけて

  次の技を出すことで、あてられたそのハンディをカバーすることは可能である。

 ・この練習は、相手の引き退がったところを追いかけていくので、両者が同じ方向へ流れていくため、

  普段の対面形式の応じ技練習よりも、長めの移動距離が必要になる。道場が狭い場合は、つばぜり

  合いの体勢で片側方向へ寄せて、安全な距離を確保してから練習に入らねばならない。

  笛の合図により、大体できていると判断できれば、笛の合図をなくし、引き胴を打つ側の始動で数

  回ずつ行なわせる。約束練習ではあるが、引き胴を打つ側も思い切って行ない、前に出る方も思い

  切って出るぞという意識をもつこと。この意識がないと、出遅れるし、タイミングよく前方に伸び

  のある面まで打つことができない。

  時間の余裕があれば、つばぜり合いから、相手の引き面に対する受けからの反撃練習を行なう。

 ・この練習も、引き技のスピードが速いものと組んだ場合、相手の面を受けている間に間合いを切ら

  れてしまうので、相手が引き下がって面を打つのと同時に、相手の引き面が当たろうが当たるまい

  が、かまわず前に出て、飛び込んで面を打つ練習を最初に行う方がよい。つまり、笛の合図がピッ

  と鳴れば、一方は引き面、一方は追いかけて面という練習である。

 ・ある程度、前に出るタイミングに余裕が出てくれば、引き面を受けかわしながら前にでる、という

  練習に変化させる。

 ・相手の引き面に対する応じ技であるが、引き面というのは基本的に第9限(5)で述べたように、

  面を打った後、残心の姿勢をみせるということで、打った反動でそのまま剣先を上方へつり上げ、

  上段の構えのように竹刀を上げることを要求される。剣を上げたまま、間合いを開く(切る)よう

  にいわれる。したがって、追いかけていく側からすれば、相手は上段に構えているので、胴が完全

  に見えている形になる。しかしながら、引き下がっていく相手に対して胴打ちを放つのは、飛び込

  む能力がかなり高くないと大変難しい。 また引き面を打って竹刀を上方へ上げている相手は、左

  小手が前に来ている。(いわゆる上段の構えと同じになっている。)上段の構えに対する前小手

  (左小手)への攻撃は有効であるから、追いかけながらそこを狙うこともできる。

 ・相手の引き技に対して、追いかけながら仕掛ける技は試合でも結構有効打となる場合が多いが、

  基本的には追いかけて面にでる練習を組むのが最も判りやすい。

 

(7) 面を付けての 応じ技練習  1215分)

 

 ①  抜き胴 (2分)

 ・ これまでの復習練習でもあるので、ポイントのみ注意して思い切って技を出させる。はじめは笛

   の合図で開始してもよいし、もうこの段階では合図をなくして、面に出る側の始動で、数本ずつ

   交代で行なわせてよい。

 ②  面 抜き面   5分)

 ・ 本時のメイン練習である(3)の練習を思い切って行なう。

 1.はじめは笛の合図で(3)の③の練習を復習する。1回ごとに立位置を入れ代わって行ない、徐々

   にスピードアップをはかる。

 2.抜き面側が、サイドステップ気味に足を運ぶので、隣りのペアの面に出てくるものと接触しない

   よう配慮しておく必要がある。数本ずつ交代して行なわせる。

 3.最終的には笛の合図をなくし、面に出る側の始動で行なわせる。どちらも真剣に一本をとるつも

   りで仕掛け、かつ応ずるように心掛けさせる。 23人ペアを変え、各45本ずつ行なわせる。

 ③ 小手に対する応じ技 (5分)

 ・ 小手抜き面、小手打落し面について復習練習として、第14限(6)と同要領にて行なう。

(8) 呼びかけによる応じ技練習  5分)

 ・時間の余裕があれば、第14限(7)の練習と同じパターンで、本時に行なった「面抜き面」も選択

  肢に加えて行なう。

 ・発展的展開としては、この呼びかけを、それぞれのペアで、先に攻撃する側の生徒が発声して行な

  わせるのもよい。 つまり、先に仕掛ける側が「メン」と発声した後すかさず面に打って出るとい

  う方式である。教師が発声する場合は、道場全域に聞こえるよう、かなり大声を繰り返してだすの

  で、大変疲れる授業になるのであるが、生徒同士に発声させればそのようなことがないかわりに、

  今度は声が小さすぎて聞こえない場面も出てくる。しかしこの練習は生徒は結構楽しんで行なう練

  習である。

 

(9)整列、正座、防具片付け、反省、礼をして終了する。