ラグビ― 授業計画


 

ラグビーの授業:授業計画を組むにあたり

 

★集団チームスポーツは、その中での個々の選手の役割分担が明確にされている。野球、ソフトボール、

  サッカー、バレーボール、バスケットボール、ハンドボール----全てに於いてである。野球は別として、

  授業に於いては、その役割が明確でなくても、そしてルールが割りと曖昧であって そこに審判が居な

  くても、生徒はゲームを楽しむことができる。サッカーではフォワード、ディフェンダーを別に決めな

  くても、バレーボールではセッター、アタッカーを別に決めなくても、バスケットは何も決めなくても

    ---------

★ゲームを繰り返していけば、個人の技術レベルがわかってきて、チームの「なんとなく得点パターン」

  ができてくるが、ただ ゲームのレベルを上げようとするなら、そこに教師の考え方、その授業で中心

  に据える理念・コンセプトというものを伝えて練習に取り入れ、意識レベルを上げていく必要がある。 ゲームを分析しながら、弱点を認識させ、それを克服する練習を取り入れながら------- 

  しかし、授業時間は部活動の時間のようにたっぷりは無く、雨天などの外部条件も加わることで授業

  は圧迫される。ラグビー初心者を対象として、10時間程度では、ラグビーの面白さを体感するには少な

  過ぎるし、また1つの種目に20時間以上を費やせるカリキュラムを持っているところも少なかろうと思

  う。しかし15時間程度は欲しいところである。その中で、ただ単に「楽しかった」「いい汗かいた」で

  終わる授業 ⇒ 以上の充実感と感動を持って授業を終わらせるのは、部活動のそれ以上には 当たり

  前に困難なことである。 授業へのエネルギー 部活動へのエネルギーという構図は、体育教員とし

  ては一般的なものともなってくる。

  たかが15時間程度の授業に於いては、まずは体を動かせる授業、ヤンチャな生徒の多いところは整然

  と動かせる 躾を中心に据えた授業 ということになる。

 役割やポジションを決めても、結局上手い者が中心になるだけ------15時間の授業で、技術レベルなど、

  そう変化するものではないし-----といった諦めにも似た感情を潜在させたまま 評価の作業へ-------

 

★小学生の体育授業では フラッグフットボール(タッチフットボール:アメリカンフットボールの簡易

   版)がよく取り上げられている。攻守を交代しながら、ハドルを組み、作戦を立てて攻撃を展開してい

   く。作戦通りに実際の攻撃パターンが通用していくかの面白味、醍醐味がこのスポーツにはあるが、こ

   こでは自分の役割を分担させてゲームを展開させないと失敗に終わる。この授業では、チームレベルを

   上げる為の勝つための作戦の話合い(動きの確認作業)を必ず取り入れなければならないので、一つ一つ

   の反省から 次のステップへの教師側の指導・アドバイスも必ず必要になってくる。チームとしての

   頭脳を使ってのプレーが繰り返し要求される為、ただ「体を動かしてよかった」式の授業としては成

   立しない。教師側の教材研究の深度が試される教材でもあるし、考える体育授業としては、中・高生

   にとっても打ってつけの教材である。

 

★さて、ラグビー指導の方法には、例えば グランドを小さな区画(グリッド)で分割して、その中で少人

  数からゲームを始め、徐々に人数を増やしながら グリッドも徐々に広げていくなかで、スクラム、

  ラインアウトなどの場面学習を盛り込んでいく方法がよく紹介されている。これは「ゲームの面白味を

  味わう」ことを中心に置いた授業といえる。

 

★今回ここで紹介する授業計画は、ゲームを成立させるのに、自分はチームの中でどのように動くのかを

  理解しながらすすめるものである。ラグビーはボール1個を与えて「はい!ゲームをやりましょう!」

  という訳にはいかないし、ルールやポジションをよく理解していないと右往左往するだけで、意図する

  2次攻撃・3次攻撃に自分が参加できない。ボディコンタクトのある激しいスポーツではあるが、ルー

  ルを理解し、活用することで、体育の授業でも十分安全に、かつ面白く実施できるスポーツである。

   フラッグフットのように、プレー中断毎のミーティングができないので、ゲームのこの場面で、自分

  のポジションの役割として、どこへ動くのかを 初めの段階で理解しておかねばならない。ただ やた

  らに動くだけではゲームが成立しえないスポーツであり、よく言われる「one for all, all for one」の精

  神をもって、チーム全体がどう動いているかの 流れを把握しながら、自分の役割を果たしていかねば

  ならない。

 

★その役割を理解するために、ここではゲーム展開を1つのパターンとして体に覚えさせたうえで(シャ

  ドウボクシングならぬ、パターンのシャドウラグビー)、実際のゲームへ応用させていくというもので

  ある。 というような偉そうな言い回しをしたが、ラグビー専門の練習では よく行われているものを、

  授業用に活用させてもらっただけであるが、参考にして頂ければと思う。

 

★ 尚15時間を越えて時間数が設定されておれば、諸々の攻撃パターン(サイドアタック・サインプレー

  のパターン、さらにはルールを追加して、より本物のラグビーに近づけて行く為の追加プログラム)を組

  み込んでいけばよいと考える。

 


★★★ ラグビー 授業計画 ★★★
時   限 内        容
第1限目 ・オリエンテーション(ラグビーとは、基本的なルール、授業の進め方など)
・ランニング~パス 練習
第2限目 ・ランニング~パス の復習
・ワインディング練習~モール練習(モールとは何か、オフサイドルールとは何か)
第3限目 ・1,2限の復習
・モール形成~バックスラインを形成し ランニングパス
       ~再びモール形成~バックスラインを形成しランニングパス (2次攻撃)
第4限目 ・3限目の復習
・タックルの練習(静止状態から~スローで動きながら~スピードを増して)
第5限目 ・4限目の復習
・スクラムの練習
 (ポジションの役割、スクラムの組み方、ボールイン~フッキングまで)
第6限目 ・チーム作り(ポジション決め=2パターンのチームポジション)
・実戦のモール形成~ バックスへパス ~2回目のモール形成 ~バックスへのパス
・実戦のスクラム ~バックスへパス ~モール形成 ~バックスへのパス
第7限目 ・6限目の復習
・ラインアウトの練習(ラインアウトとは何か、ルール、ポジショニング、
               ラインアウト~ モールへ、タップ、ピールオフなど)
第8限目 ・軽いキック練習 ~パントキックを上げて 自らキャッチする練習
・攻撃パターンのシャドウ(相手なしのパターン)練習
    (場面を理解し、適切なポジションから次の攻撃へ展開する 敵なし練習)
第9限目 ・8限目の復習
・ハンドリングのみ(キックなし)の実戦ゲーム①
第10限目 ・8限目の復習
  (各チーム、2パターンのポジションでも動きができるように)
・ハンドリングのみ(キックなし)の実戦ゲーム②
第11限目 ・攻撃パターンのシャドウ(相手なしのパターン)練習
・22mライン後方からのキックをよしとしての実戦ゲーム
第12限目 ・動きの評価(テスト)
  *攻撃パターン(コンビネーション)の理解とスピードをみる
  *予期せぬ事態への即座の対応~立て直しができるかをみる
第13限目 ・22mライン後方からのキックをよしとしての実戦ゲームヲ基本として
第14限目   *生徒のゲーム校正能力に応じたルール変更
第15限目   *キック範囲の拡大、フォワードのサインプレー、バックスのサインプレー
    *(雨天予備日)(反省ミーティング)など