ラグビー授業:第1限~第4限


第1限目

 

第1限

・オリエンテーション

    (ラグビーとは、基本の ルール、授業計画)

・ランニングパス練習

 

・何人の生徒がこの授業にいるのか? 授業時間は何時間設定されているのか? 他の種目,講座と

 の関係でグランドはどの程度の広さを使えるのか? ボールの数は何個あるのか? ゴールポスト

 はあるのか? ラグビー部員、経験者はいるのか? などの条件により授業の進め方は変化すると

 思う。

・最近は指導要領をこなしていく都合上、学校により 45分授業、55分授業、70分授業など 色んな

 パターンが出現してきたが、一般的な50分授業として組み立てる。

1)集合、点呼-------------5分)

2)オリエンテーション7分)

 A:ラグビーとは-------

 ・授業の初めに、ラグビーという競技の特性について、簡潔に話を行う。

  ただ歴史から、ルールから細かく話し出すとキリがないので、雨天時等を利用して話せる材料、問

  題などは ある程度用意しておいて、ここでは以下の内容について簡単に触れるだけとする。

 ①球技としては最大人数(1チーム=15名)で行われている。授業ではレベルに応じた人数を編成する。

 ②ボディコンタクトの激しいスポーツではあるが、体格に合ったポジション、プレーがあり、ルールを

  改編し、活用することで、安全にかつ面白さを体験できる。

 ③1823年、イギリスのパブリックスクールで行われていたサッカーの試合で、サッカーボールを手に持

  って走りだした少年(エリス少年)がいて、そこからラグビーが誕生したという逸話がある。そのス

  クールの名がラグビー(Rugby)高等学校であり、そこからラグビーと名付けられた。(本校でも新

  しいスポーツを創り出し、○○○と名付けよう!)

 ④「All for one,One for all』という言葉が、この競技の代名詞のように言われ、フェアプレイの精神、

    自己犠牲の精神、試合が終われば「ノーサイド」の精神------等が強調され、「紳士のスポーツ」とも

    いわれる。(ラグビージャージには必ず襟がついている(最近は短い襟になってきたが短くなってき

    たがのは、ジェントルマンの証をのこしているものである。)

 ⑤ボールは楕円球である。(なぜ楕円球かについては諸説ある。)

 ⑥イギリスで行われたラグビーがアメリカへ渡り、アメリカンフットボールへと進化した。

 

 B:基本のルールについて

 ①パスは後方の味方にしなければならない。(ボールを自分の前方へ投げるのは、スローフォワードの

  反則:真横へのパスは反則ではない。)

 ②ボールを前方へ落とすこと(ノックオン)も反則である。

 ③キックすれば、キックした者より前方にいる味方のプレーヤーはそのボールにプレーできない。

 ④相手ゴールラインをこえて(インゴール)にボールをグランディングすれば得点(5点)となる。

 ※要は、ボールを持ってランニングによって前進し、パスは自分より後方にいる味方のみ許される、

  ことを認識させる。

 

3)準備運動(ストレッチ運動など)--------5分)

4)ランニングパス-----------------------------25分)

 ・45(4名がベスト)を一組として、各組にボール1個を与える。

 1段階 (ジョギングで5歩前進してからのパス)

 ・4人を(隣の者との距離を約23mとらせ)横一列に並ばせる。(図 1

 ①軽いジョギングで4人が平行に前進しながら、横の者へパスをだす。

 ・ここではパスの仕方、ボールの持ち方等についてはアドバイスせず、とりあえず行ってみる。

 ・パスを出す際、ジョギングで必ず5歩前進してから出すものとする。

  (1・2・3・4・5 ハイ)という掛け声を出しながらさせるとよい。

 ・右端(左端)まで来たら、左側(右側)へまた戻すようにして続ける。

 ・グランドの端までゆっくりと行わせる。(講座の人数の多い場合は、横のチームと5m程度の距離を

  おいて、もう1チームを配置し、二組同時に行わせる。

 ②取りあえず、全員グランドの端まで来たら、ボールの持ち方、パスの出し方について簡単に説明する。

 ・経験者はスクリューパスを使ったりしているが、ここではあえてスクリューパスについては説明しない。(授業レベルでは習得に時間がかかる為、授業の終わりに取り上げることとする。)

 

 *ボールの持ち方について

 ・指を柔らかく開いて、ボールの中央を挟み込むように保持すること。左右の親指の先が23㎝空いて

  いる程度か。(生徒の中には、わざわざボールの尖っている方をつかむようにする者もいるので注意

  を要す。 

 *パスの出し方について(ここでは下投げのパスのみ)

 ・ボールをキャッチしたら、指先を下方へ向けるようにしてボールを下腹部の前に持ってきながら

  (その時、肘は伸ばしきらずに軽く曲げておくこと―――時々、腕を伸ばしたまま横へ放り投げるも

  のがいる)、軽くスウィングするようにパスを出す。 

 ・その際、必ずパスを出す相手を見て、少し上体を相手側へ向けること。(相手も見ずに、横へポイッ

  と投げるものがいるため)

 ・左方向へパスする際は右肘が、右方向へパスする際は左肘が若干脇から離れ、ボールが手を離れる時

  は、手首のスナップ(さらには、中指・薬指・小指のスナップ)を効かすようにして、相手の胸~腹

  の間へボールが行くようにコントロールする。

 ③向きを変えて、もう一度ジョギングで前進しながら、パスのポイントを確認しつつ行わせる。

  (ここでは必ず、5歩前進したらパスを出すようにして実施する。)


 

2段階 (軽いダッシュで前進してからのパス) (図 2

 ・第1段階と同じ要領で、4人が平行にランニングしながらのパスであるが、ここではボールをキャッ

    チしたら列の前方へ素早くダッシュして 前に出るように動き、少し斜め後方へパスを出す練習を

    行う。

 ①その際、必ず5歩をダッシュして前へ動くこと。パスしたらスピードを緩め、ボールを持っている者

    が常に斜め前に見えるようにしながら行う。(少しスピードを速めると、ボールキャッチしたらすぐ

    にパスをしてしまう者が出てくるので、必ず5歩前進して列の前に出ることを強調する。)

  また、パスが斜め後方になることで、上体をさらに相手に向けることを意識させる。

 ②5歩のダッシュパスでグランドの端まで来たら、向きを変えて、次は3歩のダッシュでパスをつないで

    いかせる。(ボールの手離しが早くなるが、チームの前進スピードが落ちないかが課題となる。

 

 3段階 (フォローしながらのランニングパス①) (図 3)

 ・次の段階として、横のメンバーにパスを出した後、自分はパスをした者の後方を走り抜け、列の端で

    パスを受ける者の後方へフォローして、パスを続ける練習である。

 ①(図 3)で例えば左端のAから進める際、Aはまず5歩前進してから右隣りへパスを出す。パスした後

    は、BCDの右側後方をフォローしながら、Dからのパスを受け、さらにBへとつないでいく。

 ②はじめは、5割程度のスピードで実施する。スピードを上げると、パスを出すタイミングが早すぎて、

    前進しないで横流れになってしまう。5歩カウントしてからパスを出すようにさせる。

 ③右方向へのパスではじめる場合はグランドの左端の方から、左方向へのパスで行う場合はグランドの

    右端の方から実施させる。どうしても横流れを起こすので、パスを右方向へ出す場合は、ランニング

    は若干左方向へ進めさせる。

 ④右方向、左方向のフォローランニングパスを交互に実施させながら、徐々にスピードを78割に上げ

    る。歩数を3歩にせよ---等の要求を出して実施し、パスの精度を上げる。

 ⑤最終的には全速力で(グランドの広さにもよるが)89回のパスを全員で声を出してカウントしなが

    ら成功させる。横流れしないよう、グランドの幅を頭に入れ、ランニングの方向を調整しながら行う。

 ⑥スピードを上げると、パスミスが発生し、ボールを落とす(ノックオン)場合が出てくるが、そう

    いう状況になっても、自分ですくい上げるか、フォローに来た者がすくい上げて続けさせる。

【 図 3 】
【 図 3 】

 

4段階 (フォローしながらのランニングパス)

・第3段階での練習は、同一方向へのパスでつなげるものであったが、この段階で フォローの仕方

 をある程度じゆうにさせ、臨機応変にパスをまわして対応させる。

①第3段階でのランニングパスの要領で、14回目までのパスはこれまで通り、右方向なら右方向に

 限定しておき、5回目のパスからはフォローの方向、順番を自由にさせ、横流れしないようにパス

 をまわしながら継続させる。

②後方からフォローする者の距離感、スピード、声掛け 等が重要になってくる。両サイドにフォロ

 ーがついた場合などは、パスを出す方が「右」「左」などと、後方の者へ方向を確認させながらパ

 スを出すことも大切である。

③時間の都合で、おそらく1往復でもできればよいかと思うが、この段階にまで入れる余裕がなければ

 次時の課題とする。

5)集合、本時の反省、整理運動など (5分)

  ------------------------------------------------------------------------------------------------------

 ※「スクリューパス」の練習

  ・この時点で時間の余裕があれば、「スクリューパス」の練習を少しやっておく。

  生徒は、授業前の時間の余裕があれば、必ず回転を掛けたスクリューパスの練習をやるか、キックの

  練習を好んで行うものである。授業の終わりのクールダウンも兼ねて、ボールへの回転のかけ方の基

  本だけを取り上げておく。

 ①生徒2人にボール1個の余裕がなければ、34人に1個でもよい。

  2人なら34m離れて(左肩を相手に向けた半身の姿勢)で対面させるか、34人にボール1個なら一

  辺が34mの三角形または四角形をつくらせ、内側を向かせる。

 ②右手首を少しボールに巻き込むようにして、右手だけで右腰前にボールを保持し図 4)その状態

  から、対面の相手(34人の場合は左方向の相手)に対し、ボールの横腹を、人差し指、中指、薬指、

  小指の四指で左前上方向にこすり上げるようにして左回転を掛けて相手に送球する。キャッチすれば

  同様の方法で、右手のみで回転を掛けて送球させる。

 ③次段階として、左手をボールに添えて、同じ要領で左回転をかけて送球させる。

 ④回転がかかってくれば、それまでの右手首の極端な巻き込みを普通の状態に戻して、回転をかけていく。

 ⑤左手もワンハンドから同様に練習する。(右利きの生徒にとっては、左方向の回転は難しいと感ずるは

  ずである。)

 ⑥ボールがなくても、教室のイスに座って、自分の太腿をボールに見立てて、回転をかけるイメージ練

  習はできる。----ことを伝える。

 

 

 

 

←まず、右手だけでボールに回転が  かけられるか。

 

←左前上方に、少しこすり上げる要領で実施する。

 

 

 

←手首をボールに少し巻き込むように保持した体勢から始める。


第2限目

 

第2限

・ランニングパスの復習

・ワインディング練習 ~ モール練習

 

1)集合、点呼、準備運動---------------------------5分)

2)前時〔ランニングパス〕の復習--------------10分) 

 ・ウォーミングアップも兼ねて、前時のランニングパスの復習を行う。

  ・前回組んだ4~5人組のメンバーでもよし、入替えをしてもよし。

  ・前時、第1段階~第4段階のランニングパスを、各ポイントを再確認しながら行う。

3)ワインディング練習------------------------------10分)

 *ワインディング練習についての説明

 ・ワインディング(Winding=巻く)は自分の持っているボールを生かすために、前方から来る相手()

    に対して、背を向けるようにして、後方から来る味方へボールキープする体の使い方である。

 ・次の「モール形成」の為の第1段階の技術であり、敵に対して強引に突っ込んでいくだけのラグビー

    ではなく、ボールを生かし、味方につないでいく為の体勢であることを認識させる。

 ・ランニングパス練習での45人組を1チームとして 縦の関係でスタートする。

  (図 5

 

  第1段階  (歩きながら)

 ①先頭Aは腹の前でボールを持ち、ゆっくり声を出してカウントしながら7歩歩き、7歩目で身を反転

      (ワインド)させ、背中を前方へ向け、腰を少し引き気味にし、ボールをすぐ後方からフォローしてく

    るBへ差し出す。

 ②B,C,Dはそれぞれの前に行くメンバーと2m程の間隔をおいて、Aの歩調に合わせて前進し、A

    がワインディングすれば、BはAのボールをもぎ取るようにして左右どちらかに進む。(ここでは投

    げるようにパスせず、もぎ取る。)右へでるか、左へでるかは決めておいてもよいし、臨機応変に対

    応させてもよい。

 ③ボールを持ったBは同様に、7歩前進した後 ワインドして、次にフォローしてくる、Cへボールを

    差し出し、Cはボールをもぎ取って同様に前進する。

 ④ボールを渡せば、列の後方へつき、フォロー体勢をとる 

 ⑤全員が縦に動くので、数組同時に実施できる。グランドの端から端まで1回程度の実施でよい。

 

 

 第2段階  (スピードアップして) 

 ①歩きをランニングに変え、少しスピードアップして行わせる。

 ②ジョギング程度のスピードで7歩のカウントをしながらグランドの端から端まで1回程度、全速力

    の6~7割程度のスピードで、5歩のカウントで1回程度行わせる。

 ③スピードを上げる場合に注意すること。

 ・反転する時の転倒に注意。 ・ボールをもぎ取る際に体当たりしないよう注意。

 ・もぎ取りが少し緩慢になり、放り投げるよう場合が出てくるが、できる限り近いところで手渡すよ

    う意識させる。

4)モ-ルについての説明-------------(7)

 ・少し時間がかかるが、35人の生徒を選抜し、以下の内容について演技を交えて説明する。

 *モール(Maul=「スクラム、ラック等とともに密集戦の一つである。」

 「ボールを持っていて、倒れていないプレーヤーに対して、敵と味方のそれぞれ1人以上がバインド

      (身体を捕まえて密着していること:プレーヤーに手をかけているだけではバインドしていることに

  ならない)して囲んでいる状態を表す。敵だけが捕まえた状態はモールとは言わない為、3人以上が

  プレーに加わる必要がある。」(Wikipedia

 *モールにおける反則

 ・モール内で故意に倒れようとしたり、モールに飛びかかったり、モールを故意に崩そうとしてはい

  けない。(モール・コラぷシング⇒ペナルティキック)

 ・モールを構成する選手を無理に引き離そうとしてはいけない (⇒ペナルティキック)

  ・モールの横または前方からモールに加わってはいけない (オフサイド⇒ペナルティキック)

  ・モールに参加しない状態で、モールの横または前方で待機していてはいけない。(⇒ペナルティキック)

 ●オフサイドについて

  ・ラグビーのルールに於いて、最も難しいオフサイドルールについて、まずモールの場合について学習

  する。

  ・モールオフサイドのルールを利用することによって、二次攻撃~三次攻撃の基点として意図的にモー

  ル形成していくことをこの段階で認識させる。

  ◆モールでのオフサイド図 6(日本ラグビーフットボール協会 競技規則)

  ①オフサイドライン⇒モールができると、双方のチームに1本ずつ、ゴールラインに平行して、2本の

   オフサイドラインが発生する。それぞれのオフサイドラインはモールの中の最後尾の足を通る。

  ②プレーヤーはオフサイドラインの後方から参加するか、直ちに後方に下がらなければならない。

   プレーヤーがモールの横でうろうろしている場合、そのプレーヤーはオフサイドである。

   (⇒ペナルティキック)

  ③モールに参加していないプレーヤー⇒プレーヤーがオフサイドラインの前方に止まりモールに参加

   していない場合、そのプレーヤーは直ちにオフサイドラインの後方に退かなければならない。オフ

   サイドラインの後方にいるプレーヤーがオフサイドラインを踏み越え、しかもモールに加わらない

   場合、そのプレーヤーはオフサイドとなる。(⇒ペナルティキック)

    ④モールから離れるか、モールに再び参加しようとするプレーヤー⇒

   プレーヤーがオフサイドラインの前方に止まりモールに参加していない場合、そのプレーヤーは直

      ちにオフサイドラインの後方に下がらなければならない。そうしない場合そのプレーヤーはオフサ

      イドとなる。味方の最後尾の前方でモールに再び参加すれば、そのプレーヤーはオフサイドである。(⇒ペナルティキック)プレーヤーは味方の最後尾に並んでモールに再び参加してもよい。

 

 ※あと、「モールの終了とは?」「モールの移動(ドライビングモール)とは?」「ペナルティキックとは?  

  等 色々説明不足のところもあるが、この段階では生徒にはモールを使ってのゲームのイメージがまだ

  できていないので、モール形成の条件とオフサイドラインができることを理解させる程度にとどめる。

 

【図 6】
【図 6】

 

5)モールの形成練習(敵なし練習-----------15分)(図 7

 1段階 (45名を1組とし、歩く程度のゆっくりした動きで展開:グランド片道1本)

 ①メンバーのうちAはボールを持って7歩前進、7歩目で「モール」と大きな声を発してワインディン

  グし、後方へボールを差し出すようにする。

 ②すぐ後ろをフォローしてきたB及びCは「モール」の声を聞いてすばやくAの胴部分をバインドす

  るように入り、Aを両サイドから挟み込む。(BCはそれぞれのポジショニングにより、右から入

  るか、左から入るかを判断すること。またAの腕の上からバインドしてしまうとAの自由が利かな

  いので、腕の下からAの腹腰へバインドにはいること。)

 ・バインドの方法として、BCがAの背中側に腕をまわしてバインドする方法もあるが、ここでは腹

  側から入り、腰部分をパックするように挟み込むよう統一した。

 ・Aはバインドされた際、ぼるを相手から取られぬよう想定して、腰を少し引き気味に、また肘を少

  し張り気味にして、ボールを腹の前に出すようにする。

 ・なお、敵がいない状態でのイメージ練習であるので、後ろ向きに構えているAを、BCがそのまま

  バインドして前進し、押し倒さないように注意しておく必要がある。この練習では、モールの声が

  かかったら、立ち止まった状態でモールを形成する意識でよい。

 ③BCの後をフォローしてきたDは、Aのボールをもぎ取り、右か左へ展開して前進する。

 ・その際、「出た!右()」というように大声を発し、どちらへボールが出て展開していくのかをチー

  ムメンバーに分かるように知らせる。

 ・また、実戦を想定して、ボールをもぎとってから23秒間の間をおいて(前方の敵の様子を伺うよ

  うにしてから)展開させるのがよい。

 ④DはAと同様に7歩前進し、7歩目で「モール」と大きい声を発してワインディングし、後方へボール

  を差し出すようにする。

 ABCは「出た!」の声を聞いて、モールを解きDの後をフォローし、上記と同様の展開を続ける。

 ・4人組の場合、バインドに入る者が常にBCに限定される可能性があるので、臨機応変に交代しなが

  ら入るように指示をしておく。

 ・5人組の場合、DはAからボールをもぎ取ったら、さらにその場で反転(ワインド)し(もしくは、

  正面を向いたままモールに加わり、ボールを股の間から後方へ差し出すようにさせてもよい)、次

  にフォローしてくるEにボールを渡し(Eがボールをもぎ取り)、Eは「出た!右(左)」の声を

  発して、同様の展開を行う。

 

2段階(ジョギング~徐々にスピードアップしていく:グランド片道1本)

*第1段階の歩きながらのモール形成~次のモール形成をランニングでスピードアップして行わせる。

・スピードを上げると、ワインドした者への押し込みが強くなり、転倒の危険が出てくるので、モー

  ル形成時には必ずスピードを落とすこと、無理な押し込み動作をしない、モール形成が確認されて

  から少し間をおいて玉出しをすること、などの注意が必要である。

・ボールを持って前進する者は78mは前進すること。

 

3段階 (メンバーを入れ替え、

                    56人程度のグループで若干のパスを交えての実施:グランド1~2往復 

①メンバーを入替え、56名で1組のグループにする。

②Aはボールを持ち78mダッシュして「モール」の声(ワインディング)、BCがバインドに入る。

 DはAからボールを受け取りそのまま「出た!右(左)」と展開してもよし、あるいは次にフォ

 ローしてきたFへ手渡してもよしとする。

  ③モール形成~、ボールを持って出て行く者は、必ず「出た!右(左)」の発声をしてモール前方

  へ飛び出し、そこから23回のパス(最高3回まで)をうまくつなぎ、2回目(3回目)のパスを受け

  た者が、再び「モール」発声をしてワインドし、次のモールを形成し、同様に連続していく。 

 ④チームの動きの方向性を決めるのは、「出た!右(左)」の発声であり、声を出すことの重要性

  を認識させる。 

 

※この時点で、時間の余裕などがあれば、対面での「キック練習」等を取り入れてもよい。

 ・「キック」についての解説は専門書に詳しいので割愛させていただく。

 ・また、初級ラグビーではハンドリングゲームを中心に組むので、キックそのものに重点を置いた

  指導案は組まない。しかし、生徒はキックすることを好むので、時間の余裕のあるときに取り入

  れておく。

6)集合、本時の反省、整理運動など (5)


第3限目

 

第3限

・モール形成~バックスラインを形成しランニングパス(一次攻撃)

 ~再びモールを形成~バックスラインを形成しランニングパス

 (2次攻撃)

1)集合、点呼、準備運動---------------------------------------5分)

2)前時の復習(ランニングパス/ワインディング/モール)------10分) 

 ・ウォーミングアップも兼ねて、前時の復習を行う。

 ・前回組んだ45人組のメンバーの入替えをしてもよい。 

 ・各ポイントを再確認しながら行う。

3)ラグビーのゲームにおけるポジションについて----------------5分)(図 8 )

 ・本時は、少しポジション別の役割を持たせた練習をする為、一般的な15人制ラグビーが、どのよう

    な役割・分業制の動きをしているかについて簡単に説明する。

 ・ポジションの名称に触れ、動きを徐々に理解させていく。

 ・図8 のようなポジションを描いたプリントを説明時に必要枚数用意し、説明終了後回収するか、

    要になったカレンダーの裏側などを利用してポジションを描いておき、示しながら説明する。 

 ・今回はフォワード(FW)・ハーフバック(SH/SO)・バックス(BK)の役割を生かしなが

  ら連携練習することを伝える。

 

4)モール形成~バックスラインを形成しランニングパス~再びモール形成

~バックスラインを形成しランニングパス(2次攻撃)---25 

  1段階

  ①79名のグループを作り、下記の要領でポジションを決定させる。

   *8名の場合: ① ② ③   ④ ⑤   ⑥ ⑦ ⑧ 

      FW   FW   FW SH   SO      BK  BK  BK   とする。

   *7名の場合=BKを1名減らし、9名の場合=FWを1名増やす形とする。

   ・6名では少ないので、できれば7名以上がよい。また10名ではこの段階では多すぎるが、講座人

        数に合わせてうまく設定する。

   ・ポジションは色々なところを経験させるので、体重のある者をあえてFWにもってくるなどの

         配慮はこの段階では必要ない。

  ②(図 9)の要領で、FWメンバーがモールを形成し、SH~SOとセットして、BKにはラインを

   深めにとらせて並んだ状態をグランドの端につくらせる。

   ・BKのらいんは右ラインでも左ラインでもよいが、どのグループも同方向から順に出させた方

    が指導しやすい。

  ③モールからSHがボールを保持し、「出た!左()」の声で、SOへパス。

   SOは右ライン⑥~⑦~⑧とパスをつないで、⑧はボールをキャッチしたら、フォローしてきた

   ①②③のだれかにパス。パスを受けたFWはその場でワインディングして「モール」の発声。す

   ぐに残りのFWがバインドに入りモールを形成。SHはグランドの状況を見てバックスへライン

   を引く方向を指示----「ライン右(左)」と大きな声を出して指示を出す。

  ④BKのラインはモールの位置から、右方向なら⑤~⑥~⑦~⑧、左方向なら⑤~⑧~⑦~⑥の順

   にポジショニングさせる。

  ⑤SHはラインができたのを確認してから、「出た!右(左)」の発声と同時にSOへパスを出す。

   あとは、同じ要領で、グランドの端に達するまで続ける。

  ⑥はじめは、ゆっくりしたジョギングペースから、徐々にスピードアップして、グランド1往復から

     2往復を同じポジションで実施してみる。

  

  第2段階(ポジションをチェンジして行う。)

  ・授業ではできるだけ違うポジションを体験し、そこで何が行われているかを理解しながら進めたい。

  ・先ほどのグループでミーティングを行い、FWを経験した者はHBかBKを、BKだった者はFW

   かHBを、HBの者はFWかBKにポジションチェンジする。

  ①第1段階と同じ要領で行う。ポジションが変わってもスムーズに動けるか、声が出せるかである。

  ②グランドが広ければ、2グループを同時展開できるが、状況に合わせて行う。 

  ③徐々にスピードを上げて行わせる。BKの縦への走り込みがなければ、FWのフォローが間に合わ

   なくなってくるので、BKはボールを受けてすぐに横流しのパスをするのではなく、必ず前方へ3

   ~5歩は走っていくという、前に出て行く意識を持つように注意を促す。 

  ④時間のある限り、このパターンを徹底的に頭に入れるよう動かせる。

   (時間の余裕があるなら、再びポジションチェンジして行わせる。)

 

5) 集合、本時の反省、整理運動など (5分)

【図 9】
【図 9】

第4限目

 

第4限

・3限目の復習

・タックルの練習

  (静止状態から~スローで動きながら

                          ~スピー ドを増して

1)集合、点呼、準備運動------------------------------------------5分) 

2)前時の復習

 (79名で、モール~バックスラインの形成~ランニングパス~モールの練習)

 ・ウォーミングアップも兼ねて、前時の復習を行う。

 ・前回組んだメンバーの入替えをしてもよい。

 ・各ポイントを再確認しながら行う。

 ※授業も4回目ともなると、生徒はゲーム的な動きをしたくなってくる。いつになったらゲームが

    できるのかと問いかけてくる。そのような場合、時間の余裕があれば下記のようなボールキープ

    ゲームを実施してもよいかと思う。

 ※ボールキープゲーム

  *45人のグループを作り、中くらいのグリッド(15m×15m程度)を用意して、ボールキープ

      ゲームを実施し、ゲーム的動きを味わわせる。 

  *例えば、グリッド内で、Aグループ対Bグループで、何回パスがまわせるか、あるいはどれだけ

      長い時間パスをまわせるかを競わせる。

  *パスは後方へのパスに限らず、前方へ投げても構わない。

   ・ゲームの様子を見て

   〔2回以上連続しての手渡しパスは禁止/パスを出してきた者へのリターンパスは禁止/5歩以上

         の持ち歩きは禁止/パスを受けたら35秒以内にパス----

    などの条件を加えたりすればよい。

3)タックル練習

 A:タックル(Tackle)についての説明---------------7分)

 ・いよいよコンタクトプレーに入るが、実際のタックルを授業で適用すると危険な面

も出てくるので、授業では制限を加えながら行う。

 ・タックルはボールを持った相手に対する、ディフェンス側の唯一の防衛手段である。

 ・生徒1名を選抜して、実演の相手をさせながら下記説明を行う。

 1〔実際の正規ルールにおけるタックルについて〕 

  ・タックルは相手に捕えられた状態のままで倒され、ボールがプレーできなくなった時に成立する。

      タックルはボールを持ったプレーヤーだけに行うことができる。(ボールをキャッチしようとする

      プレーヤーへのタックルは、アーリータックルの反則である。)

  ・タックルされたプレーヤーは直ちにボールを放し、立ち上がるか、転退すること。

  ・タックルしたプレーヤーはボールを放すことや、立ち上がろうとすることを妨害してはならない。

  ・タックル直後のボールに対しては、だれも横たわったままプレーしてはならない。 

  ・肩より上(特に首)へのタックルは反則である。

  ・上記反則については反則地点でペナルティキックが与えられる。

 2〔実際の効率的なタックル技術について〕

  ・ボールを持った相手の腰より低く入り、相手の両大腿部(膝の上)、もしくは両膝、もしくは膝

      下を両手で抱え込むようにしてバインドし、足で地面を掻くように走れば相手は倒れる。

 

 3授業で採用するタックル(=ホールド)について

  ・授業では上記のような本格タックルを採用すれば、怪我につながるので、以下のような条件でタッ

      クルの成立とする。

 ①タックルの代わりに、「ホールド」をタックルとして適用する。

  ・相手の下半身へはタックルに入らず、胴体部(腹腰部)を両手でホールドすることでタックル成立

      とみなす。

 ②ホールドされたことで、タックル成立とみなす為、ホールドされた側は

  ・強引に引きずって突破しようとしたり、ハンドオフして突き放そうとした場合は反則とみなす。

      ホールドされたら前進することを止めること。

  ・ただちに、ボールを放すように動くこと。ただし「モール」の声を出して、味方を呼び寄せる行

      為で23秒の保持は有効とする。

 ③ホールド(タックル)成立と判定された場合(ボールも放さず、モールも成立しなか

 った場合は)はホールドした側のボールでスクラムから再開することとする。

  

4ホールドはどのようにするか(実演を交えて) 

 ①いくら倒さないといっても、相手の胴体部をホールドしたとして、相手にそれなりの勢いがあれば

  倒れてしまうことが予想される。その為、相手の胴体部に喰らいつく際には、左・右・前のいずれ

  の方向からホールドするにしても、自分の頭部を相手の背腰側へまわすように入ること。 

 ②ホールドに入る際は、下方ばかり見ず、目線を相手に向け、スワロー(ツバメ)ランニング図 10

  から入るようにすること。 

 ③(実演として)数m離れたところから、ボールを持って軽くジョギングしてくる生徒へホールドの仕方

  を示す。 

 ④ただホールドして、相手の動きを止めることだけでなく、持っているボールをはたくこと、腕を引っ

  掛けてボールを落とさせることなども有効であることも伝える。 

 

B:実際のタックル(ホールド)練習-------------------------(1520)

  1段階

  ①2人組をつくらせる。

  ②その場で、片方が23歩歩いて前進してくるところを、もう一方はスワロー体勢をつくり、自分

      の頭部を相手の背腰部へつける(出す)ようにしながら腰部をホールドする。

  ③交代しながら23回実施する。

  2段階

  ①全員にヘッドキャップをつけさせる。

   (ヘッドキャップがなければ仕方がないが、その場合、後半のスピードを上げる段階では無理無茶

   なタックルに入らぬよう注意を要する。)

  ②数名ずつのグループに分ける。

  ③・( 11)のようなグリッドを作り、片側から、ボールを持ったAがジョギング程度のスピードで

    前進してくるのを、もう片方から出てきたBがホールド(タックル)する練習である。(指導者の

    合図で両サイドから出てくるようにするとよい。)

   ・講座人数に見合ったグリッドをコーンを置いて区分けするか、ラインを引いておく必要がある。

   ・この段階では、ボールを持った側Aはフェイントはかけずに、Bにホールドさせてやるように

    する。

   ・B側はスワローランニングから、自分の頭の位置に注意してホールドし、成功したら互いに逆

    サイドへ分かれ、次のペアーが笛の合図で出てきて同様に行う。

  ④・2回程度行う。2回目は違う相手が出てくるように臨機応変に調整する。

   ・2回終了したら、ボールを反対側へ渡し、同様に行う。

  第3段階

 ①第2段階と同要領であるが、Aはスピードを上げ、フェイントをかけて相手をかわすように動く。

 ②Bはかわされないように動きホールド(タックル)を試みる。

 ③スピードを増してくると、激しい接触、転倒ということも予想されるので、指導者の笛の合図で

  スタートし、状況をよくみて、間合いを図って実施する。 

 ④また隣にもグリッドを設けて行わせる場合は、サイドライン沿いで、隣のプレーヤーと接触する

  可能性もあるので、注意を要す。

 ⑤ホールドが成立した場合は、強引な前進をしないように注意をしておく。

 

 ⑥13回程度、相手を変えて実施してみる。

  第4段階

 ①( 12)のように、同じグリッド内に人数を増やし、2:2で、軽い攻防を交えて、パス及びタッ

  クル(ホールド)の練習を行う。

 ②攻撃側のパスは、あくまで後方か真横のパスであること。

 ③グリッドが狭く感ずれば、隣のグリッドへ枠を広げて実施してもよい。 

5)集合、本時の反省、整理運動など----------5分)