昭和中期の体育授業では、陸上競技、器械運動、水泳といった種目が軸的にも時間的にも基礎部分
としてあった。その中身も、陸上競技では短距離走、砲丸投げ、走り幅跳び、、ハードル走、長距離
走などに結構な時間をかけたし、器械運動ではマット運動のみならず、鉄棒、跳び箱、平均台を授業
でこなしていた。その後、学習指導要領の改訂が何度か進められる中で、体育授業は生徒が種目を選
択していくような形態となり、バスケット、バレーボール、サッカー、ハンドボールといった種目に、
昔は雨天時に飛び入りで行う種目であった「卓球」「バドミントン」自習時間に行う種目であった
「テニス」「ソフトボール」がその存在価値をアップし、球技種目がカリキュラムの中心となった。
それとともに、陸上競技、器械運動はこの二つからの選択となったり、時間数、中の種目数もかなり
減じられる方向へと動くのは当然である。
器械運動では、回転感覚、バランス感覚、柔軟性などを養う運動としては適しているが、非日常的
な運動でもあり、克服すべき課題が、与えられた時間内になかなか達成できずに、積み残すことも多
く、教師の中にも指導を嫌がる者は多い。
また、選択制の授業の中では、生徒自らが授業を「デザイン」し、創っていく方向の授業が試され
ているが、『ラグビーの授業』等と同じく、器械運動の場合も、明確な技術の系統性、技術のポイン
ト、技の補助法などを理解させていかないと、惨めな結果に終わってしまうため、安易に、生徒に計
画を任せてやらせる授業には賛成できない。
今回ここで示した「マット運動の授業」は、いわゆる旧い型の授業に入るかもしれない。20世紀の
残骸といわれるかもしれないが、書かないことには屍としても残らぬと思い、あえて表出する。
今回ここでは、例えば前転や,後転倒立や------といった技の習得のためのポイントを解説・列挙す
ることは控え、体操競技の床運動にみる運動の連続性を習得するためのファクターの学習と、競技会
の緊張感やムード作りを味わうことを目的とした学習指導案を構成した。男女によっては、細かい点
で指導していくポイントが違ってくるとは思うが、参考にしていただければ幸いです。
(なかおか)
神戸市 北区