・第1限 ①竹刀の分解・組立て ②礼法
この時間は、購入した竹刀の、分解・手入れ・組立てをしながら、竹刀の構造、名称、あるいは歴史などを
知るとともに、道具を大切に扱う態度を養うことを主目的とするが、この1限のなかで、自分で分解、組立
てする際にしっかりした仕込ができず、かえってその後の竹刀の損傷につながるケースもあるので、そのよ
うに予想される場合は、この時間の分解、組立作業は省いて、次の2限の内容から出発した方が良いとも思
われる。
しかしながら生徒たちは、竹刀の分解を通して、単純ではあるが巧みなその構造や、紐の結び、中結の結び
について驚きの声をあげる。また学販で割安の竹刀を購入したした際、分解してみると、竹に割れ目が見つ
かったり、先ゴムがなかったりすることもしばしばあり、不備な品物は発見が早ければ交換も可能なので、
時間が許せば、点検の意味でも、この分解・組立てを行うことをすすめたい。私のような専門家でなくて
も、結び目をよく観察して、10本も分解組み立てれば、かなりしっかりした仕込みができるものである。
(1)整列、点呼(5分)
・各校、どこで授業を行うか(体育館か、道場か)によって、整列の仕方も工夫されていると思うが、いわゆ
る規格道場(一辺10~11m程度の四角形の試合場が一面とれるぐらい)では、縦に6人、横に8人(合計48
人)で最大ギリギリ目一杯で、これ以上ふえると一斉が動く授業はできない。(男女別、出席順などで整列
させる。)
【図①】
6 ● ● ● ● ● ● ● ●
5 ● ● ● ● ● ● ● ●
4 ● ● ● ● ● ● ● ●
3 ● ● ● ● ● ● ● ●
2 ● ● ● ● ● ● ● ●
1 ● ● ● ● ● ● ● ●
い ろ は に ほ へ と ち
◎教師
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
(2)正座、礼について(5分)
・いまや剣道はスポーツとしての剣道になっていると思うが、人の体そのものを攻撃対象としていることを十
分認識させる。次第に内容が進み試合形式をとりだすと、乱暴な動きをするものも出てくるので、礼法につ
いては、相手への尊重・尊敬の態度を示し、自分自身の気持ちを平常心として保つ意味からも、まず形とし
て示すものとして確認し、声を出して、「お願いします。」「ありがとうございました。」など、言葉とし
て表わしていくことを確認する。
〈正座について〉
・足の親指と親指を重ね合わせ、膝と膝の間はこぶし2つ(その者の体型に合わせて、多少安定が違うようだ
が)入るぐらいの間隔で開き、胸を軽く張り、手を大腿の付け根にに置いた姿勢で、気持ち(意識)を臍下
丹田に置くというのが一般的である。
・竹刀は自分の左側に置くものとし、鍔(つば)部分が左膝頭の真横にくるものとする。剣先が後方を向いて
置かれる形となる。(注意していないと剣先を前にして置くものがでてくる。)前に坐している者との間隔
は、置いた自分の竹刀の柄頭と、前の者の竹刀の剣先との間隔が最低50㎝程度はほしい。なお、剣を左に置
くのは、刀をすぐ抜きやすいためであるが、江戸時代に入って、目上の人に対する場合、また自分に攻撃す
る意思のない場合は、その意思表示として、右側に置いたともいわれる。【図②】
【図2】
*膝頭の横に 竹刀のつばがくる。 前後の距離=最短50㎝は距離がほしい
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
(礼 について)
・指導者もしくは生徒代表の「礼」の声で、左手~右手(あるいは両手同時でも可)に膝の前に手を置き------
その際両手で三角形をつくり、その三角部分へ自分の鼻を落としていくように頭を下げていく。(作法、礼
法の形式美学面の歴史やなぜそうなのかという理由については勉強を要す。)
・「礼」が終われば、各自 自然に起こしてきてもよいが、生徒の中にはずぼらをして、礼をしない者もいる
ので、教師側は先に頭を上げ、「なおって」あるいは「起こして」などの声かけで一斉に起こさせるのが良
いと思われる。
(3)「正座」への座り方、立ち方(2分)
・「左座右起(さざうき)」という言葉がある。座るときは左足から、立つ時には右足からということで、武
士が左手に刀を持っていた(下げていた)場合その方が合理的といえる。居合道においても、剣を抜きなが
ら立つ場合は必ず右足より踏み出している。
正座の後、「起立」「着座」の掛け声で2~3回行えばすぐできるものである。
(4)竹刀の分解・組み立て(30分)
※竹刀の構造については剣道入門書あるいはスポーツ関連参考書に詳しいので省略。
a:竹刀の各部名称の確認(略)
b:弦(つる)が引き込まれている鍔元部分をよく観察させ、あとで復元できる確信の得られた者から弦を外しにかかる。中結(なかゆい)部分ははじめは絶対に触らず、中結をつけたまま弦を手元の部分ではずし、先革部分を引っ張ってスポッと抜く。
c:先革を外した時点で、剣先に先ゴムがはめてあるかを確認させる。新しい竹刀でも先ゴムのないもの時々出てくるので要注意である。
d:柄革部分をはずし、4枚の竹を確認する。竹の根元部分に四角い鉄片で竹4枚がとめられていることを確認する。
e:4枚の竹の内側をみて、ひび割れ、裂け目がないかを確認する。(できればここで、細かい目のサンドペーパーを5㎝四方に切ったものを人数分用意し、竹の裏面、サイド面に磨きをかけ、ささくれだたぬようにしたり、ろうそくのろうを塗り込んだりすれば完ぺきである。)
f:柄革からもう一度はめこんで組立開始。
g:全部仕込んだのち、中結の構造について観察し、ゆっくり外させながら、結び方の巧みさについて観察
した後、再び結びなおしをさせる。(中結の結び方は少々ややこしいので、教師側もよく勉強しておかね
ばならない。)
h:仕込みがきっちりなされているか、隣どうしで確認させてもよい。(はじめて分解組立を生徒がした場
合、特に女生徒の仕込みは全体的に緩いので注意を要する。分解組立は授業としては省いてもよい内容で
もあるが、道具を理解するという意味であえてチャレンジした。)
i:最後に、竹刀の柄部の中央部分にマジックで名前を書かせる。柄部の握りの当たらぬ中央部に書かせる
のが良い。(マジックを何本か用意しておく必要がある。)
(5)整列、正座、注意------礼法の確認をして終了する。(3分)
※剣道の授業において問題になるのは生徒の竹刀の保管場所である。よく教室や廊下の傘立てを利用して突っ込んでいるケースがあるが、掃除の邪魔になったり、ふざけて竹刀を振り回すものもあったりするので鬱陶しがられる。道場の入り口付近の邪魔にならないところに竹刀立て(なければ傘立てか段ボール箱を利用したもの)を用意し、クラスごとに立てておくのが好ましい。
※尚 竹刀は高校生の場合、一般と同じ3尺8寸(通称サンパチ)の竹刀を使用するが、女子の場合は中学生
から使用しているものがあれば3尺6寸(通称サブロク)でもよいと思う。
・第2限 ①構え ②面を想定した打込み練習
(1)整列、正座、礼、出欠点呼(3分)
・礼法の確認。正座した時の竹刀の位置確認。
・竹刀の仕込みにゆるみがないかの確認。竹刀への名前の記入の確認。
(2)準備運動(5分)
・竹刀はそのまま置いた状態で立ち上がり、右へ半歩動いた位置で準備運動をおこなう。
・肩、手首の運動を念入りに行う。(足で竹刀をひっかけないよう注意しておく。)
・柔軟運動やストレッチなどを座位姿勢で行う場合は竹刀を背中側に横向きに置かせるとよい。
(3)「構え」について(3分)
・竹刀を持たせ「構え」について説明する。
・剣道連盟が紹介する剣の「構え」には、上段・中段・下段・八相・脇構えの5種がある。
(日本剣道形に各構えが出てくるので、詳しくは形の紹介本か解説書を参照されたし。また最近は二刀流
が見なおされてきているが、授業では一刀で、「中段の構え」で統一する。)
・5種の構えを一通り生徒にやらせてみる。(結構喜んで構えをとっている。)
(4)「中段の構え」について(10分)
A:足の構え
・竹刀の持ち方を先に指導してもよいが、まず土台を安定させる意味からも足の構えを先に指導する。
・自然体から軽く右足を一歩踏み出した形、前後へも左右へもすぐに動ける範囲、開きすぎたり狭す
たりせず、すぐに重心移動できる範囲を考えさせる。
・集団行動の方向転換で、「気をつけ」の姿勢から第1動作で「右向け右」をして、90°方向転換した
瞬間の足の位置を考えてもらうとよい。
・両足のつま先はまっすぐ前方を向いていること。つま先が外を向いていると効率のよい、床面のけり
の動作ができないこと。足捌きで送り足をする時、後足(左足)を引きずるような動きになりやすい
ので注意する。
・左足は踵を常に浮かして(床から2~3㎝が適当)、常に前にけりだせる状態を作っておくこと。(ボ
クシングの構えとよく似ていて、後ろ足が必ず浮いていることを確認させる。)ただし左足の踵を上
げすぎると、今度は右足に体重がかかりすぎ、右足をすぐに動かすことが困難になることと、反対に
左足の踵を床にベタッとつけると、右足は自由に動くが自分の体そのものの移動が困難になることを
理解させる。
(ただし、これは竹刀剣道の構えであって、実際に真剣でものを斬る場合は、両足は床にペタッとつ
けている構えが本道とされる。現在の剣道のように前に飛びこむように床をける要素よりも、両足
をつけて腰を落とさなければ斬るという動作はできない。あくまで現代剣道の足捌きという認識が
必要である。)
・右足の踵も、一般的には「紙一枚浮かせよ」といわれる。要はべた足では自由な動きができないとい
うことであろう。
・体型、体格によって足幅などは違ってくるが、上記が基本となる。
B:竹刀の構え
①とりあえず、自分の思う「中段の構え」をとらせてみる。それで上下に振ってみて自由に振れるか、違
和感はないかをみてみる。左利きの者がいて、左手を前にして構えるものがあるかと思うが、全て右
手、右足が前として統一する。
※左利きの者に対しての剣道指導については、一考を要すると感じている。柔道では右構え左構えを認
め、指導においてもさほど苦労しないが、剣道における左を前にした構えは次の打ち込み指導をかなり
違和感をもってすすめないといけないし、左利きの者にとってはやりにくさを感じる体勢ともいえる。
②右手を放し、左手だけで「中段の構え」の位置に竹刀を構えてみさせる。
・竹刀は弦のある方を刀の脊として想定していること、弦の反対側が刀の刃としてみなされていることを
理解させる。したがって、弦のある方で打っても有効打とはならないことを理解させる。有効打は弦の
反対側で打った時のみと認識させる。
・したがって左手のみで竹刀を構える上でも、弦が真上にくるように竹刀を位置させることが大切であ
る。
・竹刀は左手の小指で振るものと思って良し。左手小指は竹刀の柄頭を余さずにしっかり握る。その際左
手親指と、人指し指のちょうど中間位置が弦の延長ライン上にあるようにもってこさせる。【図3】
・横から握ってしまうと、中間位置が弦のライン上にこない。したがって手首が少し内側にひねられた状
態にもってこさせる。
・左手はへその位置より2~3㎝下の位置から拳一つ分前に出すように置き、剣先を前の人の首筋あたり
へもってくるようにする。(実際には相手ののど元へ合わせる。)授業では、初心者は構えが高くなり
すぎ、剣先が相手の頭上方向へ向いてしまう者も多いので、少し低めに構えるぐらいでよい。
・あくまで小指で握るつもりで、親指と人指し指はほとんど力を入れずに添えているぐらいの気持ちで構
える。実際に親指と人指し指にグッと力を入れて握れば、腕の橈骨側の筋肉が作動して、肩に力の入っ
た融通の利かない硬い握りになることを認識できるだろう。
③次に右手の握りについて理解させる。
・右手の位置を理解するのに 【図4】のように右肘の内側に竹刀の柄頭を当てて、自然に右手がくる位
置がよいとされる。鍔の位置で惑わされる必要はないとされるが、普通の高校生で3尺8寸の竹刀を持っ
た時が、この図の要領で行って適当な状態になるのであって、3尺6寸ぐらいの短めの竹刀となると、右
手と鍔の間が詰まりすぎて窮屈となる。鍔と右手の握りの間には約2㎝程度の遊び部分がほしく、さら
に右手と左手の間を一握り半ぐらいの間隔をとるのが竹刀操作には妥当といえる。
・右手の握りも、親指と人指し指の中間が弦のライン延長上に位置していること。左手と同じく親指と人
指し指には力を入れず、小指で握っている----という感覚で理解させる。
【図3】
|
【図4】
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④ Aの足の構え+Bの竹刀の構えを総合して中段の構えをとらせる。よく言われることだが、雑巾を絞る要
領(ただし小指で)で手首を少し内側へ絞り込んだ状態をつくらせるとよい。
イ:左拳の位置はどうか。 ロ:横から握っていないか。
ハ:拳と拳の間隔は適当か。 二:左小指が柄頭にかかっているか。
ホ:弦が上を向いているか。 へ:剣先の位置はどうか。
ト:足の踵の状態や足幅はどうか。 チ:肩に力みがなく、リラックスしているか。
などのチェックポイントを確認する。
(5)2人1組による面の位置への打ち込み練習(足を動かさずに) (10分)
①2人1組で対面
48人の授業では【図5】のように対面させるわけだが、規格道場では中段に構えて向かい合うとほとん
ど隙間なくビッシリ詰まる感じになってしまう。
②偶数ラインの者は足を肩幅程度に横に開き、自分の竹刀を横に持って頭の高さに上げる。この時、弦が自
分の額の方に向くように持っておくこと。(相手の竹刀を打ち込ませるので、竹刀が弦に当たって切れな
い向きにさせるということである。)
③奇数ラインの者は、面を打った瞬間を想定して、相手の横に掲げた竹刀の中央位置に腕をのばして自分
の竹刀を置くだけとする。
a:竹刀は小指・薬指で握り、親指・人指し指には力が入っていないか。
b:右手が右肩の高さで水平に前に伸びていること。ただし肩は力みなくリラックスしていること。
c:竹刀の物打ち部(一般的には中結より少し前部)で面の位置(相手の竹刀)に当たっているか。
(切先や竹刀の中央部では有効打として試合では「一本」としてとってくれないことを理解させる。
d:左手の位置は右手より必ず下の位置にあるか。左手が右手よりもはねあがっているものは、竹刀を
左横方向からつかんで、親指と人指し指の中央部が弦のラインにきていない証拠であり、これで
は小指の握りの効いた振りができない。
e:左足の踵は上がっているか、べた足になっていないか。
f:腰が引けていないか。上半身は縦軸が定まっており、腕が前方に伸びている姿勢がとれているか。
などのポイントで姿勢を確認させる。
④足は動かさずに【図6】の状態で、10本ずつ交代で面打ち(竹刀うち)を行わせる。
a:1(イチ)の号令で【図6】の状態から大きく振りかぶる。
・振りかぶった時に、腕の内側から相手の顔が見えていること。振りかぶりすぎて【図8】のように
剣先が後方へ垂れてしまえば、第一に後方の者に自分の竹刀が当たる危険性があること。第二にあ
まり振りぶりすぎては左手小指の力が弱まる可能性があり、生徒によっては小指を離してしまう
ものもでてくる。
・振りかぶった時の剣の角度は【図7】ぐらいで止めておくこと。
b:2(ニィ)の号令で面に振り下ろす。
・力まずに、先ほどの③のポイントを注意しながら打ってみる。
・現在の剣道では、当てたときにはたたきつけるような打ち方ではなく、どちらかというと前に押し
伸ばして打つという意識を持たせる。
・下方へ叩きつけるような打ち方をする者には、よくよく注意していないと、いざ自由稽古(地稽古)
や試合の段階になると乱暴にみえ、ケンカのようになってしまうこともあるので、初めの段階で十
分観察し、修正していく必要がある。
・叩きつけるように打つ者には、右手の押し伸ばしを強調するか、左手だけで竹刀を数回振らせてみ
て、その後右手を添えさせるようにもっていくのもよい修正方法である。
・とにかく③での姿勢、ポイントをくりかえして認識させる。特に打った瞬間に右手の位置より上に
左手が上がってくるものが出てくるので竹刀の握りを再チェックする。
・打った瞬間に「軽くタオルを絞るように」と声をかけるのも有効である。
c:指導者の号令で1(イチ)(振り上げ)2(ニィ)(バシッ---竹刀を打つ音)を繰返す。
・はじめはゆっくり、次第に適度なスピード感をだして心地よく振れるようにもっていく。
・10本(回)程度で交代させるのがよい。竹刀を頭上に横持ちしている元立ちも結構疲れるので、
肩を回すなどして休憩させる。
d:交代で10本を2~3セット繰り返す。
(6)前後の足捌きを入れた三挙動の面打ち(竹刀打ち) (10分~15分)
a:足捌きだけの練習
1、まず全員正面を向かせ中段の構えをとらせる。(左足踵が床から浮いているかを確認)
2、前足の爪先から約一足分スゥ――と前に出てすぐ後足を前足に寄せる動作を行わせる。この時、
床上をスゥ――と移動するように意識し、床面から足を持ち上げないことを強調する。
3、次に後足(左足)からまた一足分スゥ――と下がり、前足を引き寄せて元の位置へもどる。
4、もどった時に左足の踵を床につけぬよう、上げた状態であることを強調する。そうでないと次の
動作にすぐ移れないことを注意する。
5、号令1(イチ)で前進、2(ニィ)で後退。これを10回ほどくりかえす。
b:竹刀の振りと足捌きを合わせた練習
1、先程の二人組で向かい合い、一方は竹刀を横に持って頭上にかざす。
2、もう一方は先程の(5)の練習位置から一歩さがったところで中段の構えをとらせる。
3、1(イチ)の号令で竹刀を振り上げる動作。
4、2(ニィ)の号令で、前進の足さばきで右足より一歩でながら、相手の面(竹刀)へ振り下ろし、
すかさず左足を寄せる。
5、3(サン)の号令で左足からさがりながら、中段の構えにもどる。
6、・イチ、ニィ、サンと号令をかけて約10本振らせて(打ち込んで)みる。
号令では、初期段階では「イチ 振り上げ、ニィ 打ち、サン 中段へもどる」というように声
をかけてやるほうがよいとおもわれる。サンで中段の構えにもどるのに多少躊躇するものが出て
くると思われる。
・後ろへ下がって中段の構えに戻ったときの竹刀の位置、剣先の位置、左足の踵の浮きなどを確認
する。この段階ではどうしても中段の構えで剣先を天井の方へ向けてしまう者がでてくるので、
面に打つ位置と、中段の構えの竹刀や剣先の位置の違いを明確にしていく。
7、元立ちを交代しながら10~15本打ち込ませる。
※できるだけはじめからものを打って、その感覚を体得していくということで、素振り形
式の練習からはじめるのをここでは採用していない。素振りからはじめて、面の位置でピタッときめる
のは、かなり難しいものである。
(7)整列、正座、本日の授業の整理。礼をして終了する。(3分)
【図5】
●【指導者】 |
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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・第3限 ①すり足(送り足)の練習②一挙動の面打ち③跳躍正面打ち
(1)整列、正座、礼、出欠点呼、竹刀の点検、準備運動 (10分)
(2)すり足(送り足)の練習(10分)
・足捌きだけの練習である。前時の前進・後退の練習のうち、前進部分だけを連続して行う練習である。
・現在の竹刀剣道と実際に刀を持った剣の技法とで大きく異なるのは、前時でとりあげた竹刀の打突の
仕方---つまり前に押し伸ばすように打つ打法---である。これは実際、本物の刀を持てば、押し伸ばす
動作ではなく、斬り降ろす動作をしないと斬れないであろうこと。叩き斬る、撫で斬るという言葉が
あるが、日本刀は押し斬るという動作では刀本来の特徴を生かせない。
・もう一つ、この刀で斬るという動作に欠かせないのは、足を地につけているということである。時代
劇のチャンバラをみてもわかるとおり、斬る動作は腰を落として足は地についている。竹刀剣道の場
合、前に跳んでいく足の動作が多い。つまり地面から足が離れるのである。腰を落として斬るという
より、飛び込んで当てるという動作に変わってきたこと。ただし打突したあとは(もちろん打突する
までも)この飛び跳ねる動きを嫌い、道場の床をすり足で、しかも送り足で進みなさいと強調される。
・本物の刀の技法から、竹刀剣道へ移り変わった最大の特徴はこの二つといわれる。生徒にはこのこと
を理解させておく必要がある。
1、隊列を全員後方へ下がらせ、前列の者から笛の合図で順に行う。
2、自分の竹刀を背中で横に持たせ、腰部にあてさせる。【図9】
3、上体は垂直にしたまま前足(右足)から床面を摺る(する)ように送り足の練習を行う。
・右足の爪先から床上をス―とすべらし、すぐに後足を前足の踵部分へ寄せてくる動作の繰り返し。
・後足を前足より前に出せば、歩いているのと同じ動作になるので、常に後足は前足より前に出な
いよう心がける。
・右足を踵から踏んでいくようにすると、上体が前後に振れるので、あくまで爪先から滑らせるよ
うに行わせる。前方に視線を置いたまま、下を向かずに流れるように行う。
・道場の端から端へ、だいたい5~7歩ぐらいで移動できるだろう。スッ―スッ―スッ―スッ―
スッ―――と滑らかな感じで重心移動ができるように、2~3往復繰り返せばだいたい体得でき
る。
4、次に中段の構えをとらせて、そのままの姿勢で送り足での前進を行わせる。
・剣先をフラフラさせないでできるか、上体が揺れないかなど、中段の構えをとらせたまま送り足
を行わせると、さらに安定感のある、なしがわかるだろう。
・これも2往復程行わせる。
(3)三挙動の面打ち(前時)の復習 (5分)
・隊形を元に戻し、対面形式で前時の復習をおこなう。
(4)二挙動の面打ち (5分)
1、これは三挙動の面打ちの号令1(イチ)・2(ニィ)を、1(イチ)の号令で一気に行ってし
まうものである。つまり振り上げ、振り下ろしを1(イチ)で一気に行うもので、(3)がで
きておれば難しいものではない。
2、2(ニィ)の号令で中段の構えに戻す。中段の構えのポイントを再確認させる。
・振りかぶり~振り下ろしの動作が速くなるわけであるが、力まず、軽いタッチで、しかしながら
大きな動作で行うよう注意する。
・10本ぐらいずつ2セットぐらいでよい。
(5)一挙動の面打ち (10分)
・本時の中心課題の一つであり、剣道では最もポピュラーに行われる竹刀振り動作である。
・足捌きは(3)(4)と同じ。一歩前進・一歩後退のままであるが、前進時に面打ち1回、後退時
に面打ち1回を行う。
これまでの中段の構えにもどる動作を省いたものである。
1、二人一組で対面。一人は元立ちとして、頭上に竹刀を横向きにして持つ。
2、号令1(イチ)で、打込む方は中段の構えから一歩前進して面打ち。面の位置でピシッときめる。
3、号令2(ニッ)で後足から一歩後退しながら竹刀を振りかぶり、すぐに面打ち。面の位置でピシ
ッときめる。
・はじめはゆっくり号令をかける。
・頭上に竹刀をかざして横持ちしている元立ちも、相手の前進・後退にあわせて後退・前進の足さば
きで動くこと。元立ちがジッと立っていては間合いが詰まりすぎたり離れすぎたりして相手の打ち
ができないことになる。
・元立ちは、はじめの1(イチ)の号令時にはその場で打たせ、相手がさがるのに合わせて前進し、
出てくるのに合わせて後退の足捌きを行うことになる。
・リズムとしてイチ・ピシッ(竹刀の当たる音)・ニッ・ピシッ・サン・ピシッという感じなり、は
じめはゆっくり、次第に号令のスピードを速めていく。
・中段の構えには戻らないので、打つ方の両腕は常に肩より上にある状態となる。
・さがりながら打った時に、左足踵が床面に着かず、常に浮いた状態であるかを確認する。
4、10~15本で交代させる。2~3セット程度行えばだいたいいけるものである。
(6)跳躍正面打ち (10分)
この運動は、どこの剣道部員でも練習前や試合前に素振り形式で必ず行っている運動である。前後の
跳躍をしながら正面打ちを繰り返し行う動作であるが、足さばきが特徴的であり、この飛び跳ねる足
さばきは、二段打ち、三段打ちへ連続して技をつなぐ場合の足さばきとして、後々重要な要素となっ
てくることを認識させて取り組ませる必要がある。
1、全員正面を向かせて竹刀を背部(腰部)で横に保持し、ステップのみ踏む練習。
①まず歩くように右足から一歩踏み出し、その右足の踵付近へ、左足の踵を浮かせたまま、上足底で
床をトンと軽くたたくように付けてくる。(フォークダンスのオクラホマミキサーでパートナーと
向かい合って片手を取り合い、互いに一歩踏み出して寄り合う動作と同じ。
②次に付けた左足からすぐに後方へ一歩下がり(この時、左足踵は浮かせたまま)、右足踵部分が左
足のつま先位置にくるぐらいに軽くトンと寄せてくる。
③連続して①②を行う。足の動作は 右足→左足で前進し、左足→右足で後退というようになる。こ
の時床を踏む動作で、多少「音」を出させて、トントン(前進)・トントン(後退)という調子を
とらせる。これは前で2回の足音、後ろで2回の足音を確認させるためである。
2、次にこの動作を跳躍しながら行ってみる。
①「ジャンプするように-----」というと、縄跳びのように両足を揃えたまま前後に跳ぶ者がでてくる
ので、あくまで前述した動作要領で前後に跳ぶことを確認させる。
②歩く動作での床を踏む感覚(トントン・トントン)がト・トン(前)→ト・トン(後)→ト・トン
(前)→ト・トン(後)-----というように、リズムが短くなるが、必ず前で2回、後ろで2回 足
を踏むことを確認していく。
③連続10回程度跳躍させてみる。リズムにのるにつれて、両足の踵は床に着くことなく、親指の付け
根で両足とも跳躍している意識を持つこと。
④大体出来上がってくれば、次に、列毎(2列毎)でステップが踏めているか、10本程度ずつやらせ
てみるのもよい。各個人の動きがよくわかる。
●陥りやすい欠点として
1:足を前後に開いたまま、前足は前だけ、後足は後ろだけしか床を踏まないものがでてくる。(私は、
「駕籠屋スタイル」と呼んでいる。)必ず前足のすぐ後ろに----実際には右足の左斜め後方に-----後ろ
足を踏まないと、連続打ちになった場合には後足が残ってしまって、引きずる状態になることを
認識させる。前で2回、後ろで2回、床を踏む音を確認させる。
2:前に出た時、後足は前に送られてくるが、床に足をつけないで浮かせたままのもの(右足の内踝
近くに浮かしたままで、後ろへ引き戻すもの)がでてくる。これについても、前で2回足音がして
いるかを確認させる。)
3、このステップに竹刀の振り(正面打ちの動作)を加える
①2人1組で向かい合い、1人は元立ちで竹刀を頭上に横に持って構える。
・素振りとしてやらせてもよいが、初めから物を打つことのなかで、手首の締めや、打ちの感覚を養
わせた方がよいと考える。また、はじめに素振りとしてやらせると、面の位置で腕を伸ばした打ち
にならず、竹刀が胸あるいは腹部あたりにまで下がった状態のまま素振りするものが出てくるので、
一人は元立ちとして竹刀を頭上に構えさせて、打たせるのがよい。
②横にセットされた相手の竹刀を面の位置として、その竹刀の上に自分の竹刀のもの打ち部を置き、
面に当たった体勢をとる。この時、足は前方にステップした要領でストップさせておく。肩の高さ
で右腕が水平位置となる。
③次に後方へステップしながら竹刀を上げる動作をおこなう。
④この②③のくり返し。前へ出ながら打ち、後方へ下がりながら上げ、の繰り返しを各自5~6本やっ
てみる。
⑤次に全体で号令をかけながらやってみる。はじめに示範できればさらにわかりやすい。
1)1歩踏み込めば面に当たる位置で、中段に構える。
2)「用意」の合図でそのまま竹刀を上げ振りかぶる。
3)「イチッ」の号令で前に出て「ポン」と面(竹刀)にあてる。
4)「ニッ」の号令で後ろにさがり、竹刀を振り上げる。
5)「サン」の号令で再び前に出て「ポン」と面にあてる。
--------という繰り返しで、10本程やらせてみる。
リズムとしては「イチッ」ポン・「ニー」ポン・「サン」ポン・「シー」ポンというように、教
師の号令のすぐ後に、竹刀の鳴る音が聞こえるのがよい。はじめはかなりゆっくりしたテンポで
はじめ、徐々にスピードアップをはかる。
6)時間の余裕があれば列ごとに完成度を点検する。
(7)整列、正座、本日の授業の整理。礼をして終了する。(3分)
第4限 ①踏み込み足の練習 ②打込み棒を使っての正面打ち
(1)整列、正座、礼、出欠点呼、竹刀点検、準備運動 (10分)
(2)前時の復習①--一挙動の面打ち、及び跳躍正面打ち (5分)
(3)前時の復習②--すり足(送り足)-隊列を全員後ろへ下げ、横一列毎に2往復程行う。
(4)送り足から一歩踏み込む練習 (7~8分)
1、竹刀を腰に取らせる。【図9】
2、送り足で軽く3歩前へ ツ―ツ―ツ― と出た後、4歩目に右膝を軽く上げさせ(太腿が床に水平に
なるところまで上げる)左足で床を蹴り重心を前方へ運んで、右足裏全体で床を踏むようにトン―
とおろしてくる。
3、踏み込んだ右足に、床をけった左足をすぐ後方につけて、再び送り足でツ―ツ―ツ―と前へ進ませ
る。リズムとしてはツ―ツ―ツ―トン―・ツ―ツ―ツ―という感じである。
4、2~3往復行わせ、動いている中で踏み込む感覚をつかませる。
※ポイントとして
・上体をリラックスして、ごく自然な感じで踏み込ませる(力みのないこと。)
・足を高く上げすぎて、踏み込んだ時に首を振ってリズムをとるような生徒がでてくるが、あくまで
頭の位置は動かさず、土台の下半身だけが動いている感覚をつかむ。
・目線を常に水平位置に置いておくことも大切である。
・足裏全体で踏み込まないと十分な踏み込みはできない。実際につま先だけあるいは踵だけで踏み込
ませてみればわかる。
・床をける足(後足=左足)は前足(右足)が踏み込まれた後、すぐに引きつけられる動作でなけれ
ばならない。そうでなければ、次の攻撃(二次攻撃)に繋がらないことを理解させる。
・床をける(押し出す)瞬間に、左足つま先が左方向へ向いていて【図10】足を開くようにけるもの
がでてくる。これでは前方への力が正確に伝わらないこと。踏み込んだ足の引きつけが遅れるので
次の動きも遅れることを理解させる。あまりにも角度を広く開いてけるものには、左膝を少し内側
へ絞ってみること(膝を外へ開かぬこと)。アキレス腱の位置を常に自分の裏側として意識するこ
となどの注意をあたえる。
・ツ―ツ―ツ―トン―・ツ―ツ―ツ―の流れができれば、ツ―ツ―ツ―トン―・ツ―ツ―ツ―トンと2
回連続で踏み込ませる。公立学校の規格道場の広さからすれば、2回やるのが精一杯の距離かと思わ
れる。
(5)打込み棒を使っての正面打ち (20~25分)
*いよいよ剣道本来の打込み動作の練習となる。ここでは打込み棒を使用しての練習を行う。打込み棒
は各縦列に2本分用意できればよい。ない場合は竹刀を代用する。
※打込み棒は体育用品として購入することもできるが高価なので、古くなった竹刀を3分の2程度の長さ
(あるいは半分程度)に切り、うまく削って短い竹刀に拵えなおして用意しておく。規格道場で多人
数指導する場合は長い竹刀より短い打込み棒練習の方が、場所もうまく使えるし、軽いので、元立ち
もさばきやすい。
①各列の先頭の生徒に打込み棒を1本ずつ持たせる(自分の竹刀は道場の横へ置いておかせる。)打
込み棒をもつものを 「元立ち」と呼ぶ。
②元立ちになる者は、全員右手で打込み棒を下から持つようにする。自分の目の高さぐらいに
【図11】【図12】のように構えさせる。小指でしっかり握っていないと打たれた反動で手から離れ
ることがあるので注意する。
③打つ者は、号令に合わせて打込み棒を打つ。
【A段階】
1、1歩踏み込んだら打てる距離で中段に構える。
2、号令1(イチ)で中段の構えから竹刀を上に振りかぶる。
・この時、足の位置はそのままで動かさない。間合いを詰めるために、【図13】のように右足の
横へ左足をスッと寄せてくるものがいるがこれは間違いとされる。剣道は瞬時の間合いの勝負
となるので、振り上げながらフワ―と寄せるのではなく、あくまで一歩で踏み込める間合いに
瞬時に詰めることが要求される。
3、号令2(二ィ)で(4)で行ったトンの踏み込みで前の打込み棒を打つ。
※ポイント
・竹刀のあたる音と足の踏み込んだ音は同時であること。(実際の試合など、上級者では踏み込む
前に当たっているケースが多いが、基本的には竹刀のあたる音と踏み込んだ足音は同時として指
導されている。上達してくればこのわずかなズレは顕著に現れるようだ。)
・打った時に肩の高さで右腕は水平になっていること。肘は軽く伸ばされていて、伸びのある打ち
がなさているかを確認する。
・面(打込み棒)をうった後は、トン(踏み込んだ音)ツ―ツ―ツ―というように必ず送り足で前
進していくこと。その時、打った高さ(面の高さ)で竹刀を止めた状態で前進するようにする。
(残心あるいは打ちに余韻を残すことの解説も入れて進める。)
・実戦的には、この竹刀の振りかぶり動作はスピードが増すにしたがいなくなってくるが、ここで
は基本打ちの習得ということで大きな動作で行わせる。
4、上記のようなポイント説明を加えながら、また元立ちを交代しながらも4~6回程行えばできて
くると思われる。
【B段階】(笛の合図による一挙動での正面うち)
・この段階が出来上がってくれば剣道の5割は完了したように思うので、ジックリと行う。
1、一歩踏込めば打てる距離で中段に構える。
2、笛の合図により、A段階の竹刀の振りかぶり~打込み~送り足での前進動作までを一気に行う。
3、打込み棒を打つと同時に「メーン」の発声を行う。
4、元立ちを適宜交代しながら、時間内で納得いくまで行う。
※ポイント
・竹刀の振りかぶり~振り下ろしまでを、ササッという感じでスピーディーに行うよにする。
・スピードを出そうとして肩に力が入り、打つ時に下方へ叩きつけるものがでてくるので、あくまで
リラックスした状態での素早い振りを目指す。
・打つ時に打込み棒を押し切るようなつもりで、竹刀の打点(中結の少し前方の位置)が【図14】の
矢印ラインを動くようなつもりで打ち伸ばす。
・元立ちの持っている打込み棒が下方へ叩きつけられるのではなく、【図14】の-----→線の方向へ心
地よくはじかれる感覚の打ちを目指す。
・肩の高さで右腕が水平になる位置で打込み棒にあたること。左腕の肘、脇がつりあがってしまわな
いことも、これまで同様注意しておく。
【C段階】(同じ要領で「小手打ち」を行う。
1、元立ちは打込み棒を自分の鳩尾(ミゾオチ)の高さで横に構える。(股関節ぐらいの高さでは
低いので、臍の位置より少し高い位置を指示する。
2、笛の合図で、「コテッー」の発声で踏み込む。
3、小手の高さで竹刀を止めたまま)(ほぼ中段の構えに同じ)、送り足で前進し前に抜けていく。
4、元立ちを適宜交代する。
※ポイントとして
・小手打ちは打つポイントが低い位置だが、竹刀の振りかぶりはほぼ面を打つときと同じくらいの
振りかぶりでやらせる。小さい振りかぶりだと、上から押さえ込むような打ちになるものが出て
くるので注意する。
・目標が低い部位にあるので、打つ瞬間に上体が前傾するものがでてくる。いわゆるお辞儀をする
ような調子にならぬよう、上体はあくまでも揺れない打ちを目指す。
・小手を打った後、竹刀の先が下方へ下がったままにならぬよう、打った反動で中段の構えに戻す
気持ちで行う。剣を下げたままだと、打ちの余韻が残らない。
・基本的には面打ちと全く同じ要領でやらせる。
・小手打ちは面打ちの習熟度をみて、面打ちがほぼできてくればやらせればよい。
(5)整列、正座、本日の授業の整理。礼をして終了する。(3分)
・第5限 打込み棒を使っての連続打ち
(1)整列、正座、礼、出欠点呼、竹刀点検 (3分)
(2)準備運動(正面素振り、跳躍正面素振りを含めて) (5~8分)
・準備運動時に本時練習(7)のA練習(コックを効かせる練習)を入れてもよい。
(3)踏込み足の練習(前時(4)の復習)を2往復ほど行う(3分)
(4)打込み棒を使っての正面打ち、小手打ち(前時(5)B・Cの復習) (5分)
(5)打込み棒を使っての小手及び面打ち(余裕があれば、面及び面打ちまで)(10分)
1、元立ちを2人だし、1人に1本ずつ打込み棒(竹刀でも可)を持たせる。
2、2人の元立ちの距離【図15のA----B間の距離】を約3mほどあけて縦並びでセットする。
3、Aは小手の高さ、Bは面の高さに打込み棒をセットさせる。
4、打ち込む者は、笛の合図で Aの位置で「コテッー」ツ―ツ―ツ―(送り足)Bの位置で「メーン」ツ―ツ―ツ
―と進む。
※ポイント
・元立ちA---B間の距離が狭いと大変やりにくいので、常に3mぐらいの距離を保たせる。
・往復して行う時、復路ではBは小手の高さ、Aは面の高さに打込み棒をセットする。打込み棒を持つ
手は右手に限定して、元立ちの向きを揃えておかないとやりずらい。
・小手打ちでの竹刀の振りかぶりが小さくならないこと。小手を打った後の反動ですぐに中段の構え
に戻してツ―ツ―ツ―と送り足で前進し、面打ちへつなげる。元立ち2人の距離のとり方や、打ち
込もうとする者の前進スピードの具合により、ツ―ツ―ぐらいにしか行けない時もありうる。
・はじめの小手打ちはすぐに打ち込めるが、送り足をしながら次の面打ちのためにどこで竹刀の振り
かぶりはじまるのか。また面打ちの為に距離が詰りすぎて、伸びのある打込みができてないのでは
ないか-------等がこの練習の課題となる。竹刀の物打ち部で小手打ちも、面打ちも打っているかどう
かについても意識する必要がある。
・4往復も練習すれば、大体様になってくる。
・竹刀の鳴る音と、足の踏み込む音が合わせて聞こえること。
・はじめの小手打ちを面打ちに代えて、「メーン」ツ―ツ―ツ―「メーン」ツ―ツ―ツ―としても要
領は同じである。ただし、この「面および面打ち」の時、元立ちAは面の高さで打込み棒を打たせた
後、打った者が送り足で前を通り抜けてから、打込み棒を元の高さに戻すようにしないと(すぐに
もどしてしまうと)進路を妨害するおそれがあるので注意する。
・元立ち2人を適宜交代させる。(だいたい2往復程度で交代させるのが適当。)
打込み棒を使用している時は、元立ちの竹刀は後方へ立てかけておくなどして、打込み棒だけを持
たせる
のがよい。
(6)大きく振りかぶった小手・面の連続打ち (10分)
1、元立ちは同じく2人。A・Bの距離を竹刀1本分程度(1.5m程度)に狭める。
2、Aは小手、Bは面の高さとする。
3、打ち込む者は1歩踏み込めばあたる距離に中段に構える。
4、笛の合図で「コテッ・メーン」ツツ―と出る。
※ポイント
・大きく振りかぶって1歩踏み込んで小手を打ち、その反動ですぐ竹刀を振りかぶり面に出る練習
である。
・足の動きは大きくタン・タ―ンというようになる。この段階ではスピードは要求せず、大きく
タン(コ テッ)・タ―ン(メーン)と出ていく感じである。
・腕の振りも大きく振らせ、足の裏全体でタン・タ―ンと踏み込んでいく。
・はじめのタン(コテッ)ですぐ左足を右足の側へ寄せてこないと、次のタ―ン(メーン)がでない
ので注意する。この段階で面を打った後、左足を引きずるように出ていく者がでてくるので、すぐ
に左足を寄せてくることを意識させる。
・面を打った後は、面の高さに竹刀を置いたまま送り足で前進し、打ちに余韻を残す。
・応用として、「メン・メ―ン」の連続打ちをさせてもよいし、また打込み棒の本数が満たされれば
(竹刀を打込み棒に代用して)、小手・面・面の三段連続打ちを大きく行わせてもよい。
・この段階ではあくまで大きな振りかぶり動作による正確な打ち、伸びのある打ち、手足のバランス
(寄せ足の意識、踏込みの足音と打ちの一致)、力まない打ち、などを習得させるのが目的となる。
・元立ちを交代しながら、4往復も練習すればだいたい様になってくるものである。
・時間の余裕があれば(5)(6)を徹底して行い、次の(7)の課題を次時間へまわしてもよい。
(7)振りかぶりの小さい、素早い小手・面の連続打ち (10分)
・この課題は生徒が最も好んで行う練習であり、また剣道部員でさえ手足のあわない者が
でてくることもあり、比較的難しい部類の課題である。
【A段階】(手首だけで竹刀を振る練習-------「コックを効かせる」と表現されている。
1、中段に構えたまま、振りかぶり動作を入れないで、手首だけで剣先を上下に50cmほど素早く動
かす練習をする。これを「コックを効かせる」というように表現される。
2、竹刀を親指・人指し指で握っていると肩に力が入って上体が揺れてしまうので、あくまで小指
で握っていること。上体、肩を揺らすことなく、肘から前の前腕部分だけの動作で行う気持ち
で振る。準備運動として20本程度やらせるのもよい。
【B段階】(手首の振りに、その場で右足の踏み込みだけあわせる動作)
1、中段の構えから、コックを効かせた振りで、小手・面に振る練習を行う。
(コテ・メン、コテ・メン、コテ・メン-------と、途切れないリズムで数回振る。
2、そのコテ・メンの手の振りに、右足だけをトン・トンと合わせて踏む練習をする。打ちと、
足の踏み込みをあわせる練習である。この時、左足はそのまま動かさずにいて、右足上足底
部分で、軽くトン・トンと調子をとらせればよい。これも数回練習する程度でよい。
3、次にその場で、はじめのトンで右足を踏んだら、すぐに左足を右足後ろにつけて、次のトンで
はその左足のけりを効かせて踏み込む練習をする。(先ほどの2では右足だけ動かしたが、こ
こでは左足も運ぶ練習が中心となる。)
・リズムとしては( トン ・ トン ・ト―――ン )
( はじめの右足・寄せた左足・次 の 右 足 )
( 「コテッ」--------------------「メ―――ン 」 )というリズム感。
・前方へ大きく移動させず、ほとんどその場で軽く行わせればよい。
・このトン・トン・ト―――ンの足音が、1秒内で行われるようでなければ連続打ちの意味
がなくなってくる。
このA・B段階は準備運動の部分で行わせるのもよいと考える。
【C段階】(打込み棒を使っての小手・面の素早い二段打ち)
1、元立ちを2人から1人にし、1人で2本の打込み棒を持たせる。(この段階では、元立ちに長い竹刀
2本を持たせるのは少々つらいものがあり、どうしても短い打込み棒が必要となる。)
2、左手で小手の高さに、右手で面の高さに構えさせる。肩の高さで真っ直ぐ両手を伸ばした状態から、
右手を10cm上げ、左手を15cm下げたぐらいの位置で、両手幅を肩幅の1.5倍ぐらいに広げたぐ
らいにセットさせる。【図16】小手の高さの左手が下方へ下がる傾向があるので注意する。
3、打つ方は1歩踏み込めば小手にあたる位置に中段に構え、笛の合図で「コテ・メ―ン」と発声して
打ち込んでいく。
※ポイント
・手首だけを動かすようにしてまず小手を打ち、その反動で軽く上がった竹刀をそのまま前に押し伸
ばすようにして面に出て行く。
・足捌きはB段階で練習した「トン・トン・ト―――ン」(右・左・右足)という3つの音が聞こえ
てこなければならない。この時、はじめの右足の「トン」は足裏全体で踏むというより、跳躍正面
打ちの足捌きを使う。つまり、上足底だけで跳んでいる(踏んでいる)感じ----猫が床をひっかいて
いる感じで、親指の付け根で床をはたいている感覚でよいかと思う。
・右足を踏んだ直後のすばやい左足の寄せがない場合は、次の面打ちはのびのびしたものにならない。
左足を後ろへ残さないこと。左膝をわずかに内側に絞っておくようにすることで床をまっすぐける
ことができる。
① 足の音 トン・トン・ト―――ン
② 発 声 コテッ ・メ―――ン
③ 竹刀の音 タッ ・タ―――ン この3つが揃わねばならない。
・元立ちは打込み棒をうまく捌き、打って出てくる者の進路妨害をしないこと。また往復で行わせる
場合は、元立ちの向きはそのままで、右手を小手の高さ、左手を面の高さにセットさせればよい。
・この二段打ちはあとあと大切になってくる練習なので、納得のいくまで行わせる。
(8)整列、正座、本日の授業の整理。礼をして終了する。(3分)
【図15】
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【図16】
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神戸市 北区