第5限目 |
・スクラムの練習 (ポジションの役割、スクラムの組み方、 ボールイン~フッキングまで) ・〔チームづくり=ポジション決め :2パターンのチームポジション〕 |
*今回の授業は「スクラム」の組み方、フッキング等が中心で、あまり大きく体を動かすことのない
授業である。これまでの授業進行で、雨天時になった場合に、柔道場などを利用してこの「スクラ
ム」の組み方について先行させても良いと思う。
*また「ラインアウト」についても同じように、柔剣道場などでも手順の確認などは可能である。
*また、この時間あたりから、チーム作りへの作業へと入る。
1)集合、点呼、準備運動---------------------(5分)
2)4~5名でのランニングパスの復習(兼準備運動)--------------(5分)
3)スクラム(Scrummage)についての簡単な説明----------------(5分)
*どのような場合にスクラムになるのか?
・ノックオン、スローフォアードなどの比較的軽い反則時にスクラムとなる。
・モールなどでボールが出ない時にもスクラムとなる。
・「整然としたモール」と考えてよい。
*スクラムの中では何が行われているか?
・競技の停止に責任のない側のSH(スクラムハーフ)が、スクラムのトンネル中央ラインへボー
ルを投入し、両チームのスクラム前列(フォアード)がボールを足で掻き取り(フックし)味方
へ送る動作が許される。
・授業では、当面、フックはボールを入れる側のフッカーのみが行うこととし、スクラムも組む
ことのみに重点を置いて、無理な押し合いはさせない方向で指導する。
4)SHのボール投入から~フッキングの練習-------------------------(7分)
①4人組を作り(人数が合わなければ3人組みでもよい)、各組ボールを1個キープする。
②(図 13)のようにA(元立ち)は左足を軽く前に出して、若干腰を落として踏ん張る。
(右足を前に出してもよいが、次にBが腰部へホールドの体勢で入るので、安定感を得る為には
左足前の方がよい。)
③Bは自分の右肩部をAの左腰部に密着(頭部はAの腹側へ)させ、図のように前傾姿勢を保って、
Aの腰部をホールドする。その際、できるだけ自分の胸が真下を向くようにして、左足のみで体を
支え、右足を浮かすことができるか確かめる。
④・Bの姿勢が安定したのを確認して、CはABから約1~1.5m離れた地点(本来はSHはスクラ
ムから1m離れる)から、Bの首の真下の地点を通過するようにボールを転がし入れる。
・その際、「ボールイン」の発声をしてから投入する。またCが投入する際のボールの持ち方は、
両手でボールの尖っている部分を持ち、地面を転がすように入れる。(実際にはSHはボール投
入の際、うまく回転をコントロールして、フッカーがフックしやすいような投入をしているが、
授業ではそこまで要求しない。
⑤Bは「ボールイン」の声が 聞こえると同時に、右足を浮かし、前方にボールを蹴ってしまわぬよ
うに注意して、右足裏でボールをフックして後方へボールを送る。
(ボールが投入される前に足を上げて待つ行為は反則とされるが、授業ではそれほど厳密にはとらな
い。)
⑥Bの後方でDは待ち受け、フックされたボールを拾い上げ、Cへ戻す。
⑦この動作(ボール投入~フックボールの拾い上げ)のパターンを1人当たり3回ずつ、ポジションを
ローテーションして交代しながら繰り返し練習する。
⑧SHは本来、ボール投入~フックされたボールの拾い上げまでを1人で行うが、ここでは後方のD
が拾う形で、フック練習を効率よく行わせる。
(3人組のところは、Cがボールを投入して後、すぐにBの後方へ回って拾い上げる。)
⑨一通りローテーションして実施し終えたら次へすすむ。
5)スクラムの組み方の説明と実践
・授業の講座人数により、何人のチーム編成をするかによって、フォワードの人数も違ってくるが、
ここでは5人でのスクラムを基本として組ませる。
第1段階 (フロントロー3名とSH1名での練習)--------------------(10分)
①先ほどの4人組で、スクラム前列(第1列=ファーストロー)の役割としての、左プロップ、フッカ
ー、右プロップの役割とSH(スクラムハーフ)の役を決めさせる。
②2チームを対面させ、各チームのフッカーは、両サイドののプロップの肩越しに腕を回し、オーバ
ーグリップで両脇をバインドする。(バインドをしっかりしていないと、フッカーは右足を浮かせ
るので、その時に体勢が非常に不安定になることを理解させる。)(図 14)
③対面したチームで、両サイドのプロップが前に片手を伸ばして届く程度の距離まで近付き、膝を若
干曲げて腰を落とす。(この時、腰を入れて出尻にし、胸を張って、上目遣いで相手を見て、首を
起こすような姿勢をとっておく=この姿勢が、首や背腰を痛めない為の姿勢であることを理解させ
る。)(図 15)
④ボールを投入する側のSH(スクラムハーフ)役の生徒は、自分のチームの左プロップ側で、
トンネルから1m離れた中央の位置に居り、両チームのスクラムを組む体勢が整ったら、
「セット・イン」の発声を行う。発声と同時に、両チームの3人は対面している相手の左側
(相手の右肩下へ)、上目使いのまま、頭部を差し入れ、スクラムを組む。(はじめてスクラム
を組めば、その重圧や痛み、力のかけ具合のアンバランスから、全体の安定感がないと感じられ
るが、しっかりバインドして、頭部をまっすぐに差し入れ、膝を曲げて腰を落とし、軽いプッシ
ュ感を味わいながら、相手の肩を押している感覚をつかむ。(ここでは無理強引な押し込みは禁
止とする。)さらに、両チームの右プロップは、自分の前の相手の肩口~脇あたりをつかんでバ
インドする。(バインドしていないと実際は反則:PKがとられる。)左プロップは、自分の膝
上に手を置かせておいてもよい。(バインドができるようならそうさせればよい。)(図 16)
※なお、「セット・イン」の合図の掛け声については、ゲームで審判が指示している場合や、別の
言葉で合図を送る場合などもあるようだが、授業ではSHの「セット・イン」の声で組み入るよ
うに統一した。
⑤スクラムが安定したら、SHは先ほど練習した通りに、「ボール・イン」の発声から、ボールを
投入し、味方フッカーは投入されたボールをフックして後方へ優しく送る。その際、ボールが通
る軌道は、左プロップの足の間を通す為、左プロップは自分の右足をフッカーの左足(軸足)と
重なるぐらいに開き気味で踏ん張る必要がある。(図 16)
⑥SHはボール投入後、すぐフックされたボールを拾い上げにいく必要があるので、ボーと見ていて
はダメ で、ボール投入~拾い上げに行く動きを連続させる必要がある。
この時、本来なら相手SHがスクラムからボールが出てきた時点でボールを奪いに来るため、あく
までボールを体の内側でカバーしながら拾いに行くという姿勢が必要であり、そのように練習させ
る。
⑦相手側のSH は、本来ボール投入側SHの側にいて(オフサイドラインが関係してくるので、ボール
の位置より前方へ出ることは許されないが)、スクラムからボールが出てくればアタックがかけら
れる(ボールを奪いに行ける)ので、その位置取りについても学習させる必要がある。ただし、こ
こではスクラムの組み方とフックを学習の中心にしているので、自分のチーム側(左プロップの側)
から、相手チームのSHと同時に「セットイン~ボールイン~フック~拾い上げ」を練習させれば、
効率よく練習できる。
※なお、本来のボールインについては、SHが発声してから投入すれば、相手チームにそのタイミング
が分かってしまう為、実際にはSHがフッカーの背中等をボールでポンと叩くようにして合図してか
ら投入している。(そのようにさせてもよい。)
⑧「ボール投入~フック」の練習を連続で2~3回ほど行ったら、ポジションをローテーションしなが
ら、上記の練習を繰り返し、どのポジションが自分にしっくりきて、やりやすいか、また上手くい
くかなどを確認させながら練習する。
第2段階 (さらにセカンドロー2名を加えての練習)---------------(7~8分)
・次の段階として、チームを一部解体し、1チーム6名として、その内の5名でスクラムを組ませる。
(一組12名のグループとなる。講座人数によりうまく分散できない場合もあるかと思うが、人数調整
は11名~14名ぐらいで臨機応変に行う。)
・はじめてのスクラム練習で、この段階の「押さないスクラム」でも生徒の首や肩が痛くなってきて、
スクラムを組むことに苦痛を訴える生徒も出てくるだろう。
①第1段階の組み方に、各チーム2名のロックを加えてのスクラムになる。
・講座人数により、最終的に何人のチーム編成をするかにもよるが、生徒が「ラグビーを経験した」と
いう充足感を得るには、5名のフォワードという形でスクラムを組ませ、また次に出てくるラインア
ウトの構成にも4~5名のフォワードは欲しいところである。
・ロック本来の役割としては、フロントローを後方から力強くサポートし、スクラムの前方への威力を
増すようにプッシュを仕掛けていくのであるが、授業に於いて、あまり強い押し込みを要求しない段
階に於いては、スクラムからの玉出しスピードの調整を主な役目として練習する。
・本来のスクラムの組み方として、左ロックは自分の左手を左プロップの股間から差し入れ、左プロッ
プの上着(ジャージ)の腹部分をしっかり掴むようにしてバインドし、頭部を左プロップとフッカー
の尻の間へ挟み込むように差し入れ、自分の肩を両者の臀部に当て、右手は右ロックの腰へまわして
バインドを強めるようにする。
・右ロックは上記の逆の体勢となる。
・ただし、ここでは強い押し込みを要求していないので、あくまでスクラムの安定とフックされたボー
ルのコントロールを主課題として行う為、プロップの股間へ手を入れてジャージを掴むことは控えさ
せる。(学校指定の体操服は、掴んだり引っ張ったりすると伸びてしまう可能性もあり、生徒同士が
そのことで口論になる場合もあったので)外側の手も、プロップの腰へバインドさせるのがよい。
②フッカーによりフックされたボールを後方へ送る手立てとして、
*チャンネル1(ダイレクトに球出し)
=左プロップの足の間をストレートで通過させる。
*チャンネル2(ダイレクトに球を出すか、またはキープする)
=左ロックのところで一旦ボールをキープし、SHの合図などでタイミングを見計らってボー
ルを後方へ送り出す。
などが考えられる。(図 17)
・チャンネル1、チャンネル2の区別については、SHがボール投入前に言葉で指示するか、各チー
ムの合図(サイン)などを決めておいて、フッカーのボールフックの方向を安定させる練習をす
ることが必要である。(SHのボールイン前の、例えば「ダイレクト」の声でチャンネル1、また
「キープ」の声でチャンネル2へ送球する などの練習を何度か行わせる。)
・さらにレベルが進んでくれば、4~5人のスクラムであっても、左ロックにナンバー8の役割を持た
せ、スクラム内でボールが自分の肩のラインを越えて後方に運ばれた時点で、ボールをピックアッ
プできるなどの役割追加をしていっても良い。右ロックも作戦に合わせて、ボール通過位置に合わ
せた自分の足位置を研究させる。
・ロック役の生徒の中には、フロントローの尻の間へ自分の頭を入れることを嫌う者も出てくる。
耳が挟まれて痛いのと、強く押さないなら入れても仕方ないとする理由からであるが、頭を上げた
まま手だけをフロントローの腰に置いたり、頭をはずして片方の肩だけで押してみたり----という
横着をする者が時々出てくるので、スクラムの安定と、ボールコントロールの為にもしっかり組ん
でいくことを初期段階から指導しておく必要がある。
・ゲームでいい加減な組み方をしていれば反則をとるようなルール設定をしてもよい。
③各ポジションをローテーションしながら、SH役の声のリードにより、「セットイン」~「ボールイン」
~フッキング~「(ボールが)出た」=ボールの拾い上げ、を繰り返す。
・第1段階と同様に、ここではスクラムの組み方とフックを学習の中心にしているので、自分のチーム
側(左プロップ側)から、相手チームのSHも同時に「セットイン~ボールイン~フック~拾い上げ」
を練習させれば効率よく練習できる。
●時間の余裕がある時、状況に合わせ、以下の内容をピックアップして実施しても良い。
次時からの授業展開を考えるなら、チーム作り(ポジション決め)を優先させる。
第3段階 (a:チームポジション決め/b:フッキング合戦/c:フォワードの動き)
a:チームポジション決め
・雨天授業などで時間の余裕があるなら、次時への先取りとして、チーム作り(ポジション決め)の
時間をとってもよい。〔チーム編成については第6限目を参照〕
b:フッキング合戦
・ボールインに合わせて、相手チームのフッカーもボールフックしてよいこととして球出し練習を行う。
・相手フッカーは右足外側を使い、右プロップの足の間へ掻きだして送るように試みる。
※この初級ラグビーのゲームではスクラムの組み方も安定していないので、相手方のフックについては
禁止とした。スクラムが安定してくれば、フッキング合戦もフォワード戦の面白さを増すものであろ
う。
c:フォワードの動き(次時への展開への先取りとして行う。)
・スクラムを組んでいるフォワードのメンバーは、投入されたボールの行方を目で追うのが原則では
あるが、スクラムからボールが出て、次のゲーム展開が右へ展開していくのか、左へ展開していく
のかは分からない。
・ゆえに、SHはスクラムからボールが出たら、「出た!右」というように声を発し、次の展開方向を
指示していく。
・その声に合わせて、スクラムを解き、すぐに右なら右方向へフォローできる態勢へ入っていく練習
を行う。
・SHの指示の出し方が重要になるので、SHポジションの適性をみる練習にもなる。
6)集合、本時の反省、整理運動など------------(5分)
第6限目 |
・チーム作り (ポジション決め:2パターンのチームポジション) ・実戦的モール形成~バックスへの展開 ~2回目のモール形成~再びバックスへの展開・実戦的スクラム~バックスへの展開 ~モール形成~再びバックスへの展開 |
1)集合、点呼、準備運動----------(5分)
2)4~5名でランニングパスの復習(兼ウォームアップ)-------(5分)
3)チーム作り=ポジション決め---------(10分)
*いよいよチーム作りに入るが、一般的な15人ラグビーにおけるポジションについて、再度下記の
ようなプリント(もしくは掲示板)を準備し、簡単な説明を行う。
①ラグビーのポジションについての説明(4分)
●各ポジションの特徴(×印は現在のラグビーでは使われていない。)
(1・3)プロップ =スクラムの柱、パワフル
( 2 )フッカー =パワフル、フッキング+スローイング技術を持つ
(4・5)ロック =長身、重量級、パワフル
(6・7)フランカー =縦横無尽、タックルの強さ
( 8 )ナンバー8 =突進力、モール・ラックの核になる
( 9 )スクラムハーフ=俊敏、小柄でもOK
( 10 )スタンドオフ =司令塔、冷静、キック力
(11・14)ウィング =俊足、ステープワーク
(12・13)センター =ゲインラインの突破、タックルをはね返すパワー
( 15 )フルバック =守護神、走力、キック力
②チーム編成(ポジション決め)(5~7分)
・チーム人数を何人で設定し、どこのポジションへ配するかは講座の人数により考慮していかねば
ならない。生徒の人数が多ければ、審判のできる生徒(ラグビー部員など)の有無や、グランド
の広さなどにより、コート2面を使ったゲーム展開ができるか等も影響してくる。
・初級ラグビーとしては、正式な15人に近いものより、7人~11人あたりで編成する方がゲームとし
ては動きがあって面白い。ただスクラムやモール、ラインアウトなどの組織だった動きを展開する
には、9人~12人のチーム編成が授業では指導しやすいと思われる。
・以下、人数によりどのようなポジションで配したかを記した。あくまで例である。
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7人 |
8人 |
9人 |
10人 |
11人 |
12人 |
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① 左プロップ |
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② フッカー |
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③ 右プロップ |
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④ 左ロック |
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⑤ 右ロック |
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⑥⑦左右フランカー |
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⑧ ナンバー8 |
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⑨ スクラムハーフ |
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⑩ スタンドオフ |
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⑪⑭左右ウィング |
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⑫⑬左右センター |
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⑮ フルバック |
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・体格によりチーム差があまりでないように、身長順に並べるなど、均等割りしてチーム編成を行う。
・また、常に一定のポジションを保ってのゲームより、授業に於いては、フォワードとバックスの違
うポジションを経験させ、役割や作戦への関与の違いを理解させる意味からも、下記のような2パタ
ーンのポジションを用意させたりした。ただ、一度に2つのポジションを数分で考えさせるのには
無理があるので、何度かゲームを経験した後で、ポジションチェンジのミーティングを行わせるの
がよいと思われる。
・下記のポジション表は、これまでの授業の中で、最も少なかったクラス〔8人=2チーム〕のポジシ
ョン提出表であるが、スクラムやラインアウト、またコートのどの位置では、どのようなライン構
成を作っていくか----等の基本パターンを示しながら、各ポジションの動きを理解させようとしたも
のである。
4)実戦的モール形成~バックスへの展開
~2回目のモール形成~再びバックスへの展開
・取りあえずのチームポジションが決まったところで、フォワード/バックスの役割を理解しながらの
実戦的なモール形成~ライン構成の練習に入る。
・これまで行ってきた練習の合成であるので、そう難しいものではないが、自分の役割を如何に理解し
ながら動けるかがポイントとなる。
第1段階 (7~10分)
①グランドにあらかじめ(図 18)のような図を描いておく。(授業のはじめに描いておくか、説明し
ながら描いていくか、ポジションを決めさせる間に描いておくか。)
②A1のサークルにはAチームのフォワードを、B1のサークルにはBチームのフォワードを適当に散
らばせて配置する。 またA2のサークルにはAチームのバックスをB2のサークルにはBチームの
バックスを適当に散らばせて配置する。両チームはサークルの中にいる状態でセンターラインで向か
い合っている状況を作る。
③・指導者は、はじめはセンター位置にボールを持って立っているが、指導者が右方向へ動けば、Bチ
ーム全体は後方(右方向)へ下がり、それに合わせて、反対のAチーム全体は前方向(右方向)へ
出てくる。ただし、指導者のラインを越えて、相手チームの方向へ進み出てはいけないこととする。
・この左右への移動(右へ1~2m、左へ1~2mの移動)を指導者はボールを見せながら2~3度繰
り返す。指導者の左右への移動に合わせて、両チームは前進後退を繰り返すわけである。
④機を見て、指導者はどちらかのチームのフォワード―――例えばAチームのフォワードへボールを投
入する。
⑤・Aチームでボールをキャッチしたフォワードの誰かはすぐに「モール」の声を発し、ワインディン
グし(敵方に背を向け)、他のフォワードメンバーは両サイドへ状況を判断して入り、バインドし
てサポートする。(ワインディングせず、そのままボールをキャッチして、頭から敵陣へ突っ込ん
でいってもよいが、ここでは確実にチームでボールを確保しながらモールを形成していくという認
識の上で、敵方に背を向けてのモールを形成する。) 「モール」の声に合わせて、相手方フォワ
ードも遅れないようにモールに加わり、バインドを強固にして、モールを押し込まれないように対
抗して押し返していく。(実践モールの練習)
・これまで、相手をつけたモール練習をしてきてないので、ここで、力と力のぶつかり合いが起こる
が、無茶苦茶な押し込みについては禁止し、ボールキープをしているチームは安定したモール形成
により、状況をみながら次の攻撃の組み立てを考えさせる。
・また、オフサイドのルールを理解させるのにもよい機会である。―――「モールは横から入ること
はできない」「モールから一旦離れれば、すぐに退いて、再び参加する場合は後方からである」
「モールを故意に崩してはいけない」などの説明を加える。
⑥・さて、指導者のボール投入により、モールが形成されフォワードが密集している状況にあって、同
時にバックスの態勢を整えさせる。
・まず第1に、ボールを確保している側のSHは、モールのすぐ後方側にポジションをとり、チーム
がボールを確保したことをバックスに知らせる為「マイボー」(マイボール)と大声で叫ぶ。同時
に、バックスがライン攻撃できるように深めのラインを引かせる。その際、どのようにラインを引
くかについて―例えば「ライン左(右)、深く」と声を出して指示する。
・相手SHは、敵側にボール確保されたのを確認して、「ヤンボー」(相手方ボール=ユアボール)
と叫び、バックスへ「ライン右(左)、浅く」と声を出して指示を出し、バックスは指示通りにラ
インを引く。(図 19)
⑦・攻撃側SHは機を見て、モール内からボールを引き出し、「出た!」の大きな発声とともに、バッ
クス(SO)に玉出しを行い、バックスはパスをまわしながら前進展開する。
・防御側バックスは相手が出てくるのに合わせて防御(タックル)に入る態勢をとる。
⑧SHの「出た!」の声を合図に、フォワードはすぐにモールを崩し、バックスのパス展開のフォロー
に入っていく。このフォワードのフォローが、干満であると、次の展開が全くできないのでフォロー
意識については強調する。
※第1段階としては、モールの形成~SHによるボール出し~バックスへの展開で相手ディフェンス
と接触した瞬間にホイッスルを鳴らし、そこで中断させて、元の位置に戻す。
※指導者による玉出しを、左右のチームに交互に出しながら、上記の展開ができるまで3~4回行う。
第2段階 (7~10分)
・第1段階が、まずまず流れるようにできれば、さらに2次攻撃として、2回目のモール形成を作る
練習である。
①・バックスのパスによる前進展開で、相手ディフェンスに接触した時点で、ボールを持っているも
のは「モール」の声を発し、フォローしてくるフォワードにボールを渡す。フォワードはその地
点で2回目のモールを形成する。
・バックスの展開が横方向へ流れてしまうとフォワードのフォローが追いつかないので、バックス
はフォワードへ近づくようにしてパス展開する意識を持たせる。
・フォワードが追いつかなければ、バックスの接触地点で近くのメンバーでモールを組み、ボール
を上手く確保、手渡しなどしながら、フォワードが追いついてくれば、フォワードが強固なモー
ルを組みなおして、バックスはモールから離れる。フォワードには臨機応変にバインドに入り、
モールを強固にしていく意識を持たせる。
・なかなか思うように2次攻撃の為のモールが形成されないかもしれないが、約束練習でもあるので、
相手ディフェンス側には少し軽めにあたらせるようにする。
②・2回目のモールが形成された時点で、SHは先ほどと同じように、「マイボー」「ライン右(左)」
などの指示をバックスにだし、バックスはラインを整える。相手側SHも「ヤンボー、ライン左
(右)」などの指示を出させ自チームの態勢を整えさせる。
・攻撃態勢が整ったら、SHはモールからボールを引き出し、2次攻撃を展開させる。
③パスをまわして2次攻撃が前進展開され、相手ディフェンスと接触する時点でホイッスルを鳴らしプ
レーを中断する。
・第2段階は2回目のモールを上手く形成して、2次攻撃へつないでいく練習であるが、
・指導者による玉出しを、左右のチームに交互に出しながら、上記の展開ができるまで3~4回繰
り返す.
5)実戦的スクラム~バックスへの展開~モール形成~再びバックスへの展開(7~10分)
・第3段階は、スクラムからのボール出しではじめ、パス展開からモール形成し2次攻撃へ展開する
練習である。
①・これまでの、指導者によるボール出しをスクラムにかえて行う。
・スクラムについては:はじめは、オフェンス側のフックのみに限定(押し合いはしない)→ディ
フェンス側のフッキングも認める(フッキング合戦)→両者の多少の押し合いを認める、などの
段階を踏んで実施するのがよいと思われる。
・スクラムを組む前にSHはどちらへ(左か、右か)ラインを形成するかをバックスへ指示すること
を忘れないこと。
・SHの「セットイン」「ボールイン」~フッカーによるフッキング~SHのボール出し~バックス
への前進展開へつなげる。
・ボール投入前に、フッカーがダイレクトでボール出しをするのか、スクラム第2列でボールキープ
するのか(チャンネル1、チャンネル2)について、声かけをするか、また合図をするか(サイン
を決めさせておいてもよい)の指示を出させる。
・SHは自チームの左プロップ側からボールをトンネル中央へまっすぐ入れることを再確認させる。
本来はスクラムのトンネルから1mはなれる位置からのボール投入であるが、少々近づいても問題
なしとする。
・ディフェンス側のSHのポジションについても、攻撃側のSHの側にいてもよいが、ただしスクラ
ム内に入ったボールがスクラムから出るまでは、SHはボールの位置を越えて前に出ることはオフ
サイドの反則になることを理解させてポジションを取らせる。ボールがトンネルから出れば、相手
SHにアタックがかけられるわけであるが、時々、自分の位置を理解せずうろついている場合があ
るので注意を要する。
②・スクラムからボールが出れば、後は第2段階の練習と同じである。
・ただし第3段階では、プレーヤーの自由に任せて、少しゲームを展開させてみる。できるだけモー
ルを形成しての2次攻撃展開を行う意識は持たせつつ、ディフェンス側のタックルもある程度認め
ながらモール形成ができるか、できないか。
・また途中で起こる、ノックオンやスローフォワードについては、ホイッスルを鳴らして、相手ボー
ルスクラムで展開するなどしていく。
・ペナルティになるような反則(オフサイドや、危険なタックルなど)が発生すれば、その地点で反
則のあった側を10m下がらせ、攻撃側はチョン蹴り(手に持ったボールをチョンとけるようにし
て=正式には手に持ったボールを軽く放り上げてから軽く蹴りキャッチしてからのスタートとなる
が、ここではこだわらない。)によって前進し、モールを形成して次のライン攻撃へ展開させる。
③・どのあたりで、流れを中断させるかは指導者の裁量によるが、ここでの目的は、あくまでモール形
成~2次攻撃ができるかどうかであって、その間、SHの適切な指示がなされているか、スクラム
の正しい組み方ができているか、オフェンスとディフェンスによるバックスラインの引き方の違い
が確認できているか、モールのしっかりした組み方とボールキープのあり方など、注意と点検を繰
り返しながら、ゲーム構成力、ゲーム理解力をつけながら進める。
・中断させた後は、再び中央からのスクラムから開始する
・時間の許す限り、上記練習を繰り返す。
・チーム数が4チームある場合は、2チームずつの対戦を交互に展開させるなど工夫を加えて実施す
る必要がある。ラグビー経験者がおればよいが、いない場合は、交互に展開しながらも指導者1人
で4チームの動きを見て、指示をださないといけないので、多少労力がいるところである。
6)集合、本時の反省、整理運動など--------(5分)
第7限目 |
・6限目の復習(実戦モール形成(またはスクラム)~バックスへの展開~2回目のモール形成 ~再びバックスへの展開) ・ ラインアウトの練習(ラインアウトとは何か/ポジショニング/戦術) |
1)集合、点呼、準備運動----------------------(10分)
2)4~5名でのランニングパス---------------(5分)
3)①実戦的モール形成~バックスへの展開~2回目のモール形成~再びバックスへの展開
(7分)
・ウォームアップ終了後、チームポジションの確認、第6限目 4)の復習を行う。
・ポジションについてはA/Bの2パターンを決めているので、前回Aを中心に実施したのなら、
今回はBのポジションで行うなどして、役割の理解を深める。ポジションを変えると、生徒の
動きは鈍るので、(図 18)の図もグランドに準備できるなら、しておいたほうがよいと思わ
れる。
・動きのポイントを注意しながら、2~3回程度実施する。
②実戦的スクラム形成~バックスへの展開~2回目のモール形成~再びバックスへの展開
(10分)
・同じく第6限目 5)の復習練習である。
・前回と同じように、できるだけゲームに近づけるよう、時間的に少し長めのスタンスをとって、
スクラム~バックスへの展開~モール形成~2次攻撃ができてくるかを確かめる。
・SHの声出し・指示を出すタイミング、スクラムやモールでボール確保している場合とそうでな
い場合のバックスラインの引き方、フォワードのフォローの仕方など、細かい点を一つ一つ注意
していきながらすすめる。
・ゲームを作り上げる為のきわめて重要な練習である為、指導者側の目配り、気配りが要求される
ところである。
4)ラインアウト(Line out) の練習(20分)
①ラインアウトの説明(全体を集合させ、簡単にラインアウトの説明を行う)(5分)
・ボールまたはボールを持ったプレーヤーがタッチライン(サイドラインとはいわない)の外へ出
た場合〔=タッチ(Touch)という〕、その地点でラインアウト(サッカーでいうスローイン)
となる。
・ラインアウトについてはチームポジションを決める際に示すポジション票に、一応の概略図は示
してはいるが、(図 20)のような図を、不要になったカレンダーの裏紙か小黒板などに描き説
明を行う。
・タッチになった場合、正式には「クイックスロー」(=ボールがタッチラインを出た瞬間にキャ
ッチしてすばやく投げ入れる)というテクニックが許されているが、初級の授業では採用せず、
あくまで、その都度ラインを構成させた。
【図 20】ラインアウト時のポジショニング例
②オーバースローイングの練習(5~6分)
・ラインアウトの練習に入る前に、ラインアウトで使われるオーバースローの練習を行う。
・アンダーハンドのスクリューパスを以前に少し練習したが、ここではオーバーハンドでスクリュ
ー(回転)をかけてのスローイングの練習を全体で行う。ラインアウトでスローインするのは多
くはフッカーがその役割を担っているが、授業では全員に経験させる意味でおこなう。アメリカ
ンフットボールでよく使われるスローイングと似たものであるが、生徒は好んで練習する内容で
ある。
・2人組をつくり、ボールを1個ずつ確保させる。
・(図 21)のように、ボールの中央右横または中央から2~3cm手前を右手で押さえる。スク
リューをかけるために、少し手首を巻き込むようにボールの右上を押さえるようにしてもよい。
ボールに回転をかけやすくするため、ボールの継ぎ目(切れ目のライン)に指先を引っ掛けるよ
うにしてもよい。左手をボールに左下部に添えて、そのまま頭上右前にボールを構え、ボールに
右回転をかけるようにしてスローする。ボールの角度、スピードなど生徒に研究させればよい。
・数mの距離をおいて互いにスローイング練習をさせる。
・スローイングの練習をさせながら、次のラインアウト練習の為の、タッチラインと5mライン
(授業では3mライン程度でよい)を15m程度引いておく。
③ラインアウトの練習
第1段階 (敵をつけずにラインアウトの練習)(7分)
・一旦集合させ、各チームのA/Bポジションのフォワードのメンバーで分かれる。人数に余裕が
あれば、SH役を1人ずつ配置できればよい。
・ここではまずラインアウトの2つのパターンを一挙に説明する。(いくつものパターンがあると
思うが、2つ程度でよかろうと思う。)
・スロアーは基本的にフッカーとするが、スローイング練習で上手い生徒にやらせてもよい。
・ラインの並びは、一般的に中央付近に背の高い生徒を配置した方がよい。
・敵をつけない、イメージ練習なので、自分たちのチームがどの方向へ進撃しているのかを確認し
て練習させる。
①ラインアウトモールの形成
・ボールをラインの中央付近に高めに投入し、ラインの中央にいる背の高い生徒がジャンプしてキ
ャッチし、進行方向に背を向けてワインディングの態勢をとる。すかさず両サイドのフォワード
がバインドに入り、モール態勢をつくるパターン。
・現在のラグビーでは、ラインアウトでボールキャッチする者を、両サイドからリフトし、高さを
確保してキャッチさせるテクニックが採用されるようになったが、初級の授業ではこのリフトに
ついては禁止とした。生徒はやりたがるが、リフト技術が難しいこと(転倒や腰痛を起こす危険
性あり)、体操服の破損が多いことが主な理由である。
・確実にモールができれば、SH役がいればボールを引き出し、「出た!」の声でモールを解くと
ころまで練習する。
②投入されたボールをタップ(ノックバック)し、SHへ弾き出す
・投入されたボールをSHのいる位置へジャンプしてはじき出す練習。
・誰がタップするのかを決めておく。
・人数不足でSHがいなければ、フォワードの誰かが代役でSHの位置へポジション取りして練習
させる。
(③ピールオフ )
・時間の余裕があれば、ピールオフという戦術もあることについて説明し、やらせてみるのもよい。
・ピールオフとはラインアウトに参加している味方のプレーヤーによって、ボールがパスされた時
に、1人あるいはそれ以上のプレーヤーがボールを受けようとしてラインアウトの中で自分の位置
から移動することをいう。(図 22)
・ピールオフの動きをする場合以外、ラインアウトが終了するまで、ラインオブタッチを離れてはい
けない。またボールが投入されるまで、ピールオフを始めてはいけない。ピールオフの場合は、ラ
インアウトに平行にかつラインアウトに密接して動かねばならない。-----―等のルールがある。
【図 22】ピールオフの正しい例
第2段階 (敵方をつけたラインアウト練習)(7分)
・一旦集合させ、ラインアウトに関するルールについて簡単に確認する。
・説明しだすと長くなるので、プレーをさせながら随時説明を加えていく方がよいと思われる。
アラインアウトの開始と終了
・開始:ボールが投入者の手からボールが離れた瞬間
・終了:ボールがラインアウトから出た/ボールを持ったプレーヤーがラインアウトから離れた/
ボールが最も遠いプレーヤーを越えて投げられた/モール・ラックとなり、全てのプレーヤ
ーがラインオブタッチを越えた/ボールがプレーできなくなった。
イボールの投げ入れ
・真直ぐにラインの間へ投げ入れる/ボールは遅滞なく、フェイントをかけることなく投げる
:反則の場合⇒⇒授業では10mスクラムとした(正式には15mライン上でスクラム)
・ボールが5mを越えて投げられなかった(授業では3mラインで設定)
:ノット5mの場合⇒⇒授業では3mとし、ラインオブタッチ10m(正式には15mライン上)
の点でペナルティキック(ゲームの初期、PKはすべてチョン蹴りで処理した)
ゥラインアウトのオフサイド(ラインアウトに参加しているものについて)
・防御側は攻撃側のラインの長さより長くてはいけない/・投入されたボールがプレーヤーあるいは地
面を越える前にラインオブタッチを越えた/・ボールに触れた後ラインアウトが終了するまでにボー
ルの線を越えた/・ピールオフの際大きく回りすぎたり、立ち止まったりした/・5m(授業では3
m)投げるのを妨害する。⇒⇒授業ではラインオブタッチ10m(正式には15mライン上)の地点でペ
ナルティキック(ゲームの初期、PKはすべてチョン蹴りで処理した)
●ラグビーのルールはあらゆる球技の中で最も難しく、しかも変化が頻繁であるが、「この場合はPK
ですよ、ただし授業ではチョン蹴りで行くよ」「この場合はこういうルールが採用されるが授業では
スクラムで行くよ。」というように、授業にあったルールを採用し、しかもゲームをしながら理解さ
せていく方式がよいと思われる。
①・相手をつけたラインアウトの練習を、チーム内A/Bポジションのフォワード同士で実際に行っ
てみる。
・各チームでミーティングをしてラインアウトのサインを決めさせておくのもよい。
ボール確保したなら〈1〉モール形成 〈2〉ボールをノックバックしてすぐSHへ
(3)ピールオフ と決めておいて、例えば、数字の一番初めの番号での作戦ということで、
「123」とスロアーがいえば(1)のモール形成というようにである
・スロアーを敵味方交互に交代しながら、立ち位置を確認しながら、2~3度実施する。
②・相手チームを変えて、さらに2~3度実施してみる
第3段階 (バックスラインを加えてのラインアウトからのボール出し~パス展開へ)
・時間配分がうまくいき、余裕があればラインアウトからの攻撃展開の練習(7~8分)
・チーム対抗で、(図 20)のようなラインアウトポジショニングをセットし、ボール投入か
ら攻防を行わせる。
・この授業時の前半に行った、モールからの展開、またはスクラムからの展開と同じ要領で
ラインアウトからの展開ができるかである。
・ラインアウトに参加していない者(いわゆるバックス)のオフサイドのついて簡単に説明し
ながら進める必要がある。
エラインアウトのオフサイド(ラインアウトに不参加のものについて)
・ラインアウトが終了する前に、オフサイドライン(ラインオブタッチの後方10m後方、または味
方ゴールラインのうち、近いほうのライン)の後方にいなくてはならない。
反則の場合⇒⇒授業では、反則したチームのオフサイドライン上で、タッチラインから10
m(正式には15m)の地点でペナルティキックとした。(ゲームの初期、PKは
すべてチョン蹴りで処理した)
5)集合、本時の反省、整理運動など--------(5分)
第8限目 |
・ 軽いキック練習~パントキックをあげて自らキャッチする練習 ・ 攻撃パターンのシャドウ(相手なし)練習 (ゲームの場面を理解し、適切なポジションから次の攻撃へ展開する 敵なし練習) |
1)集合、点呼、準備運動----------------------(5分)
2)4~5名でのランニングパス---------------(5分)
3)軽いキック練習--------------------------------(7~8分)
・フットボールといいながら、これまで全くキック練習というものをしてきていない。
・コート全面でのキックを容認すると、授業という限られた時間の中では、ゲームが断ち切られ
ることも多いこと、ゲームの組み立てをするという主目的に水を差す場面が増えること、オフ
サイドルールについてのさらなる理解が必要なこと、などの理由から、初級ラグビーというか、
授業でのラグビーはハンドリングゲームを中心に行い、キックについては最終的には22mラ
イン手前からのキックのみ許すかたちですすめた。
・しかしながら、生徒はキック練習が好きであり、また最終的には22mライン内側からのキックは
容認する形で進めるため、ここでキック練習を取り入れる。
①・2人1組にボール1個を確保し、10~15m離れた距離で向かいあう。
・〈図 23〉のようにボールを縦に持った状態で(生徒によってはボールのとがった部分を横に持
つものあるので)、腹の前からボールを落とし、靴紐のある部分でのキック(いわゆるインステ
ップキック)で前上方に軽く上げるようにして、交互に行わせる。
・専門の選手はボールの蹴る位置によって、ボールに回転をかけ、地面落下からのバウンドの方向
さへコントロールするそうである。
・また、先のゲーム展開のことも考え、ドロップキックの練習をここで入れておくのもよいと思われる。
②・上がったボールのキャッチングについては、手だけでキャッチしようとせず、胸まで引き込んで、
少し腰を落し気味にしつつ、抱きかかえるようにしてしっかりキャッチする練習をさせる。
③・対面でのキックを数回ずつ行った後、次段階として、対面の相手のいるあたりへ、パントキック
を上げ、自らボール下へ走り込んでキャッチする練習を行う。
・キャッチしたなら、ペアにボールを渡し、同様の練習を行う。そこからは1往復ずつ行えばボー
ルの受け渡しもスムーズに実施できる。
4)攻撃パターンのシャドウ(相手なし)練習 (25~30分)
(ゲームの場面を理解し、適切なポジションから次の攻撃へ展開する 敵なし練習)
*この授業指導計画における、最もメインとする練習内容であり、これまで個別に練習してきたモ
ール、スクラム、ラインアウトなどを、ゲームを想定して繋げてパターン化して行う練習である。
*この練習パターンは敵(相手)なしで行う、いわゆるシャドウボクシングならぬシャドウラグビ
ーであり、チームが一丸となってパターン通りに動きながら、ゲーム運びを理解していく。
*チームの誰かが、その動きを忘れたりすると、チームのリズムやスピード感がなくなるし、流れ
の中で、ノックオンがあったりしてもリズムが狂ってくるので、真剣さが要求される。
*また、成績評価を出す為の技術テストとして実施することもできる。ゲーム内での運動能力の高さ
のみでの評価だけでなく、教えたことをどれだけ理解して動いているかが判る。
*パターンはグランド(コート)を縦に1往復する構成となっている。
*授業のチーム数や人数、生徒の力量により、動きやパターンを変えることは何度もあったが、ここ
での例は、フォワードに№8役を置いたコンビネーションで構成している。
*コンビネーションは、前半A(往路)と後半B(復路)に分かれているが、前半はこれまでの練習
を組み合わせたもので比較的易しく、後半は多少応用力のいるものであるが、場面を説明しながら
進めれば、すぐ理解してできるものである。特にラック(Ruck)(ボールが地面にある状態で
の密集)支配については、特に説明も練習もせずに実施したが、生徒はなんとかこなしてくれるも
のである。ただ初級ゲームではほとんどその場面が出現することはない。
・集合させ、チームコンビネーションを覚えることを告げ、プリントした下記課題を配布する。
①・Aパターンのみを説明する。(説明後プリントをすぐ回収する。)
・各チームAポジションの配置でAパターンのみを1~2往復実施する。
②・再びプリントを配布し、Bパターンのみを説明する。(説明後プリントをすぐ回収する。)
・各チームAポジションの配置でAパターンのみを1~2往復実施する。
③・BポジションでAパターン1往復、Bパターン1往復を実施する。
④・Aポジションで行き〔Aパターン〕、帰り〔Bパターン〕で実施する。
⑤・Bポジションで行き〔Aパターン〕、帰り〔Bパターン〕で実施する。
⑥・時間の余裕のある限り、スピードと正確さを求めて何度か実施する。
5)集合、本時の反省、整理運動など--------(5分)
●ラグビーの授業:チームコンビネーションプレイ (テスト課題)
A:前半〔行き〕
【1】(グランド左端から)
① スクラムをセット――バックスは右ラインをセットする。
② SH(「セットイン~ボールイン」の声
~フッカーはフック動作を行いストレートでボール出し)
~SO~CTB~RWまでパスを廻しながら前進
~RWはNo8(またはFWの誰かへつなぐ。)
③ No8(FW)の「モール」の声でFWはモールを形成
④ SHの指示でバックスはラインを左へセットし、
SH(「出た!」の声)~SO~CTB~LWまでパスを廻し、
LWはタッチラインを(押し出されたとして)割る。
【2】(センターライン付近まで戻り)
① ラインアウトのポジションをとる。(ボール投入はフッカー/ラインは右に形成)
② 投入されたボールをライン中央の者がジャンプキャッチし、モ-ルを形成
③ SH(「出た!」の声)~SO~CTB~RW~
~さらに右へフォローしながら展開しトライまでいく。
B:後半〔帰り〕
【3】(グランド右端から)
① スクラムをセット――バックスは左ラインをセットする。
② SH(「セットイン~ボールイン」の声~フッカーはフック動作を行う)
③ №8はボールを自分の足元へキープし~機を見てスクラムから頭を抜き、
~ボールをピックアップして、左へサイドアタックを仕掛け~後方のSHにパス。
④ SHは後をフォローしてきたFWの誰かにパス。
⑤ ここでFWがタックルされたと仮定し、FWはボールを置いて地面にうずくまる。
(うずくまり方は、背は敵方へ向け、ボールを腹部前に置き、ボールキープの姿勢)
⑥ 残りのFWはうずくまったFWの手前で密集(スクラムの様に)しラックを形
~態勢が整えば、声を合わせて、そのFWをまたぎ越しボールを後方へ出す。
⑦ SHはラック後方にいて、左ラインを指示~ボールを拾い上げ~SO~CTB~LW
とパスを廻し~LWは(押し出されたとして)タッチラインを割る。
【4】(センターライン付近まで戻り)
① ラインアウトのポジションをとる。(ボール投入はフッカー/ラインは右に形成)
② 投入されたボールをライン後方の者がジャンプしてボールをタップし、SHへ。
③ SH~SO~CTBとパスをまわし、CTBはショートパントキックを行う。
④ キックされたボールをCTBかRWがとり、そこでモール形成。
⑤ バックスは左ラインを形成し、SH~SO~とフォローしながら廻し、トライまで。
神戸市 北区